目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

電力・管理科目

対称座標法

対称座標法(symmetrical coordinate method)によれば,第一に回転機類も静止器類も送電線路も極めて正しく,かつ簡潔な方法で方程式として表現できる。 第二にこれらを相互接続することが可能であり,したがっていかなる大系統もその計算用回路として構成…

変圧器の信頼性向上対策

変圧器事故の未然防止策として,設計・製作及び施工面での品質管理の向上が図られている。 保守面でも,以下のような診断技術も広く用いられ,また,近年では絶縁物の劣化生成物であるフルフラールなどの含有量を基にした劣化診断技術の適用も進められ,事故…

電力系統の系統間連系

わが国では電気事業者間の広域的運営のため,電力系統の系統間連系が整備されてきているが,連系線潮流の制御が複雑になるなどの理由から,相互の連系は 1 点連系を基本としてきた。 この系統間連系により期待できる利点及び考慮すべき留意点の主なものは以…

電力系統に発生する瞬時電圧低下

瞬時電圧低下(略して「瞬低(しゅんてい)」ともいう)は,電力系統の各種事故により,系統の電圧が瞬間的に低下するために発生するものであり,コンピュータが停止するなどの影響を与えることがある。 瞬時電圧低下は,送電鉄塔又は架空地線に落雷した場合…

移動用電気工作物の取扱い

台風や地震による停電時に,避難所や病院等に電気を供給する高圧発電機車など,車載式や貨物自動車等で移設して使用する電気工作物を移動用電気工作物といい,移動用発電設備,非自航船用電気設備,移動用変電設備,移動用予備変圧器の四つに分類される。 こ…

特別高圧の変圧器及び調相設備の保護装置

発変電設備等の損傷による供給支障の防止 次の文章は,「電気設備技術基準」における,発変電設備等の損傷による供給支障の防止に関する記述である。 発電機,燃料電池又は常用電源として用いる蓄電池には,当該電気機械器具を著しく損傷するおそれがあり,…

電力系統の周波数

次の文章は,電力系統の周波数に関する記述である。 電力系統の周波数の変動及びその影響 周波数変動による問題 電気使用者側の問題の例 電力系統管理側の問題の例 電力系統の周波数調整 経済負荷配分制御(ELD) 負荷周波数制御(LFC) 定周波数制御(FFC :…

電気事業法に定める保安規程

電気事業法 第42条 保安規程 次の文章は,「電気事業法」第42条 保安規程である。 事業用電気工作物を設置する者は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安を確保するため,主務省令で定めるところにより,保安を一体的に確保することが必要な事…

電力用コンデンサ

本稿では,電力用コンデンサについて述べる。 電力用コンデンサの目的 力率改善 進相コンデンサによる力率制御の代表的な方式 電力用コンデンサの構成 フィルムコンデンサの歴史 電力用コンデンサの結線方式 コンデンサ本体(SC) 直列リアクトル(SR : Seri…

電力設備の保全

「予防保全」には,定期的にメンテナンスを行う「時間基準保全 (Time Based Maintenance : TBM)」と運転中の設備・機器の状態を把握し,その結果に基づいてメンテナンスを行う「状態保全基準 (Condition Based Maintenance : CBM)」がある。 重要な電力設備…

火力発電と再生可能エネルギー

電力部門の CO2 排出量の大半を占めるのが火力発電所からの CO2 排出であり,2050 年までにカーボンニュートラルを実現するためには,火力発電所からの CO2 排出量を削減していく必要がある。 火力発電は CO2 を多く排出するが,一方で,太陽光発電や風力発…

架空送電線路

架空送電線路は発電所で発生した電力を効率よく,安定に,しかも経済的に需要地域まで輸送する役割を担っている。 架空送電線路に使用される電線 架空送電線路に使用する電線の電気的性能としては導電率が高いものが望ましく,機械的性能としては引張強さが…

同期発電機の励磁

小形の同期発電機では界磁に永久磁石を使用することもあるが*1,中型から大型の同期発電機(以下,主発電機と呼ぶ)では界磁巻線に直流電流を通電して励磁する方法が適用される。 この直流電流(界磁電流)を供給する装置を励磁装置と呼び,近年では交流励磁…

火力発電所のボイラ設備とその保安装置

火力発電所のボイラ設備とその保安装置について説明する。 火力発電所のボイラ設備 過熱器(superheater) 再熱器(reheater) 節炭器(economizer) 空気予熱器(air heater) 火力発電所におけるボイラの保安装置 参考文献 更新履歴 火力発電所のボイラ設…

電力系統の中性点接地の目的と方式

電力系統の中性点は,事故発生時における過電圧の抑制と保護装置の確実な動作のために接地されることが多い。 接地方式は,直接接地,抵抗接地,非接地に大別できるが,接地抵抗には系統特性に応じて,補償リアクトルや消弧リアクトルが併用される場合がある…

変電所の塩害対策

変電所で電気絶縁のため使われるがいし,ブッシングの表面には,台風や季節風などによる強い海風により運ばれる海塩が付着する。 この表面が湿潤を受けて導電性を有するようになり,漏れ電流が流れ,その発熱により電流が集中するところに乾燥帯が形成される…

汽力発電所の熱効率の維持向上対策

汽力発電所の運転時における熱効率の維持向上対策は,以下のとおり。 過熱蒸気の採用 過熱蒸気を採用することによりエンタルピーが増大し,熱効率が向上する。 復水器真空度の向上 復水器の真空度が向上すると背圧が下がり,タービンの熱落差が大きくなって…

電圧フリッカ

配電線にアーク炉や溶接機などのような変動負荷が接続されると,その負荷電流による電圧降下のために配電線の電圧が変動する*1。 この電圧変動が頻繁に繰り返され,照明の明るさにちらつきを生じる現象を電圧フリッカ(voltage flicker)という*2。 電圧フリ…

地中配電線路

高圧地中配電系統には,配電用変圧器の引出口,過密都市部,電車線路や幹線道路横断箇所など架空電線路では設備が輻輳し,施設することが技術的に困難な箇所に施設するものや,都市機能,景観上の観点から施設するものなどがある。 その系統構成はケーブルの…

分散型電源の系統連系

本稿では,分散型電源の系統連系について述べる。 ここで,分散型電源とは,一般電気事業者及び卸電気事業者以外の者が設置する発電設備等であって,一般電気事業者が運用する電力系統に連系するものをいう。 分散型電源の系統連系に係る用語の定義 電気設備…

軽水形原子炉

わが国の発電用原子炉は,燃料として低濃縮ウランを用い,軽水と冷却材が減速材を兼ねる軽水炉が主流であり,加圧水形と沸騰水形の 2 種類が採用されている。 両者の構造や制御機能などに相違点があり,以下にその例を挙げる。 加圧水形は,水が沸騰しないよ…

受電設備の保護協調

保護協調(protection coordination)*1とは,系統又は電力設備に故障が発生した際,故障発生源を早期に検出し,迅速に除去し,故障の波及・拡大を防ぎ,健全回線の不要遮断を避けることである。 保護装置がそれぞれ協調せずに動作すると故障した部位が正確…

GIS 変電所の絶縁協調

絶縁協調(Insulation co-ordination)*1に関して,GIS 変電所*2を気中絶縁変電所*3と比較した場合の相違点として,主に以下の点が挙げられる。 ガス絶縁機器の V-t 特性は気中絶縁機器よりも平たんであり,急しゅん波領域で協調がとりにくい。 ガス絶縁母線…

ケーブルの診断技術と事故点測定法

油浸絶縁ケーブルの絶縁低下は,主にシースの腐食・外傷などによる絶縁体の吸湿,浸水やケーブルの熱伸縮などによる空げきの発生,長年月の使用による絶縁体の変質などの単独あるいは組み合わせにより発生する。 また,架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケー…

配電自動化システム

配電自動化システム*1により配電線事故発生箇所を含む区間を自動的に区分する方式として,事故発生時に配電線停止によりいったん無電圧開放された自動開閉器を,変電所の配電線用遮断器の再閉路と協調して,一定の時間間隔で順次投入する時限順送方式が一般…

低圧配電線の配線方式

低圧配電線には単相 2 線式,単相 3 線式,三相 3 線式及び三相 4 線式などが採用される。 いずれの方式においても,混触時の低圧側電圧上昇を抑制するという保安上の理由から,一般には一線又は中性点が接地されている。 単相 2 線式(single-phase two-wir…

電力系統に生じる電力動揺

遠隔地電源から無限大母線へ遅れ力率で送電している超高圧並行 2 回線送電線において,その片回線が開放され,生じた電力動揺が収まった後に投入された。 片回線開放直後,発電端電圧は急に上昇し,その後ある周期で振動する。投入時もやはり発電端電圧は投…

高電圧電力機器の絶縁材料

高電圧工学において対象とされる絶縁物としては,気体,液体,固体があげられ,おのおのの誘電体における放電現象ならびに絶縁破壊機構は異なっている。 高電圧電力機器の絶縁材料(insulating material)としては,空気,SF6ガスなどの気体,絶縁油などの液…

送電線の自然災害に対する設計

送電鉄塔の荷重設計で支配的なのは,通常は強風又は着氷雪荷重であり,一般的な建築物が地震荷重である点と異なる。 これは鉄塔がトラス構造物であり建築物に比べて軽いことに加えて架渉線を有していることによる。 法的な定め 電気設備に関する技術基準を定…

送配電系統の電圧上昇とその対策

都市部の送配電系統ではケーブル系統の採用や需要家側に設置された力率改善用コンデンサの常時投入などにより,深夜軽負荷帯などに無効電力発生が過剰となる場合がある。 軽負荷時には充電電流(進み電流)の影響,いわゆるフェランチ効果(Ferranti effect…