火力発電所のボイラ設備とその保安装置について説明する。
火力発電所のボイラ設備
過熱器(superheater)
火力発電所における過熱器(superheater)はボイラドラムなどからの飽和蒸気を過熱するもので燃焼ガスの通路中に配置されるのが一般的である。
過熱器は設置場所によって,接触(対流)過熱器,放射過熱器及び放射接触過熱器に区別され,接触過熱器は火炉外に設けられている。
また,放射過熱器はボイラ火炉上部又は火炉壁の一部として設置され,放射接触過熱器はボイラ火炉出口付近に設置されている。
運用特性として,放射過熱器ではボイラ負荷の増加とともに熱吸収量の割合は減じ,反対に接触過熱器では増す特性をもつ。
再熱器(reheater)
熱サイクルの効率向上およびタービン翼の腐食防止などのために,高圧タービンで仕事をした低温低圧の蒸気を一度ボイラに戻して再加熱し,再び中・低圧タービンで仕事をさせるためのものである。
プラントの熱効率向上,湿り蒸気によるタービン翼のエロ―ジョン(侵食)防止などを目的として設置される。
主に75MW以上の発電用ボイラに用いられる。
節炭器(economizer)
節炭器は,ボイラの下流側に配置され,燃焼ガスの保有する熱を回収してボイラ水に与えるための装置で,排ガス損失を減少してボイラの効率を高めることなどを目的として設置されている。
煙道ガスの予熱を利用してボイラ給水を加熱し,プラント全体の熱効率を高めるとともに,ドラムに与える熱応力の軽減を図る。
空気予熱器(air heater)
節炭器出口側煙道に設けられるもので,煙道ガスの廃熱を燃焼用空気に回収し,プラント熱効率を高める熱交換器をいい,燃焼用空気の予熱により,燃焼効率を向上するものである。
火力発電所におけるボイラの保安装置
ボイラにおける機器損壊防止や安全確保の観点から,異常状態となったときには,ボイラを直ちに停止させる必要がある。
このため,保護インタロックや保安装置等が設置されている。
燃料遮断装置(MFT インタロック)は,ボイラ運転中に,燃料,缶水循環,空気の各系統の異常や燃焼不安定,あるいは火炉圧異常などの異常状態を検知すると,直ちに燃料を遮断してボイラを停止させることで破損を防止する。
パージインタロックは,ボイラ点火時の事故を未然に防止する機能で,火炉に残っている未燃ガスを除去すると同時に,ボイラ各系統が正常であることを確認できなければ点火不可としている。
安全弁は,ボイラの異常状態や負荷の緊急遮断等によって,発生蒸気が最高使用圧力を超える前に自動的に蒸気を大気に放出し,内部圧力を低下させて機器の破損を防止するものである。
参考文献
- 令和5年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5「火力発電所のボイラ設備」
- 平成28年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2
- 平成17年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2
- 平成12年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問2「火力発電所のボイラ設備」
electrical-engineer.hatenablog.jp