目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

軽水形原子炉

わが国の発電用原子炉は,燃料として低濃縮ウランを用い,軽水と冷却材が減速材を兼ねる軽水炉が主流であり,加圧水形と沸騰水形の 2 種類が採用されている。

両者の構造や制御機能などに相違点があり,以下にその例を挙げる。

加圧水形は,水が沸騰しないように炉内を加圧している。この圧力は,沸騰水形のおよそ 2 倍程度である。

出力制御は,制御棒の出し入れによるほか,沸騰水形では冷却水の再循環流量を調節するが,加圧水形ではほう素濃度の調節を行う。

制御棒駆動装置の位置も異なり,加圧水形では炉心上部に設置される。

PWR(加圧水型炉)

PWR(pressurized water reactor,加圧水型炉)は,燃料として低濃縮ウランを,減速材と冷却水に軽水を使い,冷却材の軽水が沸騰しないように炉全体を圧力容器の中に入れ,炉内を約 15.69 MPa(160 kg/cm2)程度に加熱している。

また,熱サイクル的には蒸気発生器(熱交換器)を経由して一次と二次に分けている原子炉で,次のような特徴を有している。

  1. 熱サイクルが間接的であるため,放射能を帯びた蒸気がタービン側に流入せず,保守点検が容易になる
  2. 加圧水を使用しているため,出力密度が高く,炉心から取り出す熱出力が大きい
  3. 蒸気発生器を含む間接サイクルのため,系統が複雑である。また,加圧水を使用するため,圧力容器および配管の壁厚が厚くなり,効果となる
  4. 炉の反応は大きな負の温度係数を有し,良好な安定性をもっている。

PWR の原子炉出力制御方式

加圧水型軽水炉(PWR)の原子炉出力制御方式としては,沸騰水型軽水炉と同様の制御棒による制御とほう素濃度による制御がある。

ほう素濃度による制御は,ほう素が中性子を吸収する性質を利用して出力を制御するものであり,一次冷却材にこれを注入し濃度を増すと原子炉出力は減少する。

この制御は,制御棒による制御に比べ緩やかな出力調整に使用される。

BWR(沸騰水型炉)

BWR(boiling water reactor,沸騰水型炉)は,主としてアメリカで開発された軽水炉の一種で,燃料には低濃縮ウランを用いる原子炉である。

この炉型では,炉心内で直接軽水を沸騰させ,熱交換器を使わず炉内で発生した蒸気を直接利用するので,熱交換によって温度が下がり熱効率が悪くなるのを防ぐことができる利点がある。

沸騰水型炉は,次のような特徴を有している。

  1. 出力が上がり炉心の蒸気泡(ボイド)が増えると反応度が減る,いわるゆ自己制御性があって安定である
  2. タービンへ送られる蒸気には放射能があるので放射線対策が必要である
  3. 再循環流量の加減によりボイド量を加減できるので原子炉出力を容易に制御できる

BWR の原子炉出力制御方式

中性子吸収材を充てんした制御棒を炉心内に挿入又は炉心外へ引き抜くことにより出力を制御する。

制御棒を引き抜くと原子炉出力は増加する。

制御棒を炉心内へ挿入する位置は沸騰水型と加圧水型では一般的に異なっており,沸騰水型では炉心の下部から挿入される。

また,炉心流量による制御があり,炉心流量が増加することで,冷却材中のボイドの体積比率が低下し,中性子の減速降下が高くなるので原子炉出力は増加する。

原子力発電の特徴

原子力発電と火力発電を比較して,原子力発電の特徴の一つは,熱源である原子炉圧力容器の容器当たりの熱出力が大きいことで,火力発電ボイラの百倍近くになることがある。

しかし,燃料集合体の許容温度によって制限されるため,蒸気温度を火力発電のように高くはできない。このため,飽和又は飽和に近い蒸気しか得られず,蒸気条件が悪い。

したがって,同一出力の火力発電所に比べてタービン,復水器などが著しく大きくなり,熱効率も低くなる。

ウラン 235 の核分裂の概要

核分裂の仕方は様々であるが,ウラン235($^{235}_{92}U$)に1個の中性子が衝突することによって,ストロンチウム($^{94}_{38}Sr$)とキセノン($^{140}_{54}Xe$)に分裂し 2 個の中性子が生じる場合,質量欠損は約 0.09 [%] であり,その際,放出されるエネルギーはウラン原子 1 個当たり約 200 [MeV] である。

なお,核分裂反応時に放出されるエネルギーの大部分は核分裂によって生じる原子核運動エネルギーであるが,これは核分裂が発生した場所の近傍で直ちに熱エネルギーに変換される。

1 [eV] は約 1.6 × 10-19 [J] である。質量欠損に同等なエネルギーを $E$をジュール [J] 単位で求める式は,質量欠損 $m$ [kg],光速 $c$ [m/s] とすれば,$E=mc^2$ [J] で表される。

核分裂の増倍率

核分裂の連鎖反応は,ウラン 235 に中性子が当たって核分裂反応が起こり,その結果発生した中性子が他のウラン 235 に当たって再び核分裂を起こすという現象を繰り返すことであるが,その 1 サイクル前後での中性子の増加率を増倍率という。

仮想的に原子炉が無限に大きく,中性子の漏れがない場合の値を無限増倍率という。

実際は吸収や外部への漏れを考慮する必要がある。

これを考慮した値を実効増倍率といい,臨界の場合は 1 となる。

軽水炉に濃縮ウランを用いる理由

軽水炉では,一般に減速材と冷却材の両方に軽水(H2)が用いられるが,軽水は相対的にむだな中性子吸収が多く,天然ウランのままでは核燃料にしても所用の中性子増倍率および反応度を得ることができない。

そのため,軽水炉では 235U の割合を天然の 0.7 [%] から約 3 [%] まで高めた濃縮ウランを核燃料として使用している。

核分裂の反応度

臨界からのずれの程度を表すのが反応度である。

軽水炉は,ドップラー係数(燃料温度係数),原子炉冷却材(中性子減速材)の温度係数とボイド係数を総合した反応度係数がとなっており,出力の上昇に伴い反応度が減り,核分裂反応が減少して出力上昇が自動的に抑えられる。

この特性を軽水炉の固有の安全性又は自己制御性という。

原子炉の主要構成材

減速材

原子燃料の核分裂によって生じた高速中性子を熱中性子にするために使用するのが減速材であり,質量の小さい原子核を多く含む物質の方が中性子のエネルギー損失が大きく,減速材として有効である。

減速材には軽水(H2O),重水(D2O),黒鉛ベリリウム(Be),有機材などがある。

減速比からみると重水が最も優れているが高価なので,軽水炉では軽水が,ガス炉では黒鉛が使用されている。

減速材に要求される性質は次のとおり。

  1. 中性子エネルギーを早く減速させること(軽く,密度の大きい元素)
  2. むだな中性子吸収が少ないこと(中性子吸収断面積が小さい)
  3. 耐食性,加工性,耐熱性,耐放射性に優れていること

冷却材

核分裂により発生したエネルギーを取り出すために使用されるのが冷却材であり,比熱及び熱伝導度が大きく中性子の吸収が小さいことが要求される。

冷却材には軽水,重水,有機材,気体(空気,CO2,He),液体金属(Na)などがある。

発電用原子炉では,減速材としても冷却材としても性能が良好であり,高い安全性,信頼性,経済性が得られることから,軽水が広く使用されている。

冷却材に要求される性質は次のとおり。

  1. 中性子の吸収が少ないこと(中性子吸収断面積が小さいこと)
  2. 比熱および熱伝導率が大きいこと(熱除去,熱輸送の特性が良好なこと)
  3. 放射線照射および動作温度下でも安定であること(融点が低いこと)
  4. 燃料被覆材,減速材などの間で化学反応が少ないこと(腐食性および化学活性が低いこと)

制御材

原子炉を安全に運転するためには,中性子の発生と消滅のバランスを変化させて出力制御を行う必要があり,このために使用されるのが制御材である。

制御材にはカドミウム(Cd),ボロン(B)またはほう素,ハフニウム(Hf)などがある。

軽水炉では高温で使用するためボロンステンレス鋼,ボロンカーバイドなどをステンレス鋼で被覆し,制御棒として使用する。

制御材に要求される性質は次のとおり。

  1. 中性子吸収が大きいこと(中性子吸収断面積が大きい)
  2. 高い中性子束の中で長期間その効果を失わないこと

軽水形原子力発電所における蒸気タービン

軽水形原子力発電所における蒸気タービンについて,火力発電所との構造上の相違点を挙げ,それらを対比して説明する。

  • 同一出力を得るためには,使用蒸気量が火力タービンの 1.6 ~ 1.8 倍となるので,タービン,復水器が大形になる。
  • タービン低圧段で湿り度が増加するので,羽根の浸食を減らすために 1 500 [min-1] または 1 800 [min-1] となる。
  • タービン入口の湿り度が 0.25 ~ 0.4 [%] 程度なので,最終段の湿分を許容値以下にするため,各段階に湿分分離機能をもたせてドレン分離したり,高圧タービンと低圧タービンの連絡管の途中に湿分分離器が設置される。
  • 原子炉の放射能を帯びた蒸気がタービンに流入するため,放射線遮へい,放射性気体廃棄物処理が必要である。

軽水形原子力発電所における発電機

軽水形原子力発電所における発電機について,火力発電所との構造上の相違点を挙げ,それらを対比して説明する。

  • 4 極機であるため,界磁巻線1極当たりの励磁起磁力が少なく,界磁巻線の銅量も増加できるので,励磁容量および界磁銅損が 60 [%] 程度減少するので,ラジアルフロー形冷却方式が採用される。
  • 回転数が低いので風損が減少し,界磁銅損,漂遊負荷損も少なくなるので,効率が高くなる。
  • 回転数が 2 極機の半分,軸長を同じにすると同一容量の回転子半径は 1.5 倍程度なので,遠心力は小さくなる。

参考文献

更新履歴

  • 2021年12月26日 新規作成
  • 2022年5月22日 参考文献に「平成22年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1」を追加
  • 2022年5月28日 参考文献に「平成18年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2」を追加
  • 2022年5月29日 参考文献に「平成17年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2」
  • 2022年10月23日 参考文献に「平成10年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問2」を追加
  • 2022年12月18日 参考文献に「平成11年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問2」を追加
  • 2023年9月2日 参考文献に「令和5年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2」を追加