絶縁協調(Insulation co-ordination)*1に関して,GIS 変電所*2を気中絶縁変電所*3と比較した場合の相違点として,主に以下の点が挙げられる。
- ガス絶縁機器の V-t 特性は気中絶縁機器よりも平たんであり,急しゅん波領域で協調がとりにくい。
- ガス絶縁母線のサージインピーダンス(surge impedance)は架空線の約 1/5 であり,電力ケーブルの 2 ~ 3 倍である。また,GIS 変電所の母線のこう長は気中絶縁変電所に比べて短い。
- 気中絶縁変電所の雷サージに対する絶縁協調は変圧器の保護を中心に考えてきたが,GIS は内部に有機絶縁物で作られたスペーサなどがあるので GIS を変圧器と同等の保護対象とする必要がある。
以上のことから,特に高電圧の大規模変電所を除き,一般的に GIS 変電所では避雷器を線路引込口に設置し,変電所全体としての保護が図られることが多い。
電圧-時間曲線(V-t 曲線)
絶縁物がインパルス電圧によって絶縁破壊する場合,電圧印加から火花が形成され,スパークオーバするまでにはある時間が必要である。
雷サージのように,きわめて短い時間だけ発生する時間が加わる電気回路における絶縁協調を行う場合には,このことを考慮する必要がある。
この点を簡単に表現する方法として,電圧-時間曲線(V-t 曲線)が用いられる。
サージインピーダンス
発変電所及び地中送電線の耐雷設計ガイド(2011年改訂版)によれば,気中母線,相分離 GIS 母線のサージインピーダンス等は,以下のとおり。
気中母線
- サージインピーダンス 350 Ω
- 伝搬速度 300 m/μs
相分離 GIS 母線
- サージインピーダンス 70 Ω(架空線の約 1/5)
- 伝搬速度 270 m/μs
絶縁協調
絶縁協調とは,送電線や発変電所を含めた電力系統の絶縁を避雷器などの保護装置と被保護機器と関連させて協調を図り,事故の防止を図るとともに経済的な絶縁の設計を実現することをいう。
この目的のためには,避雷器を合理的に適用,設置することによって,外部から侵入する過電圧に対して,その波高値を制限する。
避雷器の制限電圧に対して,電力用機器の絶縁を保証する目的で機器に対するインパルス電圧試験を行い,適正な絶縁耐力を確保する。
この試験はインパルス電圧の波高値とともに,雷インパルスから開閉インパルス電圧波形に対応する時間領域にわたる電圧-時間(V-t)特性を求めて,電力用機器が外部から侵入するサージ電圧に対して十分安全に保護しうるようにする必要がある。
500 kV 変電設備の絶縁協調
変電所の耐雷設計では,変電所近傍の鉄塔への落雷による逆フラッシオーバによる近接雷と,電力線を伝搬してくる遠方雷を考慮する。
これらの雷過電圧に耐える絶縁強度を機器(変圧器や開閉器)にもたせることは経済的ではないため,変電所内に避雷器を設置し,最適位置に配置することにより雷過電圧を抑制し,効果的な絶縁協調を図っている。
避雷器の設置により,過電圧抑制のための機器代は増加するものの,過電圧を確実に抑制できるため,雷インパルス耐電圧( LIWV : Lightning Impulse Withstand Voltage )を低減した変圧器や開閉器が採用できる。
主要機器代が減少し,技術上,経済上並びに運用面から合理的な設計にすることができる。
避雷器の適用
電力系統における絶縁協調は,避雷器の保護特性を十分に生かすことを前提としている。
したがって,これを合理的に行うためには,電力系統に発生する各種の過電圧の大きさや設置点における雷特性,雷遮へいの条件などを考えて,避雷器の定格電圧,放電電流,制限電圧を決める必要がある。
さらに,特に超高圧以上の電力系統においては,雷サージと同時に開閉サージに対して避雷器が動作することを考慮し,そのエネルギーに十分耐え,これを処理することが可能な避雷器を選定する必要がある。
避雷器は,これによって保護される機器との距離をできるだけ短くした場合に,その効果が最もよく発揮されるが,両者の離隔距離が大きくなると,被保護機器の両端には制限電圧より高い電圧が現れる。
このような点を考慮して,電力用機器の雷インパルス耐電圧を制限電圧より高くしておくのが一般的である。
ガス絶縁機器の V-t 特性は,気中保護ギャップのそれよりも平たんであるため,絶縁協調の観点からガス絶縁機器を使用した発変電所の送電線引込口に設置する避雷器としては,酸化亜鉛型避雷器が広く使用されている。
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参考文献
- 平成27年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問2「電力流通設備の絶縁協調」
- 平成21年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2
- 平成19年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問4
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