目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

電力系統の電圧・無効電力制御

電力系統の電圧・無効電力制御は,発変電所の母線電圧を運転目標値内に制御し,定常時の電圧安定度上の余裕度を高め,事故時又は負荷急変時の電圧回復を迅速に行うほか,無効電力潮流を軽減することによって送電損失を軽減することを目的としている。

無効電力とは

無効電力とは負荷で消費されないが,電気を送ったり電圧を調整したりするために必要な電力を指し,「遅れ」と「進み」の 2 種類ある。

電流と電圧は,位相が互いに大して遅れたり進んだりする。

位相がずれるほど電力損失は大きくなる。

電圧・無効電力制御

電圧・無効電力制御(VQC : voltage and reactive power control)とは,時々刻々と変化する系統電圧に対し,電圧安定性の維持,機器から見た適正電圧の維持,送電損失の低減等の観点から発電機無効電力,変圧器タップ,調相設備を制御して系統の電圧・無効電力を調整する。

制御を行う際には,多地点の電圧・無効電力を個別に適正に維持するとともに,全系での協調を図る必要があることから,ローカル系統を対象とした「個別制御方式」と全系を対象とした「総合制御方式」が一般的である。

「総合制御方式」においては,情報伝送上の制約,制御効果等の観点から超高圧系統異常を対象として制御を行う場合が多い。

現在,わが国ではこの制御方式として,一般的に中央制御方式と個別制御方式が採用されている。

中央制御方式

中央制御方式は,広範囲な電力系統の電圧や無効電力等のオンライン情報を収集し,電圧や無効電力をあらかじめ定めた基準値内に収まるように,主要発変電所の発電機,調相設備及び負荷時タップ切換装置等の電圧・無効電力制御機器を,中央給電指令所などの計算機から直接かつ総合的に制御するもので,中央 VQC(電圧無効電力制御装置,以下同じ。)と呼ばれている。

個別制御方式

個別制御方式は,個々の発変電所において,電圧や無効電力をあらかじめ定めた基準値内に維持すべく,自主的かつ個別的に電圧・無効電力制御機器を制御するものであり,タイムスケジュール運転と個別 VQC 方式がある。

送電用変電所での個別制御

送電用変電所での個別 VQC の自動制御には,V-V 制御や V-Q 制御が行われている。

いずれも二次母線電圧と一次側の制御対象電力量を基準値内に維持するように負荷時タップ切換装置と調相設備を制御するものである。

配電用変電所での個別制御

配電用変電所では,母線電圧の基準電圧に対する偏差を検出し,変圧器のタップの昇降により母線電圧を基準値内に維持したり,需要端電圧を維持するために線路電圧降下補償装置と組み合わせ,負荷電流に応じた制御を行っている。

 

なお,以上の制御においてはシステム間のハンチングや特定制御機器の操作集中防止等のためにシステム間での協調を図る必要がある。

参考文献

  • 電気事業講座 電気事業辞典
  • 平成19年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 法規 問6「電力系統の電圧・無効電力制御」
  • 2024年4月19日 電気新聞「GRID TECH STATCOM ブーム再燃 下」

更新履歴

  • 2022年9月9日 新規作成
  • 2022年9月10日 電圧・無効電力制御(VQC)の説明を追加,参考文献に「電気事業講座 電気事業辞典」を追加
  • 2024年4月20日 参考文献に電気新聞「GRID TECH STATCOM ブーム再燃 下」を追加