本稿では,電力潮流の調整と電力潮流の計算について説明する。
潮流調整(power flow control)
電力潮流は,需要変動に応じて調整する供給力の変動により時々刻々変化している。
電力潮流を適正に調整することにより,電力設備の過負荷防止や安定度向上等の系統の安定運用,送電損失の軽減および適正電圧の維持を図っている。
潮流調整方法として,有効電力潮流については発電機出力調整,発変電所送電線路の接続系統の変更により行い,また無効電力潮流については発電機の運転力率調整や調相設備の運転,停止により行う。
ループ状を構成している電力系統では,移相変圧器や直列コンデンサ,直列リアクトルを設置して潮流調整を行っている。
送配電会社間の連系点潮流調整は,融通電力のベース変更に伴う潮流調整の他に,常時の負荷変動によるランダムな潮流変動に対しては,周波数調整と組み合わせて自動制御を行っている。
潮流計算
潮流計算は,電力系統やプラントなどの電力システムの計画・運用に必須な計算技術である。
一般に潮流計算は,電力方程式を厳密に解いて,電圧,位相角,有効・無効電力潮流を求める交流法を用いることが多い。
この電力方程式では,送電線や変圧器をブランチ,発変電所などの母線をノードとして,アドミタンス行列で表現された電気回路に基づいて構成され,電力システムの場合,非零要素が極めて少ないスパース行列となる。
一方,この電力方程式の既知量は,そのノードの特性に応じて指定される。
一般的には,発電母線に対して有効電力及び電圧を指定するノードを PV 指定ノードと呼び,負荷母線に対して有効電力及び無効電力を指定するノードを PQ 指定ノードと呼び,さらに,電圧位相角の基準となるノードをスラックノードと呼び,系統の有効・無効電力損失分を充当させている。
また,この方程式の電圧座標の取り方に応じて,直角座標又は極座標が使用される。
電力方程式は非線形代数方程式であり,これを解くには未知数に適当な初期値を設定して反復計算により正確に収束させる必要がある。
その代表例として,ニュートンラフソン法があり,反復計算する係数として,ヤコビアン行列と呼ばれる電力方程式の微分係数を用いて収束計算する方法が著名である。
ニュートン・ラプソン法の計算フローを下図に示す。
参考文献
- 令和3年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問3「電力系統におけるニュートン・ラプソン法を用いた電力潮流計算」
- 平成30年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問4「簡易法による潮流計算」
- 平成20年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問7「潮流計算」