低圧需要家への供給電圧を電気事業法で定められた範囲内に維持するためには,配電用変電所の送出電圧を合理的に調整し,配電系統各部の電圧降下を適切に配分することが必要である。
ただし,近年普及してきた分散形電源が接続された系統では,需要家構内の消費電力より発電電力が大きい場合に,需要家から系統側へ電力が供給されるいわゆる逆潮流*1が生じ,部分的に系統の電圧上昇を発生することがあるので注意を要する。
また,こう長が長く電圧降下が大きい配電線のように,配電線の電圧を限度内に保持することが困難な場合には,配電線に線路電圧調整器が使用される他,電力用コンデンサや静止形無効電力補償装置(SVC 及び STATCOM)などを用いて,配電線に流れる無効電力を調整することにより電圧調整を行うこともある。
その他に,配電線に直列コンデンサを挿入して,配電線のリアクタンスを補償することにより電圧改善を行うこともできるが,配電線事故時の事故電流により過電圧が生じるなどの弊害もあるため,あまり採用されていないのが実情である。
配電系統の電圧の値
供給電圧の値は,需要家で使用する機器の性能に大きな影響を与えるため,電気事業法施行規則で供給地点での電圧を次のように定めている。
- 標準電圧 100 V の場合:101 ± 6 V
- 標準電圧 200 V の場合:202 ± 20 V
全ての需要家に対しこの範囲で供給するための対策として,変電所の送り出し電圧の調整や,配電線途中での線路電圧調整器の設置などが挙げられる。
配電系統の逆潮流
配電系統において,PV が増加すると,潮流方向(電力の流れる向き)が逆転して逆潮流が生じ,電圧への影響が生じる。
通常,配電線の電圧は,送電距離に応じて下がっていくため,変電所から配電線の末端に向かって,順潮流時には電圧が低下し,逆潮流時には電圧が上昇することになる。
したがって,配電系統に PV が大量に導入されると,配電系統の電圧管理は,逆潮流による対策が必要となる。
さらに,最近では PV 導入が多い一部の配電線で,従来は起こっていなかった現象として,配電線の電圧低下現象が確認されている。
電圧低下現象は,配電線の逆潮流量が大きく,距離が長い配電線で生じやすい。
このため,PV が大量に導入された長距離の配電線の電圧管理では,電圧低下にも対応する必要が出てきた。
配電系統の電圧対策
自動電圧調整器(SVR)
配電系統の電圧対策として,わが国では自動電圧調整器(SVR)*2が多く利用されている。
SVR は,タップ切り替えにより配電線の電圧を制御する装置であり,設置点から末端側までを調整できる。
PV に起因する電圧変動に対応するため,順潮流と逆潮流の両方に対応した SVR も既に用いられている。
有効電力と無効電力
「有効電力」と「無効電力」とは,実際にモーターなどを回転させ,仕事をするのは有効電力だが,無効電力は有効電力の流れを円滑にするための潤滑剤ともいうべき存在で,モータを回すためにも電力を送電するためにも系統の各部に一定量必要となる。
無効電力はその影響が遥か遠方に及ぶことはなく,発生と消費が局所的であり,その過不足が局所の電圧を支配する。
参考文献
- 電気設備の技術基準の解釈
- 電気新聞 テクノロジー&トレンド「次世代電力ネットワークに関する検討 第5回 配電系統の電圧管理」
- 平成30年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問6
- 平成28年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 法規 問6「配電系統における電力用コンデンサ」
- 平成23年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問7