変流器 (CT : Current Transformer) の鉄心が磁気飽和することにより,保護リレーが誤動作し,事故区間外の遮断に至る事例が報告されている。この現象を CT 飽和現象 と呼ぶ。
本記事では,CT 飽和の発生メカニズム,励磁特性の取得方法,および瞬時値解析プログラム XTAP を用いたシミュレーション結果について解説する。
1. CT 飽和現象の発生メカニズム
系統事故電流(一次電流)には,ある時定数で減衰する 直流分重畳 が含まれている。この直流分と交流分が重畳した電流が CT の鉄心に作用すると,鉄心に発生する磁束密度が飽和レベルを超える場合がある。
鉄心が飽和している間は,CT の二次電流がひずみ,本来保護リレーに入力されるべき電流が正しく伝達されない。その結果,外部事故であるにもかかわらず内部事故と誤判定し,誤トリップに至る可能性がある。
2. CT の励磁特性
以下の定格を持つブッシング形変流器 (BCT) の励磁特性から,磁気飽和特性を求める。
励磁特性では,励磁電流 $I_\text{e}$ を 0.01 A から 5 A まで与えたときに発生する電圧 $V_\text{e}$ を測定する。
励磁電流 4 A と 5 A の特性より,過電流定数の 2 倍に相当する 5 A × 40 = 200 A のときの電圧を外挿する。
励磁電流と磁束の換算式は次のとおりである。
\[ i_\text{e} = \sqrt{2} I_\text{e} \]
\[\phi = \sqrt{2} \frac{V_\text{e}}{2\pi f} \]
以下に励磁特性曲線を示す。

3. CT 飽和現象のシミュレーション
瞬時値解析プログラム XTAP を用いて,CT 飽和現象をシミュレーションする。

条件は以下のとおりである。
- 計算時間刻み : 0.01 ms
- 電源電圧 sourceVoltage : 10 kVrms,50 Hz
- 線路インピーダンス(抵抗分) lineResistance : 0.0318 Ω
- 線路インピーダンス(インダクタンス分)lineInductance : 3.18 mH
- 遮断器 circuitBreaker : 0.02 s で投入
- 変流器比 ctRatio : 0.001 : 1 (1000/1 A)
- 励磁特性 magnetizingCharacteristics : 前述のとおり
- 二次巻線抵抗 抵抗分 secondaryWindingResistance : 5 Ω
- 二次巻線抵抗 インダクタンス分 secondaryWindingInductance : 0.001 mH
- リレー負担 relayBurden : 10 Ω
シミュレーション結果として,変流器の二次電流 (Secondary Current) およびリレー入力電流 (Relay Input Current) を示す。
遮断器投入直後は直流分重畳が大きく,CT が飽和している。
直流分が減衰するにつれ,飽和するタイミングが徐々に変化していく様子が確認できる。

4. まとめ
本記事では,変流器の飽和現象について,その発生メカニズム,励磁特性,および XTAP を用いたシミュレーション結果を示した。
CT 飽和は保護リレーの誤動作に直結する重要な現象であり,電気主任技術者や電験受験者にとって理解すべき基本事項である。
参考文献
- 電気学会技術報告 第1475号「保護制御システムにおける計器用変成器の関連技術の現状とその動向」
更新履歴
- 2026年6月13日 新規作成


















