目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

低圧電路の絶縁監視

次の文章は,低圧電路の絶縁監視に関する記述である。

「電気設備技術基準」の規定により,原則的に,電路は大地から絶縁することとなっている。

高圧受電の自家用電気工作物の低圧電路については,その絶縁状態を監視する技術が実用化され,経済産業省の告示及び内規にもそれを使用した場合の点検頻度が規定されたことから,以降広く活用されている。

この低圧電路の絶縁監視技術の代表的な方式として,主変圧器の二次側低圧電路の B 種接地工事の接地線に流れる漏洩電流($I_0$)を検出することにより常時絶縁監視を可能とする $I_0$ 方式がある。

しかし,対地静電容量が大きい場合,対地静電容量による電流 $I_\text{0c}$ が大きくなり,電路に絶縁不良がなくとも,漏えい電流 $I_0$ が大きくなるという課題がある。

このため,漏洩電流($I_0$)のうち,絶縁抵抗による電流成分($I_\text{0r}$)のみを検出する $I_\text{0r}$ 方式も実用化されている。

なお,$I_0$ 方式も $I_\text{0r}$ 方式も,① 接地相の絶縁劣化が検出できない,② 複数の非接地相の漏洩電流が打ち消し合う場合に検出できない,という共通の課題がある。

これらの課題に対しては,$I_\text{gr}$ 方式という絶縁監視技術が開発されている。

これは,商用周波数に対して異なる周波数の監視電源電圧を B 種接地工事の接地線を介して加え,電路と対地間に流れる漏洩電流のうちから監視電源による電流($I_\text{g}$)を取り出し,さらに対地絶縁抵抗による電流成分($I_\text{gr}$)のみを検出する方式である。

参考文献

  • 令和5年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問4「低圧電路の絶縁監視」

更新履歴

  • 2023年9月5日 新規作成

地中電線路の施設

次の文章は,「電気設備技術基準」及び「電気設備技術基準の解釈」に基づく,地中電線路の施設に関する記述である。

地中電線路を施設する場合は,地中電線(地中電線路の電線をいう。)には,感電のおそれがないよう,使用電圧に応じた絶縁性能を有するケーブルを使用しなければならないとともに,以下によること。

地中電線路の施設方法

地中電線路は,管路式,暗きょ式又は直接埋設式により施設すること。

なお,管路式には電線共同溝(C. C. BOX)方式を,暗きょ式にはキャブ(電力,通信等のケーブルを収納するために道路下に設けるふた掛け式の U 字構造物)によるものを,それぞれ含むものとする。

地中電線路を管路式により施設する場合

地中電線路を管路式により施設する場合にあっては,高圧又は特別高圧の地中電線路には,次により表示を施すこと。

ただし,需要場所に施設する高圧地中電線路であって,その長さが 15 m 以下のものにあってはこの限りでない。

  • 物件の名称,管理者名及び電圧(需要場所に施設する場合にあっては,物件の名称及び管理者名を除く。)を表示すること。
  • おおむね 2 m の間隔で表示すること。ただし,他人が立ち入らない場所又は当該電線路の位置が十分に認知できる場合は,この限りでない。

地中電線路を暗きょ式により施設する場合

地中電線路を暗きょ式により施設する場合にあたっては,防火措置として地中電線に耐燃措置を施す,又は暗きょ内に自動消火設備を施設すること。

地中電線路を直接埋設式により施設する場合

地中電線路を直接埋設式により施設する場合は,所定の技術的規定により施設する場合を除き,地中電線の埋設深さは,車両その他の重量物の圧力を受けるおそれがある場所においては 1.2 m 以上,その他の場所においては 0.6 m 以上であること。

ただし,使用するケーブルの種類,施設条件等を考慮し,これに加わる圧力に耐えるよう施設する場合はこの限りでない。

参考文献

更新履歴

  • 2023年9月4日 新規作成

生産ラインにおける自動化技術

コンピュータを活用して複雑な設計・製図を効率よく行えるものとして CAD システムがある。

3 次元 CAD を用いると,ディスプレイ上で設計対象物を立体的に表示でき,様々な方向から確認することができる。

CAM システムはコンピュータを活用した機械加工を中心とした生産準備の自動化システムをいい,CAD システムと連携させることで,設計対象物の加工手順を生成し,NC 制御された工作機械で加工することが可能である。

XYZ の各軸に主軸又はテーブルの回転,傾斜を加えた多軸制御の工作機械では,CAD システムの 3 次元設計データを活用して,複雑な形状や曲面を加工することができる。

ただし,制御軸が増えると構造が複雑となり,剛性が低くなることや,加工時に切削工具が加工物に接触する角度や面積が変化することで切削抵抗の変動があり,精度や表面粗さが悪化しやすくなることに注意が必要である。

マシニングセンタは,自動的に工具を交換する機能を有する NC 工作機械であり,加工内容の自由度が増え,CAM システムとの親和性が良い。

一方で,より複雑な形状を造形する方法では,3D プリンタが試作や少量生産の製品などへ利用されている。

耐久性のある金属製の立体形状を作成する場合は,粉末状の材料にレーザを照射して溶着させる方法がある。

生産ラインでは,各種工作機械やマシニングセンタの他,溶接,組立,塗装などを行う産業用ロボットや,無人搬送車,自動倉庫などが組み合わされて,工場全体の自動化が行われる。

このようにして工場の自動化をすることをファクトリーオートメーションという。

参考文献

  • 令和5年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問7「生産ラインにおける自動化技術」

更新履歴

  • 2023年9月3日 新規作成

変圧器の冷却

変圧器に入力する電力の一部は,変圧器の内部で損失となり熱に変わる。

この熱による温度上昇は絶縁物の劣化等につながるため,温度上昇を抑制する観点から冷却は必要である。

変圧器の冷却方式には容量や使用環境によって種々の方式がある。

巻線及び鉄心の冷却媒体により方式を大きく分けると,空気(大気)を使用する式,絶縁油を使用する油入式,及び,不燃性,非爆発性を必要とする場所に設置するための不活性ガスを使用するガス冷却式がある。

油入変圧器では,変圧器本体を絶縁油に浸し,巻線の絶縁耐力を高めるとともに,冷却によって本体の温度上昇を抑制する。

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絶縁油に必要な条件は,化学的に安定であること,引火点が高いこと,流動性に富み冷却効果が大きいことなどである。

大形の油入変圧器では,負荷変動や外気の温度変化に伴い油の温度が変動し,油が膨張・収縮を繰り返すため,外気が変圧器内部に出入りを繰り返す。

これを変圧器の呼吸作用という。

呼吸作用により油が劣化する主な原因は,空気中の水分の混入と,油と空気との接触により生じる酸化作用である。

この劣化を防止するため,本体の外部にブリーザやコンサベータを設ける。

変圧器の冷却方式記号の例

変圧器の冷却方式を記号で表示する場合には,冷却媒体の種類および循環方式を記号に配列する。

  • ONAD : 油入自冷式
  • OFAN : 送油自冷式
  • ODAN : 導油自冷式
  • OFAF : 送油風冷式
  • ODAF : 導油風冷式
  • ONWF : 油入水冷式
  • OFWF : 送油水冷式
  • GNAN : ガス入自冷式
  • GDAF : 導ガス風冷式
  • AN : 乾式自冷式
  • AF : 乾式風冷式
  • ANAN : 乾式閉鎖自冷式
  • ANAF : 乾式閉鎖風冷式
  • ONAN/ONAF : 油入自冷式 / 油入風冷式

参考文献

  • JEC-2200「変圧器」
  • 令和5年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問2「変圧器の冷却」

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  • 2023年9月2日 新規作成

スマートメータ

従来,使用されてきた誘導形電力量計は,電力の使用量に応じて機械的に動く円盤が内蔵されている。

そのため,逆潮流があると電力の使用量の正確な計測ができないことから,太陽光発電設備を有する需要家には逆回転防止装置付き誘導形電力量計が 2 台設置されていた。

現在は,デジタルで計測する電力量計の機能により,逆潮流電力量も測定が可能となっている。

その機能に加え,回路の開閉機能,双方向の通信機能,アンペアブレーカの機能(一部の地域は未実装)が付与されたスマートメータ (Smart Meter) が展開されている。

さらに,通信機能の搭載により,検針の自動化が図れるとともに,これまで電力量計で行っていた時間帯別電力量の仕分けを 30 分ごとの計測値を用い MDMS (Meter Data Management System) で行うことが可能となった。

これにより,多様な料金メニューの実現が可能となった。

電力デジタル革命キーワード 250

西村 陽・巽 直樹による『まるわかり 電力デジタル革命キーワード 250』において,スマートメータは次のように説明されている。

スマートメータとは,検針・料金徴収業務に必要な双方向通信機能や,遠隔開閉機能を有した電子式メータのことで,使用者の 30 分ごとの使用電力量の計測や,宅内向けの通信機能を有している。使用電力量などのデータを発信するルートは 3 つあり,それぞれ「A ルート」,「B ルート」,「C ルート」と呼ばれている。

A ルート

スマートメータで計測した使用電力量のデータなどを送配電事業者へ送るルート

B ルート

スマートメータで計測した使用電力量データなどをリアルタイムで需要家へ送るルートで,EMS (Energy Management System) によって使用電力量や電気料金などの「見える化」,機器の制御などを行うことができる。

C ルート

使用電力量データなどをスマートメータから直接または送配電事業者を経由して小売電気事業者やその他の民間事業者など第三者に送るルートで,これによって得られたデータを活用し,需要家への多様なサービスの提供が検討されている。日本ではまだ利用されていない。

 

グリッドで理解する電力システム

東京電力パワーグリッド株式会社 取締役副社長 岡本 浩 著『グリッドで理解する電力システム』において,スマートメータは次のように説明されている。

通信・制御機能を備えた電子式電力量計。検針業務の自動化,電力の遠隔制御などが可能になるほか,30 分ごとの使用電力量計測が可能になるため,計量データを活用した新ビジネス・新サービスが登場しつつある。2024 年度までに全国すべての世帯・事業所で設置される予定。さらにリアルタイムでの計量や,個人の電力データ活用に向けた検討が進められているところ。欧米諸国でもビジネス活用に向けた動きが活発化しているが,メーターの普及率は,実は日本が最も進んでいる。

参考文献

  • 西村 陽・巽 直樹,『まるわかり 電力デジタル革命キーワード 250』,日本電気協会新聞部,2018年8月8日
  • 岡本 浩,『グリッドで理解する電力システム』,日本電気協会新聞部,2020年12月9日
  • 令和5年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問4「スマートメータ」

更新履歴

  • 2023年8月28日 新規作成
  • 2023年8月29日 参考文献に『まるわかり 電力デジタル革命キーワード 250』,『グリッドで理解する電力システム』を追加

発電用太陽電池設備の支持物の構造等

次の文章は,「発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令」及び「発電用太陽電池設備に関する技術基準の解釈」(以下,「太陽電池設備技術基準の解釈」という。)に基づく,支持物の構造等に関する記述である。

太陽電池モジュールを支持する工作物(以下,「支持物」という。)は,次により施設しなければならない。

  1. 自重,地震荷重,風圧荷重,積雪荷重その他の当該支持物の設置環境下において想定される各種荷重に対し安定であること。ここで,支持物の安定とは,規定の荷重に対して,支持物が倒壊,飛散及び移動しないことをいう。
  2. 土地に自立して施設される支持物の基礎部分は,杭基礎若しくは鉄筋コンクリート造の直接基礎又はこれらと同等以上の支持力を有するものであること。
  3. 土地に自立して施設されるもののうち設置面からの太陽電池アレイ(太陽電池モジュール及び支持物の総体をいう。)の最高の高さが 9 m を超える場合には,構造強度等に係る建築基準法及びこれに基づく命令の規定に適合するものであること。

太陽電池設備技術基準の解釈」では,支持物の標準仕様として,一般仕様,強風仕様及び多雪仕様の三つが示されている。

これらは,基準風速などの諸条件を満たす場合に,強度計算を実施せずとも必要な強度等を確保できるよう,地上設置型の設備に適用できる標準仕様となっている。

 

発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令

第四条 支持物の構造等

太陽電池モジュールを支持する工作物(以下「支持物」という。)は、次の各号により施設しなければならない。

  1. 自重、地震荷重、風圧荷重、積雪荷重その他の当該支持物の設置環境下において想定される各種荷重に対し安定であること。
  2. 前号に規定する荷重を受けた際に生じる各部材の応力度が、その部材の許容応力度以下になること。
  3. 支持物を構成する各部材は、前号に規定する許容応力度を満たす設計に必要な安定した品質を持つ材料であるとともに、腐食、腐朽その他の劣化を生じにくい材料又は防食等の劣化防止のための措置を講じた材料であること。
  4. 太陽電池モジュールと支持物の接合部、支持物の部材間及び支持物の架構部分と基礎又はアンカー部分の接合部における存在応力を確実に伝える構造とすること。
  5. 支持物の基礎部分は、次に掲げる要件に適合するものであること。
    1. 土地又は水面に施設される支持物の基礎部分は、上部構造から伝わる荷重に対して、上部構造に支障をきたす沈下、浮上がり及び水平方向への移動を生じないものであること。
    2. 土地に自立して施設される支持物の基礎部分は、杭基礎若しくは鉄筋コンクリート造の直接基礎又はこれらと同等以上の支持力を有するものであること。
  6. 土地に自立して施設されるもののうち設置面からの太陽電池アレイ(太陽電池モジュール及び支持物の総体をいう。)の最高の高さが九メートルを超える場合には、構造強度等に係る建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)及びこれに基づく命令の規定に適合するものであること。

参考文献

更新履歴

電気自動車における電動機制御

電気自動車は,搭載された電動機により車輪・タイヤに回転力を伝え,路面とタイヤとの摩擦により駆動する。

電気自動車では,永久磁石同期電動機が主流である。

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また,制動する際に,駆動用の電動機を用いて,運動エネルギーを電気エネルギーに変換する方式がある。

変換されたエネルギーは,電気自動車ではバッテリーに蓄えられる。

この制動方法のことを回生ブレーキと呼び,エネルギーの再利用が可能である。

しかし,電気自動車のバッテリーが満充電である場合には,回生ブレーキを利用する事は出来ないため,このようなときには,従来の摩擦によるブレーキに切り替える制御が用いられる。

電気自動車

電気をエネルギー源とし,搭載されている蓄電池(バッテリー)へあらかじめ充電することによって電動機(モーター)を動力源として走行する自動車のこと。

ハイブリッド車プラグインハイブリッド車との区別のために「バッテリー EV (Electric Vehicle)」という表現を使うこともある。

また,最初から電気自動車専用として設計されたものを「ピュア EV」,ガソリンエンジンなどの内燃機関を搭載する前提で設計された車両の動力源をモーターに転換したものを「コンバート EV」と呼ぶ。

なお,架線集電方式のトロリーバス無軌条電車ともいい,電気自動車とは区別される。

参考文献

  • 西村 陽・巽 直樹,『まるわかり 電力デジタル革命キーワード 250』,日本電気協会新聞部,2018年8月8日
  • 令和5年度 第二種電気主任技術者 一次試験 機械 問2「電気鉄道・電気自動車における電動機制御」

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  • 2023年8月27日 新規作成
  • 2023年8月29日 『EV 推進の罠』のアフェリエイトを追加