目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

変圧器の負荷時タップ切換装置

電源電圧や負荷の変動による出力電圧(二次電圧)の変化を補償するために,巻線の途中から口出し線を出してタップを設け,これを切り換えることで巻数比を変更できるようにしたものをタップ切換変圧器*1という。

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タップ切換変圧器には無電圧切換変圧器と負荷時タップ切換変圧器がある。

負荷時タップ切換装置は,電力系統の適正な電圧調整と設備の有効利用を目的に設置される。

この装置には,直列巻線をもつ変圧器と負荷時タップ切換装置とを組み合わせた負荷時電圧調整器(LRA : load-ration adjuster)と,変圧器に負荷時タップ切換変圧器LRT : load-ration transformer)があり,近年は後者が主として採用されている。

負荷時タップ切替器本体の構成要素

負荷時タップ切換装置における負荷時タップ切換器は,無電流状態でタップを選択するタップ選択器(tap selector),選択された回路の電流を開閉する切換開閉器(diverter switch),タップ切換の際,タップ間が橋絡されたときに流れる循環電流を制限する限流インピーダンスとから構成される。

負荷時タップ切換装置としては,この他に切換器を駆動する駆動装置及び保護機器などの附属装置で構成される。

なお,変圧器の巻線が Y 結線(星形結線)の場合には,負荷時タップ切換器は,通常,絶縁が容易な巻線の中性点側に設けると,負荷時タップ切換装置の相間の絶縁を低減することができ,各相を一体化することができる。

タップの調整範囲としては,配電用が 25 % または 15 %*2,送電用が 20 % または 15 % が標準とされており,中心タップ電圧は極力定格電圧に一致させることとしている。

また,タップ間隔は系統から許容される電圧変動幅(1 ~ 2 %)と同等とすればよいが,タップ切換器のタップ切換能力にも限度がある。

標準的なステップ間隔は 2 % 以下であり,系統側の許容値よりも小さくしてある。

切換方式による分類

無電圧タップ切換装置と負荷時タップ切換装置

無電圧タップ切換変圧器は,変圧器をいったん回路から切り離し,無励磁状態とした後,タップ切り換えを行う。

負荷時タップ切換方式は,一般に無電圧タップ切換装置よりもタップ数が 10 ~ 20 タップと多く,負荷電流が流れている状態でタップの切換,すなわち変圧比を変更することができる。

負荷時タップ切換方式を採用した変圧器は,± 10 % 程度の電圧調整を行うことが可能である。

リアクトル式と抵抗式

変圧器のタップを負荷をかけたまま切り換える際,タップの切換途中でタップ間を橋絡した時に流れる循環電流を制限するために,タップ間にリアクトルを挿入する方式をリアクトル式,抵抗を用いるものを抵抗式という。

抵抗式では,タップ切換動作を 0.05 秒といった短時間で行い,小さな抵抗器で済むように構成されている。

直接式と間接式

負荷時タップ切換変圧器は直接式と間接式に大別される。

直接式は,外部回路に接続された巻線の負荷電流が負荷時タップ切換装置を通過するように結線された方式であり,間接式は,直列変圧器の励磁巻線を流れる電流が負荷時タップ切換装置を通過するように結線された方式である。

極性切換方式と転移切換方式

所要のタップ点数が多い場合には,必要となるタップコイル数の約半数のタップコイルを設けるだけで,この要求を満足させるようにした極性切換方式や転移切換方式が採用される。

転移切換方式

負荷時タップ切換方式のうち,転移切換方式のイメージを下図に示す。

全タップ範囲の半分に相当する巻数の粗タップ巻線(疎コイル)を抜いたり入れたりすることによって,半分の電圧を調整し,これに密タップによる細かい調整をする方式で,転移切換方式または粗密切換方式と呼ばれる。

転移切換方式ではタップ巻線の接続を変更して,タップ範囲を切り換える転移切換器(transfer switch)を含み,極性切換方式ではタップ巻線の極性を反転してタップ範囲を切り換える極性切換器(revesing switch)を含む。

図 タップ切換装置のうち転移切換方式

図 タップ切換装置のうち転移切換方式

タップ切換を行う電圧

タップ切換を高電圧側で行うものと低電圧側で行うものがあるが,絶縁設計上は低電圧側が有利で,電流容量の点からは高電圧側で切り換えを行った方が有利である。

タップ切換方式

一般的に,タップ電圧またはタップ範囲が指定された巻線側にそのタップ巻線を設ける。

しかし場合によっては,他の巻線側にタップ巻線を設けて等価的に変圧比を変えることがある。

後者のように,タップ巻線を他の巻線に設けたようなタップの取り方としては,等価タップ切換や間接タップ切換がある。

IEC 規格(IEC 60076-1)では,これらのタップ切換方式に対して以下のように記載されている。

CFVV (constant flux voltage variation)

タップ巻線のない巻線の電圧は常に一定で,タップ巻線のある巻線の電圧を変化させる(鉄心内磁束密度一定)

VFVV (variable flux voltage variation)

タップ巻線のある巻線の電圧は常に一定で,タップ巻線のない巻線の電圧を変化させる(鉄心内磁束密度変化)

CbVV (combined voltage variation)

CFVV と VFVV の組合せ

接点方式による分類

タップ切換途中で 2 個の異なるタップが橋絡され,このとき流れる循環電流を開閉するため,耐弧メタルをはり付けた油中接点又は真空バルブが使用される。

油中開閉器の場合,タップ切り換えの正常動作の際に発生するアークにより絶縁油が汚損する。この影響を避けるため,最近では真空バルブ式開閉器が用いられることが多い。

油中接点方式

タップ切換時に,切換開閉器室内の絶縁油中で通電電流を遮断する。

このため,周囲の絶縁油を汚損し,切換開閉器室内の絶縁性能が低下することが避けられない。

その対策として,活線浄油機を設け,汚損した切換開閉器湿の絶縁油を毎日循環ろ過運転している。

さらに,数年に 1 回の頻度で切り換え開閉器室絶縁油の全量交換が必要である。

真空バルブ方式(vacuum valve on-load tap changer)

真空バルブ内で通電電流を遮断するため,切換開閉器室の絶縁油を汚損しない。

これにより,活線浄油機が不要となり,点検周期の延伸,絶縁油の取替回数の削減ができるなどメンテナンスコストの大幅な削減ができる。

ガス変圧器など油を用いない変圧器には真空バルブが採用されていたが,最近では油入変圧器においても真空バルブ式開閉器が用いられることが多い。

調整範囲

配電用

配電用の負荷時タップ切換変圧器の電圧調整範囲は 2 次電圧を一定とした場合の 1 次調整範囲で表し,25 % と 15 % を標準とし,全調整範囲全容量とする。

例えば定格電圧 66 kV の 変圧器の場合,60*3 × 0.25 × 1/2 = 7.5 kV が調整範囲となる。

タップ巻線

三相変圧器の高圧側が星形結線の場合,タップを巻線の中性点側に設けると,負荷時タップ切換装置の相間の絶縁を低減することができ,各相を一体化することができる。

負荷時タップ切換装置の耐用切換回数

通常,負荷時タップ切換装置の耐用切換回数としては,電気的には 20 万回,機械的には 80 万回と決められ,形式試験で確認されている。

負荷時タップ切換開閉装置の 1 日当たりの切換回数を N 回とすると,電気的な耐用切換回数以下となる使用年数 Y 年は次式で求められる。

365 × N × Y ≤ 200,000

負荷時タップ切換開閉装置の 1 日当たりの切換回数と電気的な耐用切換回数に到達する使用年数との関係は,下図となる。

例えば,1 日当たりの切換回数 30 回の負荷時タップ切換開閉装置は,18.3 年で電気的な耐用切換回数に到達する。

図 負荷時タップ切換装置の 1 日当たりの切換回数と電気的な耐用切換回数に到達する使用年数

図 負荷時タップ切換装置の 1 日当たりの切換回数と電気的な耐用切換回数に到達する使用年数

参考文献

  • JEC-2200-2014「変圧器」
  • IEC 60076-1 "Power transformers - Part 1: General"
  • 電気事業講座 第10巻 電力流通設備
  • 電気協同研究 第20巻 第5巻「負荷時タップ切換変圧器(1)」
  • 技術開発ニュース No. 152「真空バルブ式負荷時タップ切換装置の開発
  • 令和元年 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問2「タップ切換変圧器」
  • 平成25年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2「変圧器の負荷時タプ切換装置」
  • 平成20年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2「変圧器の負荷時タップ切換装置」
  • 平成17年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問3「変圧器の負荷時タップ切換装置」
  • 平成12年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問2「負荷時タップ切換変圧器」

更新履歴

  • 2021年12月7日 新規作成
  • 2021年12月9日 切換方式による分類を追加
  • 2021年12月11日 接点方式による分類を追加
  • 2021年12月30日 参考文献に「令和元年 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問2」を追加
  • 2022年2月11日 参考文献に「平成17年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問3」を追加
  • 2022年2月12日 参考文献に「平成12年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問2」を追加
  • 2022年5月3日 タップ切換方式の説明を追加
  • 2022年6月17日 転移切換方式の図を追加
  • 2022年6月19日 参考文献のタイトルを追加
  • 2022年7月9日 耐用切換回数の説明に加筆
  • 2022年7月31日 「送配電系統の電圧上昇とその対策」のリンクを追加

*1:JEC-2200-2014「変圧器」に記載されている 2. 用語の意味 によると,負荷時タップ切換変圧器とは,「電圧が異なる二つ以上の回路間の電圧・電流の変成を行い,かつ負荷時タップ切換えが行える変圧器」のことである。

*2:電気協同研究 第20巻 第5号「負荷時タップ切換変圧器(1)」において,配電用負荷時タップ切換変圧器の仕様統一についての申合せ事項が定められた。

*3:公称電圧 JEC-34-1933 を基準とした % で示す,と定められているため,60 となる。