目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

電力系統と設備との協調

電力系統は,構成要素である送電線・変電機器などの設備が有機的に関係し合い,システム全体として,最適な機能を発揮するように設計する必要がある。

このような電力系統と設備との協調(「システムコーディネーション」と呼ばれている)に関して,説明する。

増大する短絡電流抑制

系統の大容量化・集中化により増大する短絡電流を抑制するために,変圧器の仕様及び変圧器の機器設計で考慮すべき事項について述べる。

変圧器の仕様及び変圧器の機器設計で考慮すべき事項

変圧器の仕様

短絡電流を抑制するために,変圧器のインピーダンスを大きく設定する。

変圧器のインピーダンスを大きくすれば,電圧変動率が大きくなり,系統安定度が悪くなる方向にいくので,システムコーディネーションの観点から,系統と機器のバランスを考え,変圧器のインピーダンス値を選定している。

例えば,500 kV 変圧器で一般的なインピーダンスが 14 [%] に対して,高インピーダンスでは 23 [%] が用いられることが多い。

変圧器の機器設計

高いインピーダンスにするために,巻回数の増大,巻線径増大が行われる。

地中系統に用いられる機器で考慮すべき事項

大都市に電力を供給するために 275 [kV] の大容量の電力ケーブルを使用した系統が導入されている。

架空系統と異なり,地中系統に用いられる送電線用遮断器,リアクトル開閉用遮断器及び計器用変圧器についてそれぞれ考慮すべき事項を説明する。

地中送電線用遮断器

地中送電線路では,充電遮断電流の値が架空送電線路より大きいため,進み小電流遮断電流値として,架空送電線路より大きな値が必要である。

例えば,275 kV 系統では,充電遮断電流は,架空送電線用では 200 [A] に対して,地中送電線用では 500 [A] が規格化されている。

リアクトル用開閉遮断器

275 [kV] ではケーブルの充電容量が大きいため,それを補償するためにリアクトルが設置されることが多い。

リアクトル開閉用遮断器には,再発弧サージへの考慮が必要である。

その抑制対策として,開極位相制御が採用されている。

計器用変圧器

ケーブル系統では残留電荷の減衰時定数が長いため,計器用変圧器によって残留電荷を放電する機能が求められる。

開閉過電圧の抑制

500 kV 送電線では,開閉過電圧が送電鉄塔の大きさを決める大きな要因である。

この開閉過電圧を抑制するために,変電所の機器で採用している対策を説明する。

送電線に発生する開閉過電圧を抑制するため,500 kV 変電所に設置される送電線用の遮断器に,抵抗投入方式を採用している。

投入抵抗値は 1 000 [Ω] が用いられ,開閉過電圧は 2 [p.u.] 以下に抑制されている。

最近では,変電所の送電線回路に高性能避雷器を併用する場合も多く,より効果的に送電線に発生する開閉過電圧の抑制が行われている。

図 抵抗投入方式を採用した遮断器

図 抵抗投入方式を採用した遮断器

電流協調

変電所の直列機器(主要変圧器,遮断器など),電線・電力ケーブルなどの選定時の電流強調に関して,説明する。

定常時(過負荷時を含む)の電流協調

定常運転中,連続的に流れる電流の許容値は,機器では定格電流,また電線や電力ケーブルなどでは連続許容電流で表される。

これらの電流値は,気中および SF6 ガス中の接触部では主として,導体材料の機械的強度を低下させたり接触部の過熱を招くおそれのない温度上昇の限度および最高許容温度で,また油入機器や油入ケーブルなどでは,主として油や絶縁紙の絶縁特性を劣化させるおそれのないよう規制される。

また,最近では架橋ポリエチレンケーブルが使用されることが多くなってきており,これについても絶縁特性を劣化させるおそれのないよう規制される。

直列機器の過負荷電流容量は,一般的には事前通過電流が定格電流以下であれば短時間の過負荷運転は可能である。

この際の注意点は,接続する機器や電線・電力ケーブルなどの種類によって温度上昇の時定数が異なることで,変圧器のように時定数の比較的大きいものと断路器や電線のように時定数の比較的小さいものとについて,個々に適切な電流協調を図ることが必要である。

事故時(系統の短絡事故時や地絡事故時)の電流協調

系統の短絡事故時のいわゆる短絡電流の許容値は,機器では定格短時間電流(変圧器では短時間電流強度),また電線や電力ケーブルなどでは故障瞬時許容電流で表される。

これらの電流を決める要因も一般に定常時の場合と同様であるが,通電時間が 1 ~ 2 秒と極めて短時間であることから,定常時の場合よりかなり高めに選定されている。

ただし,短絡電流が大きいと導体や支持物に加わる電磁力もきわめて大きくなるため,これがより大きな規制要因となることもある。

一方,特に直接接地系統では,地絡・短絡故障時に大きな大地帰路電流が流れ,通信線や低圧制御回路などに過電圧を誘起したり,接地電位の上昇を招いたりするおそれがあるので注意を要する。

また,変電所内の近傍送電線の地絡・短絡時には,架空地線や接地線に大きな事故電流が分流するので,これらとの電流協調にも十分な配慮が必要である。

参考文献

  • 平成22年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問4「電力系統と設備との協調」
  • 平成19年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問2「電流協調」

更新履歴

  • 2022年11月16日 新規作成