目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

低圧屋内配線における保護の種類

低圧屋内配線における保護の種類としては,主として過電流,地絡保護,過電圧保護がある。

過電流保護

過負荷電流,あるいは,短絡電流を総称して過電流(OC : Over Current)というが,この過電流による電線,電気機器の過熱焼損及び火災事故を防止するためには,過電流遮断器を施設することが必要である。

電気設備に関する技術基準を定める省令 第14条「過電流からの電線及び電気機械器具の保護対策」

電路の必要な箇所には,過電流による過熱焼損から電線および電気機械器具を保護し,かつ,火災の発生を予防できるよう,過電流遮断器を施設しなければならない。

過負荷保護

過負荷保護の場合は,導体の許容温度に達するまでに電流を遮断することが求められるが,あらゆる条件下で自動遮断することは困難なため,施設場所の危険度に応じて,適切な場所に過電流遮断器を設置する。

電動機の過負荷保護装置の施設

屋内に施設する電動機には,電動機が焼損するおそれがある過電流を生じた場合に自動的にこれを阻止し,又はこれを警報する装置を設けること。

ただし,次のいずれかに該当する場合はこの限りでない。

  1. 電動機を運転中,常時,取扱者が監視できる位置に施設する場合
  2. 電動機の構造上又は負荷の性質上,その電動機の巻線に当該電動機を焼損する過電流を生じるおそれがない場合
  3. 電動機が単相のものであって,その電源側電路に施設する過電流遮断器の定格電流が 15 A(配線用遮断器にあっては,20 A)以下の場合
  4. 電動機の出力が 0.2 kW 以下の場合

短絡保護

短絡とは,電線と電線が接触し,その間のインピーダンスが著しく低くなり,大電流が流れる事象である。

そのため,電線の溶断,発電機・変圧器の焼損など,火災事故につながる危険性が高い。

短絡の原因は,電線の被覆の経年劣化,異物の接触,遮断器の操作ミスによって発生したアークなどにより電線間が接触することが挙げられる。

短絡保護の場合は,故障点から最も近い電源側の遮断器で故障点を速やかに切り離すことが基本である。

短絡電流は,変圧器のインピーダンスと低圧配電線の短絡点までのインピーダンスを合成した値で決まるが,これを考慮して,高圧ヒューズ溶断特性と低圧配電線の温度上昇特性との協調を図ることが必要である。

地絡保護

低圧屋内配線において,地絡とは,電路と大地間の絶縁が低下して,アークや導電性物質により橋絡することをいう。

地絡の原因は,樹木や重機,飛来物などによる電線と大地の接触や,電線の被覆の経年劣化による導体部分露出による電線と大地の接触などがあげられる。

地絡による感電を防止する方法としては,二重絶縁,保護接地,漏電遮断等がある。これらにはそれぞれ特徴があるが,現行において最も有効な方法は漏電遮断である。

地絡保護時限協調が不十分であると,末端における故障でも直ちに広範囲の停電となることがある。

配電系統の場合,配電線を適当な区間に区分し,故障時に故障区間の電源側自動区分開閉器を開放して,故障区間以降を切り離す故障区間分離方式がとられている。

この方式の制御方法には,自動区分開閉器の時限協調による時限順送方式と,制御信号を使用した信号方式とがあるが,前者が一般的に使用されており,配電用変電所の再閉路,再々閉路等における自動開閉器の動作状況により故障区間と健全区間を自動的に切り分けている。

電気設備に関する技術基準を定める省令 第15条「地絡に対する保護対策」

電路には,地絡が生じた場合に,電線若しくは電気機械器具の損傷,感電又は火災のおそれがないよう,地絡遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならない。ただし,電気機械器具を乾燥した場所に施設する等地絡による危険のおそれがない場合は,この限りでない。

高低圧混触

高低圧混触においては,「電気設備技術基準の解釈」によれば,低圧配電線の電位上昇が 150 V を超える場合,配電用変圧器の地絡保護により, 1 秒を超え 2 秒以内に遮断するときは 300 V ,1 秒以内に遮断するときは 600 V を超えないように抑制することになっている。

過電圧保護

過電圧には雷サージや共振現象などによって生じる過渡的異常電圧があるが,低圧屋内配線を対象にする場合,主に雷サージによる過電圧の保護を特に重要視する必要がある。

参考文献

www.iee.jp

更新履歴

  • 2021年11月21日 新規作成
  • 2021年11月22日 用語解説を追加
  • 2022年3月6日 参考文献に「平成26年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問6」を追加
  • 2023年9月2日 参考文献に「令和5年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3」を追加