目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

大容量変電機器の輸送及び現地据付け

大容量変電機器の信頼性確保に関して大容量変圧器及び大容量 GIS を例にとり,説明する。

輸送及び現地据付け

大容量変電機器の品質を確保するために,輸送及び現地据付けに関して,設計時に配慮する事項を説明する。

大容量変圧器及び大容量 GIS に共通して配慮する事項

工場で試験を終えた変電機器は,必要に応じて輸送のための分解,梱包を行ってから,現地へ輸送される。

現地では,分解された機器を組み立て,絶縁媒体を封入し,試験を行い,運用を開始する。

大容量変電機器の設計では,輸送において,輸送単位が機器一体輸送,または,分解数を極小化するように配慮する。

また,現地据付けにおいては,現地作業の範囲を極小化,単純化し,施工不良の発生を減らすよう配慮して設計されている。

輸送に関して配慮すべき事項

我が国の陸上輸送は諸外国に比べ,一般に輸送重量・制限が厳しく,個々に輸送方法・経路を事前に確認する必要がある。

検討する事項としては,以下の通り。

  • 輸送経路
  • 搬入路と荷下ろし方法
  • 輸送時の振動・衝撃

大容量変圧器に配慮する事項

リード線の接続においては,工場製造時に取り付けた羽子板端子構造によるボルト締結とし,リード線切断を行わない構造としている。

冷却部取り付け部の接続では,取り付け部のバルブを本体側のフランジに取り付けたまま,冷却器を取り外せる構造として,分解,輸送時の防水,防塵効果を高めている。

大容量 GIS に配慮する事項

通電部の通電接触子を用い,導体部に,はめあい構造,ボルト締結といった簡易な接続方式を採用し,複雑な作業を伴わず,確実に接続できるよう配慮されている。

タンク接続においては,フランジ部の防水構造化,吸着剤取り付けによる防湿対策がなされている。

また,金属異物が発生しにくいはめ合い構造による異物対策がなされている場合もある。

現地据付けにおいて品質管理に必要な配慮事項

現地据付けにおいて品質管理に必要な配慮事項を,① 作業環境,② 絶縁物の吸湿防止,③ 異物混入防止に関して,機器ごとにそれぞれ説明する。

大容量変圧器

① 作業環境

タンク内に塵埃や異物が混入しないよう,周囲に隔壁を設置するなどの防塵措置を施す。作業場周辺に散水を行うなどの作業環境を整備し,必要により粉塵計を使用して防塵管理を行う。

② 絶縁物の吸湿防止

タンク内作業時における絶縁物の吸湿を防止するため,絶縁物の露出時間を管理するとともに,作業に使用する乾燥空気の湿度とタンクの内部湿度を管理する。

現地作業中に吸湿した水分を熱湯噴霧循環により乾燥させ,絶縁物表面部分の水分量を基準値以下にする。

高真空化(0.1 ~ 3 [Torr])で脱気装置を通して脱気ろ過した絶縁油を注油する。

③ 異物混入防止

真空脱気注油後,さらに絶縁油中の微小な塵埃を除去し,脱気度を向上させるため,タンク内の絶縁油を真空脱気装置を通して脱気ろ過循環する。

大容量 GIS

① 作業環境

現地接続部の組立の品質は,作業環境の影響を受けやすい。

雨天時の作業を回避するとともに,湿度,風速,及び塵埃を基準値以下にする。(湿度 80 [%] 以下,風速 5 [m/s]以下,塵埃 20 [カウント/min] 以下)

② 絶縁物の吸湿防止

組み立て中は,所定の防水処理を行い,吸着剤の放置時間は 30 分以内とする。

SF6 ガスの水分管理として,分解ガスを発生しない機器は 500 [ppm] 以下,分解ガスを発生する機器は 150 [ppm] 以下にする。

③ 異物混入防止

作業中はフランジ面への保護カバー取り付けや,Oリングの傷,異物がないことを確認する。

防塵フェンスや防塵ハウスを設置し,防塵に配慮する。

ガス処理を行う前に,導体接続部の目視確認を行い,真空掃除機などを用いて,タンク内部を清掃し,吸着剤を取り付ける。

参考文献

  • 平成24年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問4「大容量変電機器の信頼性確保」
  • 平成12年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問2「SF6 ガス絶縁開閉装置(GIS)の輸送,据付,現地試験」

更新履歴

  • 2022年11月15日 新規作成
  • 2022年12月18日 参考文献に「平成12年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問2」を追加