令和5年12月1日,(一財)電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者試験委員会より,「令和6年度第三種電気主任技術者試験に係る問題作成方針」が公表された。
令和5年度の問題作成方針との違いを中心に確認する。
なお,令和5年度第三種電気主任技術者試験に係る問題作成方針については,以下の記事にまとめている。
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理論科目
理論科目の内容は「電気理論,電子理論,電気計測及び電子計測」である。
理論科目の出題範囲は,以下のとおり。
電気に関する基本物性や計測技術に関する理解と分析力を問う。
電気磁気理論、電気回路理論、固体電子理論、真空電子理論、電子回路理論、電気・電子計測を出題範囲とする。
理論科目の出題範囲は,令和5年度と同じ内容である。
電力科目
電力科目の内容は「発電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。) の設計及び運用並びに電気材料」である。
電力科目の出題範囲は,以下のとおり。
電気エネルギーの生産から流通までの技術的知識とその応用力を問う。
発変電・蓄電・送配電の各種電気工作物は我が国の国土上にネットワークとして広がり、生活と産業を維持する上で重要なインフラを形成している。これらの設計・建設・運転に関する技術の基礎的理解に関する出題を行うとともに、電気エネルギー供給面における安全確保と災害・事故対応、環境の保全、再生可能エネルギー等の新技術への対応といった応用面等について問う。また、電気材料及び高電圧工学についても出題範囲とする。
電力科目の出題範囲は,「発変電・送配電」が「発変電・蓄電・送配電」に変更された。
電力科目の出題範囲見直しの背景(推察)
需給調整市場での活用や,再生可能エネルギーの電力市場への統合に伴う蓄電池の重要性を高まりを背景に,系統に直接接続する大型の系統用蓄電池の特性を活用した新たな事業が出現してきているところ,事業の位置づけをはじめとして,制度設計の検討が進められてきた。
「電気設備に関する技術基準を定める省令」において,「蓄電所」が以下のように定められた。
「蓄電所」とは、構外から伝送される電力を構内に施設した電力貯蔵装置その他の電気工作物により貯蔵し、当該伝送された電力と同一の使用電圧及び周波数でさらに構外に伝送する所(同一の構内において発電設備、変電設備又は需要設備と電気的に接続されているものを除く。)をいう。
出題範囲の見直しがあったことから,蓄電所に関する対策は十分に行うべきと考える。
機械科目
機械科目の内容は「電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理」である。
機械科目の出題範囲は,以下のとおり。
電気エネルギーの利用、電気機器に関する技術的知識とその応用力を問う。
生活・産業の維持に電気は不可欠であり、これらの基本的要素となるパワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに情報伝送及び処理等について近年の技術の進歩を考慮しつつ問う。また、燃料電池などのクリーンエネルギーや太陽光発電などの再生可能エネルギーとその有効利用のためのバッテリーを含む,エネルギーマネージメントなどの基礎的知識についても出題範囲とする。
機械科目の出題範囲は,令和5年度と同じ内容である。
法規科目
法規科目の内容は「電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理」である。
法規科目の出題範囲は,以下のとおり。
電気工作物とその保安について、計画・設計・建設・管理に必要な法令・技術基準等に関する知識、及びそれらに基づく的確な判断力を問う。
電気関係法令(電気事業法、電気工事士法、電気工事業法、電気用品安全法)、各種技術基準(電気設備技術基準、発電用風力設備技術基準、発電用太陽電池設備技術基準等)、及び技術的知識も踏まえた電気施設全体の運営について問う。また,電気工作物における我が国のサイバーセキュリティ対策についても出題範囲とする。
法規科目の出題範囲は,令和5年度と同じ内容である。
参考文献
- (一財)電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者試験委員会,「令和6年度第三種電気主任技術者試験に係る問題作成方針」,令和5年12月1日
- (一財)電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者試験委員会,「令和5年度第三種電気主任技術者試験に係る問題作成方針」,令和4年12月1日
- 経済産業省 産業保安グループ 電力安全課,「蓄電所に対する保安規制のあり方について」,令和4年4月15日