発変電所などに使用される直流電源は,系統に事故が発生したときも含めて,開閉器や保護制御装置を動作させる電源であり,蓄電池が多く採用されている。
蓄電池の概要
蓄電池としては,充・放電を繰り返すことができる鉛電池やアルカリ電池が使用されている。
蓄電池の容量は,充電された状態から,ある一定の電流で放電されたとき,規定の放電終止電圧になるまで出し得る電気量をいう。蓄電池の容量を決めるときには,放電電流の大きさとそれに対応する放電時間を想定する必要がある。
蓄電池の容量などの決定に当たって考慮すべきこととして,以下のことが挙げられる。
- 停電のため蓄電池の充電が不可能になっても,想定した最長の停電時間の間,直流電源として負荷に供給できる十分な容量を持っていること。
- 放電終期に瞬間最大放電電流が流れた場合に制御ケーブルによる電圧降下を考えても,蓄電池端子電圧が十分であることを確認しておくこと。
- 容量が経年劣化で減少するが,この分として 20 [%] 程度余裕を見込むことが必要であること。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は 1859 年,フランスのプランテの発明による二次電池で,150 年以上の歴史をもち,自動車の始動用,産業用の非常用電源装置,電動フォークリフト等の様々な用途がある。
鉛蓄電池は正極活物質に二酸化鉛,負極活物質に鉛,電解質に硫酸水溶液を用い,電極反応は以下の式で表される。
(全反応)
PbO2 + 2H2SO4 + Pb → PbSO4 + 2H2O + PbSO4
(正極)
PbO2 + 3H+ HSO4- + 2e- ↔ PbSO4 + 2H2O
(負極)
Pb + HSO4-- ↔ PbSO4 + H+ + 2e-
全反応は,二酸化鉛と鉛が硫酸と反応して硫酸鉛と水になる反応であり,放電反応で正極の二酸化鉛は還元される。
電解質の濃度は満充電時に約 30 % で,放電するのに伴って濃度は低くなる。
鉛蓄電池の電圧は水溶液を用いる電池として最も高く,公称電圧は 2.0 V である*1。
この電圧は水の理論分解電圧よりも高く,自己放電が大きいことの一つの理由となっている。
鉛蓄電池の放電の状態を知るためには電池電圧を測る方法のほかに,電解液の比重を測る方法も利用されている。
この比重が小さいときには電池の放電が進んでいると判断できる。
参考文献
- 令和6年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問6「鉛蓄電池」
- 令和元年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問4
- 平成26年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問7
- 平成17年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3
[rakuten:drivemarket:10018243:detail]