目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

電気主任技術者の PEST 分析 2023年版

電気主任技術者を取り巻く「マクロ的な環境要因」を考えるため,PEST 分析*1を行ってみた。

電気主任技術者制度は我が国における電気保安の安全・安心を確保する制度であるが,電気主任技術者の高齢化,外部委託受託者への入職者減など将来的に制度を安定的に維持するのが困難な状況となっている。

これを踏まえると,電気主任技術者は不足する可能性が大きいため,今のうちに,電気主任技術者の免状を取得しておけば,就職に有利と思われる。

政治 Politics

経済 Economy

  • 2023年度よりレベニューキャップ制度の第一規制期間(5 年間)が始まる
  • 太陽光発電設備や風力発電設備を中心に再生可能エネルギー発電設備が急増(Decentralization)
  • 業務ビル(高圧)の設置件数が著しく増加

社会 Society

  • 2011年3月,東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故
  • 電気工作物の適切な保安を通じた国民の安心・安全の確保
  • 老朽化したビルの建て替え
  • 都市開発
  • 人口減少(Depopulation)
    • 電気主任技術者の免状取得者の約 4 割が 60 歳以上であり,高齢化が進行中
    • 第三種 電気主任技術者の免状取得者数は,2002 ~ 2011 年の 49,269 名から 2012 ~ 2021 年の 43,793 名となり 1 割(約 5 千人)以上減少。
    • 2030年,第三種 電気管理技術者は約 2 千人不足する見込み
  • 主任技術者の選任形態は,9 割が外部委託。
    • 外部委託の受託者は,電気保安協会が約 5 割,電気保安協会以外の保安法人が約 1 割,管理技術者が約 4 割。
  • 2022 年度から第三種電気主任技術者試験は年 2 回実施*6
  • 電気主任技術者試験等における令和 5 年度(2023 年度)からの CBT 方式*7での受験が可能になる。
  • 2022年12月1日,「令和5年度第三種電気主任技術者試験に係る問題作成方針」公表

技術 Technology

  • 電気主任技術者の五感などマンパワーに依存しているが,熟練技術者の高年齢化,新たな人材確保が困難な状況であり,技術継承がなされない。
  • 経済産業省を中心として電気保安のスマート化*8が掲げられている(Digitalization)
    • センサー,IoT 等の先進技術を利用した状態監視技術,予兆検知技術
    • リスクに応じたタイムリーな点検等が可能(RBM*9

参考文献

更新履歴

*1:PEST 分析とは,政治,経済,社会,技術といった 4 つの観点からマクロ環境(外部要因)を分析するマーケティングフレームワークのこと。これは,戦略的分析または市場調査を行う際の外部分析の一部であり,考慮すべきさまざまなマクロ環境要因の概要を示す。

*2:再生可能エネルギーの普及政策の一つであり,再生可能エネルギーで発電した電気を,長期間固定優遇価格にて電力会社が買い取ることを国が約束する制度。FIT = Feed-in Tariff

*3:2018 年 7 月に閣議決定された第 5 次エネルギー基本計画においては,再エネを初めて「主力電源化」していくものと位置づけていた。

*4:Green Transformation. 太陽光発電などのクリーンエネルギーを利用し経済社会システムや産業構造を変革して温室効果ガスの排出削減と産業競争力向上の両立を目指す概念。

*5:温室効果ガスの排出量と森林などによる温室効果ガスの吸収量を均衡させ排出量を実質ゼロにする。

*6:2022年度(令和4年度)から,第三種電気主任技術者試験は年 2 回実施となり,上期試験,下期試験,両方の申込みが可能となる。

*7:CBT (Computer Based Testing) 方式とは,コンピュータを利用して実施する試験方式のことである。受験者はコンピュータに表示された試験問題に対して,マウスやキーボードを用いて解答する。

*8:電気保安分野において IoT や AI,ドローン等の新たな技術を導入することで,保安力の維持向上と生産性の向上を両立させること。

*9:Risk Based Maintenance. 設備の老朽化や異常,故障のリスクを評価して,評価結果に基づいてメンテナンス・検査計画を策定する考え方を意味する。