目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

電力用避雷器

電力系統に雷サージや開閉サージなどの過電圧が発生すると,大地に放電電流を流してこれを抑制し,その後に流れる商用周波数の電流(これを続流(follow current)と呼ぶ)を速やかに遮断して,電力系統を通常の状態に復帰させる装置を避雷器(surge arrester)という。

後者の機能を自復性と呼び,前者の過電圧の抑制とあわせて二つの機能を兼ね備えることが要求される。

避雷器に非直線の電圧-電流特性をもつ酸化亜鉛素子(ZnO 素子)を組み込むことで,サージ電圧抑制後の通常電圧による続流を遮断して系統を元の状態に復帰させる。

その定格電圧は,所定の動作責務が遂行できる商用周波電圧であり,一線地絡時の健全相対地電圧,又は負荷遮断によって電気設備に印加される短時間の電圧に基づいて選択される。

また,定格の一つである公称放電電流は雷インパルス電流の波高値で示され,10 000 [A] 及び 5 000 [A] の 2 種類が標準的である。

下図に公称電圧 154 kV で使用される高性能特性避雷器の電圧-電流特性を示す。

電流 10 [kA] のときの電圧値 [kV] が雷インパルス制限電圧(波高値)である。

図 公称電圧 154 kV で使用される避雷器の電圧-電流特性

図 公称電圧 154 kV で使用される避雷器の電圧-電流特性

避雷器設置の目的

避雷器設置の目的は,外雷の進入により発変電所に発生する過電圧を主回路設備の雷インパルス耐電圧値以下に抑制することであり,避雷器は発変電所の送電線引込口に設置することにより発変電所全体の過電圧を下げる効果がある。

また,最大過電圧を発生するような地点に避雷器を設置した場合は,その地点の過電圧を抑制するとともに,侵入してきた雷サージと逆極性のサージ反射波を生じ,全体の過電圧を大きく抑制する効果がある。

なお,避雷器が動作したときの避雷器両端子間の過電圧の上限値を保護レベルという。

避雷器の種類

発変電所ではギャップレス避雷器を用いることが主流であるが,配電用や直流電気鉄道の電線路のがいし保護に用いられる避雷器では,万一 ZnO 素子が短絡状態になっても送電が可能なように,直列ギャップ付き避雷器も多く使用されている。

特性要素

特性要素として,従来は炭化けい素(SiC)を焼成したものが用いられてきたが,1970 年代に,わが国で酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする優秀な非直線抵抗体が開発された。

酸化亜鉛(ZnO)の場合には,常規運転電圧が加わったときに流れる電流がきわめて小さい(mA 以下)ので,直列ギャップを省略することが可能となった。

現在では,このような直列ギャップなしの酸化亜鉛形避雷器が世界の避雷器の主流を占めるようになった。

ZnO 焼結素子

近年,優れた非直線抵抗特性を有する ZnO 焼結素子を積層した酸化亜鉛型避雷器が多く用いられている。

避雷器の動作時の制限電圧をできるだけ低くし,常時の系統電圧に持続して耐えるようにすることで,避雷器の高性能化が進められる。

このため酸化亜鉛形避雷器では,ZnO 焼結素子の

  • 小電流領域での課電寿命特性改善
  • 短時間過電圧耐量と開閉サージ放電耐量の向上
  • 大電流領域の制限電圧の低減

が重要となる。

また,近年では ZnO 焼結素子の単位長当たりの動作開始電圧を高めた高抵抗・高耐圧化の素子が開発され,素子の直列数の低減により,避雷器の小型化・簡素化が図られている。

ギャップレス避雷器

酸化亜鉛素子だけで一切のギャップを用いない避雷器。

酸化亜鉛形避雷器は,優れた非直線抵抗特性を持っているため,直列ギャップを必要としないので,放電遅れがなく,構造的に簡単,かつ小形である。

ギャップ付避雷器

酸化亜鉛素子に直列又は並列に何らかのギャップを用いる避雷器

図 直列ギャップ付避雷器の構成

図 直列ギャップ付避雷器の構成

がいし形避雷器

絶縁容器(磁器,ポリマーがい管など)内部を絶縁媒体(気体,液体又は固体)で満たし,この中にこの素子又はこの素子と直列ギャップとを収納した構造のものをその構造からがいし形避雷器と呼ぶ。

避雷器の定格

避雷器の定格は,その避雷器の性能を保証する限界値であり,定格電圧,連続使用電圧,公称放電電圧,制限電圧などの項目があり,規定で定められている。

避雷器の保護性能及び復帰性能を表現するために用いる放電電流の規定値を公称放電電流という。

また,放電中,この避雷器の両端子間に発生する電圧を制限電圧という。

この避雷器が障害を起こすことなく,所定の回数流すことができる所定波形の放電電流波高値の最大限度を放電耐量という。

定格電圧(rated voltage)

避雷器の定格電圧は,その電圧が加わった状態で定められた動作責務を行うことができる上限の保証値であるが,1 線地絡時の健全相対地電圧のように,商用周波数の短時間過電圧を対象にしている。

たとえば公称電圧 500 kV の系統に用いられる避雷器の定格電圧は 420 kV であり,常規運転電圧の最高電圧 550 kV/$\sqrt{3}$ の 1.32 倍である。

避雷器以外の機器の定格電圧は,常規運転電圧を対象に線間電圧で表すことが多い。

避雷器の場合は,直列ギャップの続流遮断能力に重きを置いて定格電圧を定め,これが直列ギャップのない酸化亜鉛形避雷器にも引き継がれているのである。

低減絶縁

有効接地系統では,一線地絡事故時の健全相の電位上昇が非有効接地系統に比べて低く,これに合わせて変圧器等の絶縁レベルを下げることを特に低減絶縁と呼ぶ。

この場合,避雷器の定格電圧も低くできる。

公称放電電流

定格の一つである公称放電電流は雷インパルス電流の波高値で示され,10 000 [A] 及び 5 000 [A] の 2 種類が標準的である。

避雷器規格では,避雷器の保護性能を評価するために,8/20 μs の雷インパルス電流が公称放電電流として定められている。

制限電圧(residual voltage)

避雷器に放電電流が流れたとき,避雷器の端子に現れる電圧の最大値を制限電圧と呼ぶ。

一般に避雷器の端子に現れる電圧の最大値を避雷器の保護レベル(protective level)という。

避雷器に直列ギャップがない場合は,制限電圧が保護レベルになるが,直列ギャップがある場合は,直列ギャップの放電開始電圧と制限電圧の大きいほうが保護レベルになる。

避雷器と被保護機器の配置

変圧器などの被保護機器は,サージに対して静電容量として作用するため,直列共振により高い電圧が発生するおそれがある。

避雷器により異常電圧を抑制するためには,避雷器と被保護機器の配置について十分注意する必要がある。

サージ保護デバイス

避雷器,及び日本工業規格(JIS C 5381-1)によって規定された低圧配電システムの保護機器であるサージ保護デバイスには非直線抵抗特性をもつ ZnO 素子が主として使用されている。

その電圧 - 電流特性は大まかに小電流領域,中電流領域及び大電流領域の三つの電流領域に区分される。

小電流領域である連続使用電圧(動作開始電圧の 90 [%] 以下)における抵抗分電流は,数百マイクロアンペア程度である。

避雷器の試験

酸化亜鉛形避雷器の試験

酸化亜鉛形避雷器の試験には,一般的な構造検査や絶縁抵抗測定試験の他,代表的な次のような試験が挙げられる。

漏れ電流試験

漏れ電流試験は,定格電圧の 90 [%] 及び連続使用電圧に相当する商用周波電圧を印加して測定する。この場合,全漏れ電流の他,抵抗分漏れ電流も測定する。

動作開始電圧試験

動作開始電圧試験は,酸化亜鉛形避雷器の電圧-電流特性の小電流域における所定の電流値(抵抗分漏れ電流 1 ~ 3 [mA])に対する避雷器端子間電圧を測定する。

動作開始電圧は,連続使用電圧や短時間過電圧に耐える能力の指標になる。

制限電圧試験

制限電圧試験は,急しゅん波雷インパルス,雷インパルス及び開閉インパルスの 3 種類の電流波形について,所定の電流値における制限電圧の値を求める。

保護特性試験

保護特性試験は,急しゅん雷インパルス( 1/2.5 [μs]),雷インパルス( 8/20 [μs])及び開閉インパルス( 60/150 [μs])の三種類の電流波形について,所定の電流値における制限電圧を測定する。

放圧試験

放圧試験は,避雷器の内部地絡をヒューズ発弧で模擬し,所定の放電電流を通電した場合,放圧装置が確実に動作し,爆発飛散しないことを確認する試験である。

安定性評価試験

酸化亜鉛形避雷器が「実系統で課せられる責務を果たした後,引き続き使用できること」を確認するために行う試験を安定性評価試験という。

30 年間の使用期間中の連続運転電圧の課電,雷サージ(公称放電電流) 15 回,開閉サージ(遮断器の正常動作で発生するレベル) 50 回,短時間過電圧 50 回の 4 種類の電気的ストレスを等価模擬した試験を行う。

酸化亜鉛形避雷器の試験は JEC-217 に規定されており,下表のようになる。

酸化亜鉛形避雷器の試験
番号 大分類 試験項目
(1) 構造検査 a. 構造検査
(2) 絶縁抵抗試験 a. 絶縁抵抗試験
(3) 漏れ電流試験 a. 漏れ電流試験
(4) 保護特性試験 a. 急しゅん波雷インパルス制限電圧試験
b. 雷インパルス制限電圧試験
c. 開閉インパルス制限電圧試験
(5) 動作責務試験 a. 雷サージ動作責務試験
b. 開閉サージ動作責務試験
(6) 耐久性試験 a. 動作開始電圧試験
b. 安定性評価試験
(7) 汚損試験 a. 汚損試験
b. 活線洗浄試験
(8) 放圧試験 a. 放圧試験
(9) 耐電圧試験 a. 商用周波耐電圧試験
b. 雷インパルス耐電圧試験
c. 開閉インパルス耐電圧試験(定格電圧420[kV]のみ)
(10) 耐劣化性試験 a. 気密試験
b. 浸水試験

参考文献

electrical-engineer.hatenablog.jp

更新履歴

  • 2022年1月2日 新規作成
  • 2022年2月11日 参考文献に「平成21年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問3」を追加
  • 2022年2月26日 加除修正
  • 2022年4月23日 参考文献に「平成18年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問4」を追加
  • 2022年5月8日 参考文献に「令和2年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5」を追加
  • 2022年5月21日 参考文献に「平成24年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3」を追加
  • 2022年7月3日 加除修正
  • 2022年7月16日 参考文献に「平成19年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問3」を追加
  • 2022年8月15日 参考文献のタイトルを追加
  • 2022年8月20日 参考文献に「避雷器等の施設」を追加