電力系統の電気方式は,送配電線に流れる電流の種類によって直流方式と交流方式に大別できる。
電気事業の初期ならびに海底ケーブルを含む長距離大容量送電など特定な場合を除き,現在は交流方式がもっぱら採用されている。
これは交流送電の次に述べる利点による。
- 大電力を効率よく送電できる高電圧送電が,静止器である変圧器により容易に,かつ,効率的に実現できる。
- 半周期ごとに電流が零となるため,遮断器による系統構成の変更や系統事故除去が容易にできる。
- 多端子のネットワークを構成でき,効率的,経済的な電力輸送が可能となる。
- 直流発電機と異なり整流子を必要としない同期発電機が主な電源として利用される。
- 構造が簡単で堅ろうで安価なかご形などの誘導機を動力負荷として利用可能である。
反面,系統内の発電機をほぼ一定の回転速度で運転し,発電機間の電圧位相差をある範囲に抑える同期運転が必要となることから,送電線の安定度による送電限界や事故時の発電機脱調等,直流送電にない問題がある。
また,線路リアクタンスによって送電容量に限界を受ける。
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この送電容量限界以内でも,受電端の負荷に応じて無効電力を補償して電圧を維持する調相設備(電力用コンデンサなど)が必要となる。
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系統を安定運用する主要要件
発電機や送電線のほか,変圧器,配電線,負荷など多くの機器で構成される電力系統には様々な制約事項が存在する。
電力系統を安定運用する主要要件には,以下の 4 つの制約がある。
- 熱容量
電力系統を構成する機器の熱的耐力 - 周波数
周波数の安定維持 - 同期安定性
同期運転の安定性維持 - 電圧
電圧の安定性維持
交流系統における送電能力の向上
交流系統における送電能力は,送電端と受電端の電圧値と電圧位相差,送電線のインピーダンスによって決まる。
送電能力を大きくすれば,同一の電力を送電するときの電圧位相差が小さくなり,系統に大じょう乱が発生したときの過渡安定性も改善できる。
送電能力を大きくするには,送電端と受電端の電圧差を大きく,あるいは,送電線のインピーダンスを等価的に小さくする必要がある。
超高圧架空送電系統では送電線のインピーダンスはリアクタンスが支配的であるので,直列コンデンサの設置が効果的である。
直列コンデンサに並列に接続されたリアクトルの電流をサイリスタの点弧角制御により変化させ,送電線のリアクタンスを連続的に補償することができる TCSC(Thyristor controlled series capacitor)は,電源と系統の相互作用による低周波共振を抑制することが可能である。
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更新履歴
- 2022年1月1日 新規作成
- 2022年1月2日 送電線の送電容量,変電所に設置される調相設備のリンクを追加
- 2022年5月8日 参考文献に「令和元年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6」を追加