電力系統の電気方式は,送配電線に流れる電流の種類によって直流方式と交流方式に大別できる。
電気事業の初期ならびに海底ケーブルを含む長距離大容量送電など特定な場合を除き,現在は交流方式がもっぱら採用されている。
- 1. 交流方式の利点
- 2. 交流方式の課題と補償設備の必要性
- 3. 系統を安定運用に求められる4要件
- 4. 送電能力の向上と TCSC の活用
- 5. 架空送電線のリアクタンス
- 6. 参考文献
- 7. 更新履歴
1. 交流方式の利点
交流方式がもっぱら採用されているのは,交流送電の次に述べる利点による。
- 大電力を効率よく送電できる高電圧送電が,静止器である変圧器により容易に,かつ,効率的に実現できる。
- 半周期ごとに電流が零となるため,遮断器による系統構成の変更や系統事故除去が容易にできる。
- 多端子のネットワークを構成でき,効率的,経済的な電力輸送が可能となる。
- 直流発電機と異なり整流子を必要としない同期発電機が主な電源として利用される。
- 構造が簡単で堅ろうで安価なかご形などの誘導機を動力負荷として利用可能である。
2. 交流方式の課題と補償設備の必要性
反面,系統内の発電機をほぼ一定の回転速度で運転し,発電機間の電圧位相差をある範囲に抑える同期運転が必要となることから,送電線の安定度による送電限界や事故時の発電機脱調等,直流送電にない問題がある。
また,線路リアクタンスによって送電容量に限界を受ける。
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(1) 無効電力補償の必要性
この送電容量限界以内でも,受電端の負荷に応じて無効電力を補償して電圧を維持する調相設備(電力用コンデンサなど)が必要となる。
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3. 系統を安定運用に求められる4要件
発電機や送電線のほか,変圧器,配電線,負荷など多くの機器で構成される電力系統には様々な制約事項が存在する。
電力系統を安定運用する主要要件には,以下の 4 つの制約がある。
| 要件 | 説明 |
|---|---|
| 熱容量 | 機器の熱的耐力 |
| 周波数 | 周波数の安定維持 |
| 同期安定性 | 同期運転の安定性 |
| 電圧 | 電圧の安定維持 |
(1) 電力系統の同期安定性向上
交流送電系統の送電電力は,送電端電圧と受電端電圧の積及び相差角の正弦に比例し,その間の系統リアクタンスに反比例する。
送電電力が増加し,相差角が拡大すると,同期安定性の限界に近づくので,平常でより安定な状態に保つためには,次のような同期安定性対策を講じる。
a. 設備側の対策
- 系統リアクタンスの低減(送電線の多ルート化,直列コンデンサの設置など)
- 長距離送電線の中間点電圧の維持(SVC の設置など)
- 送電電圧の格上げ など
b. 系統運用面の対策
- 系統電圧の高め運用
- 台風などの事故の発生が懸念される気象条件になった場合の系統切替 など
一方で系統リアクタンスの低減は同期安定性向上には寄与するが,短絡・地絡電流を増大させてしまうため,下位系統を放射状系統とし,短絡・地絡電流を抑制するなどの対策を講じる。
4. 送電能力の向上と TCSC の活用
交流系統における送電能力は,送電端と受電端の電圧値と電圧位相差,送電線のインピーダンスによって決まる。
送電能力を大きくすれば,同一の電力を送電するときの電圧位相差が小さくなり,系統に大じょう乱が発生したときの過渡安定性も改善できる。
送電能力を大きくするには,送電端と受電端の電圧差を大きく,あるいは,送電線のインピーダンスを等価的に小さくする必要がある。
超高圧架空送電系統では送電線のインピーダンスはリアクタンスが支配的であるので,直列コンデンサの設置が効果的である。
直列コンデンサに並列に接続されたリアクトルの電流をサイリスタの点弧角制御により変化させ,送電線のリアクタンスを連続的に補償することができる TCSC(Thyristor controlled series capacitor)は,電源と系統の相互作用による低周波共振を抑制することが可能である。
5. 架空送電線のリアクタンス
周波数 60 Hz,導体間隔 0.4 m としたとき,架空送電線のリアクタンスの計算例を示す(横軸を等価線間距離,縦軸をリアクタンスとした)。

図より,次のことがわかる。
- 電線が太くなると,リアクタンスはやや減少するが,その割合は少ない。例えば,線間距離が等しい場合,ACSR 330 mm2 単導体と ACSR 610 mm2 単導体のリアクタンスの差は 5 % 程度であり,径による影響は限定的。
- 線間距離が大きくなると,リアクタンスは増加するがその割合は少ない。例えば,線間距離が 20 % 程度変わっても,リアクタンスの変化は 5 % 程度以下である。
- 複導体送電線は単導体に比べて等価半径が大きくなるので,リアクタンスは減少する。単導体,2 導体,4 導体送電線のリアクタンスの比は,およそ 1 : 0.7 : 0.6 程度である。
- 線間距離は同一電圧階級では,それほど大きな差はないことから,リアクタンスは電圧階級と導体数によって定まるとみなすこともできる。
6. 参考文献
- 新田目倖造,「電力系統技術計算の基礎」,電気書院,1981年6月1日
- 令和7年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3「電力系統の同期安定性向上」
- 令和元年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6
- 平成20年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6
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7. 更新履歴
- 2022年1月1日 新規作成
- 2022年1月2日 送電線の送電容量,変電所に設置される調相設備のリンクを追加
- 2022年5月8日 参考文献に「令和元年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6」を追加
- 2025年7月27日 架空送電線路のリアクタンスを追加
- 2025年10月27日 参考文献に「令和7年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3」を追加
- 2026年4月19日 加除修正,見出しにナンバリング
