目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

配電系統構成

一般に配電線路の形態としては,新規需要の発生に応じて幹線と分岐線を延長していくため,現在,樹枝状方式が架空配電系統で最も多い方式である。

この方式では,施設費は安価であるがそのままでは信頼度が低いため,通常,幹線は自動区分開閉器によって適当な区間に分割されており,配電線事故が発生した場合には,事故点を含む区間のみが選択的に遮断され,停電区間が限定される。

健全区間は連系開閉器を手動操作にて投入し,隣接配電線から供給を受けることが可能となる。

現状,樹枝状方式では,この様な多分割多連系で運用されることが多い。

また,最近では,供給信頼度の向上や,系統切換作業の業務効率化のため,これら開閉器類を自動遠隔制御し,負荷融通を行う配電自動化システム(distribution automation sysytem)も導入されている。

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樹枝状高圧配電線のループ切換

樹枝状高圧配電線でループ切換をするのは,無停電で系統を切り換えるためである。

連系用開閉器を投入してループにした場合,連系点両側の配電線の電圧や位相に差があると,過大な横流により,変電所の過電流継電器が動作して配電線用遮断器がトリップする場合がある。

このため,ループ切換を行う場合は,必要により軽負荷の時間帯に行うなどの配慮が必要である。

事故時の配電線の許容電流

配電線は,隣接配電線事故発生時に事故配電線の健全区間の負荷の一部,又は全部を分担するため,切替余力を確保することが重要である。

隣接配電線事故発生時,健全な配電線路(融通元)から電力を融通する場合において,融通元の配電線では融通先の分の電流も流れることから,許容電流以上の電流が流れる場合がある。融通が必要となる時間は,事故復旧までであることから,設備の有効活用の観点より,許容電流に短時間許容電流を用いることが妥当である。

短時間許容電流は,継続時間が長くなく,頻度があまり高くなければ流すことができる電流で,継続時間は数分~数時間程度である。

22 kV(33 kV)配電と 400 V 直接供給

20 [kV] 又は 30 [kV] 配電線路から降圧変圧器を介して三相 4 線式 230/400 [V] の電圧で需要者に電気を供給する場合の利点を,6 [kV] 配電線路から降圧して単相 3 線式 100/200 [V] の電圧で供給する場合と比較して,次の項目別に説明する。

電気の供給者側から見た利点

設備・用地の縮小化ができる。また電圧降下・電力損失が小さくなり,設備量が減少するので事故も少なくなり,供給信頼度が向上する。

電気の需要者側から見た利点

  • 導体の所要量を少なくできる。
  • 電力損失・電圧降下を小さくできる。
  • 電灯と電力用の設備を共有できる。
  • 高圧設備を省略できる場合がある。

総合的観点から見た利点

電気の供給者,需要者ともに電力損失の軽減が図れるため,国全体としての省エネルギー化を推進できる。

また設備の縮小,電力損失の軽減により,電気料金の低減が図れる。

参考文献

  • 平成20年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問4「配電系統構成」
  • 平成13年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問6「22 kV(33 kV)配電と 400 V 直接供給」
  • 平成9年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問4「樹枝状高圧配電線のループ切換」

更新履歴

  • 2022年6月8日 新規作成
  • 2022年6月11日 参考文献に「平成9年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問4」を追加
  • 2022年10月23日 参考文献に「平成13年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問6」を追加