目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

汽力発電所(コンバインドサイクル発電を除く)の蒸気タービン制御

運転中の蒸気タービンの回転速度を一定に保つには,調速装置によって蒸気加減弁を駆動・制御し,タービンに流入する蒸気流量の調節を行う。

なお,再熱タービンにおいては,系統の負荷が急激に遮断されたとき,蒸気加減弁を閉じても再熱蒸気がタービンに流入するためインタセプト弁によってこれを阻止し,過速を防止する。

蒸気加減弁インタセプト弁などを作動させる駆動力には一般に油圧が用いられる。

発電機の系統並列運転時には,タービンの回転速度は系統周波数に左右されるため,調速装置は系統周波数変化に対するタービン出力応答機能として働く。

系統事故時などにおいて,蒸気タービンが定格負荷運転から無負荷になり安定した時点では,蒸気タービンの回転速度は上昇するが,この回転速度変化量の定格回転速度に対する割合を速度調定率という。

速度調定率が大きすぎると周波数変化への対応が鈍感になり,逆に小さすぎると敏感になる。

速度調定率は,通常 2 ~ 5 [%] 程度に設定される。

火力発電所の蒸気

ボイラ・タービンの蒸気温度が過度に上昇すると,金属材料の許容応力が低下するとともに,各部の熱膨張により損傷に至る。

一方,蒸気温度が低下するとプラントの熱効率が下がるばかりでなく,タービン最終段の湿り度が上昇して動翼の浸食の原因となる。

したがって,蒸気温度を一定に制御することは,設備保全熱効率の面から重要である。

制御方式には,注水,バーナ角度の変更,燃焼ガスの循環などがある。

タービンの調速装置

蒸気タービンでは,出力または蒸気条件の変化および抽気量・排気量の変化によって回転速度が変化する。

この回転速度の変化に応じて加減弁を加減して,回転速度を一定に保つため次の調速装置を用いている。

主調速装置の種類

主調速装置の種類としては,機械式,油圧式および電気式がある。

我が国では機械式の遠心重錘式と油圧式の遠心ポンプ油圧式が幅広く使用されている。

遠心重錘式(機械式)

タービン軸の歯車装置を経て,調速機のスピーダの軸に伝わり,鋼体が軸の周りを回転する。

タービンの速度が速くなれば遠心力によって鋼体は外に飛び出して滑り,筒が上がる。

一方,速度が遅くなれば筒は下がる。

この筒の動きをスピーダロッドを介して加減弁に伝え,流入蒸気量を調整する方式である。

遠心ポンプ油圧式

タービンに直結した油ポンプを送出し油圧が回転数の 2 乗に比例して増減するので,この油圧変化を油圧伝達機構を介して加減弁に伝え,流入蒸気量を調整する方式である。

電気式

遠心力とは無関係に小形速度発電機の電圧または回転数に比例したパルスを検出する電気式があり,最近の大容量超臨界圧タービンに使用されている。

非常調速装置

全負荷運転中の蒸気タービンが突然無負荷になったとき,速度上昇の整定値は,調速装置の特性である速度調定率によって決まるが,万一,調速装置が不具合の場合,回転速度の急上昇は大事故になるおそれがあるので,これを防止するため定格速度の 111 [%] 以下で作動し,タービンを停止させる非常調速装置が設けられている。

このようなタービン運転状態の異常による事故及び危険の未然防止のために取り付けられている装置を総称してタービン保安装置といい,非常調速装置のほかに,タービンの軸受油の圧力が規定値以下に下がったときにタービンを停止させる装置などがある。

参考文献

蒸気タービン

蒸気タービン

  • 日本工業出版
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更新履歴

  • 2022年6月7日 新規作成