目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

ダム水路式水力発電所における水撃作用

フランシス水車を設置するダム水路式水力発電所における水撃作用 (Water Hammer) について,説明する。

水撃作用とは

発電機の負荷を急激に遮断又は急速に増やした場合は,それに応動して水車の使用水量が急激に変化し,流速が減少又は増加するため,水圧管内の圧力の急上昇又は急降下が起こる。このような圧力の変動を水撃作用という。

水撃作用は,水圧管の長さが長いほど,水車案内羽根あるいは入口弁の閉鎖時間が短いほど,いずれも大きくなる。

水撃作用が発生する主な原因

発電機や発電所構内事故あるいは送電線事故などにより,保護装置が発電機の負荷を自動遮断した場合,水車・発電機が危険な速度まで速度上昇しないよう,(調速機及び保護装置により)ガイドベーンを急速閉止する。

この場合,流水を急激に停止させたことにより,運動エネルギー(水流による慣性)が圧力エネルギー(高圧力)となって,水撃が発生する。

設計段階で水撃作用を考慮しなかった場合の被害

水撃作用の圧力変動により,水車のケーシング,水圧管路あるいは圧力トンネルを損傷するおそれがある。

設備による対策事例

サージタンクを圧力トンネルの末端付近に設置し,水撃作用による圧力変動を吸収させる。

制圧機をケーシングあるいは水圧管路の末端に設置し,水圧が危険圧力まで上昇しないよう,調速機(ガバナー)によるガイドベーンの急速閉止に連動して,この制圧機の弁体を開放し,ケーシング及び水圧管路内の水圧を逃がす。

サージタンク

水撃作用の発生による影響を緩和する目的で設置される水圧調整用水槽をサージタンクという。

サージタンクにはその構造・動作によって,差動式,小孔式,水室式などがあり,いずれも開放構造である。

圧力水路と水圧管との接続箇所に,サージタンクを設けることにより,水槽内部の推移の昇降によって,水撃作用を軽減することができる。

差動式サージタンク

差動式サージタンクは,負荷遮断時の圧力増加エネルギーをライザ(上昇管)内の水面上昇によってすばやく吸収し,そのあとで小穴を通してタンク内の水位をゆっくり通常のタンク内水位に戻す作用がある。

水撃作用の数式的理解

水撃作用における圧力変動は、以下のような式で近似されることがある:

$$ \Delta P = \rho \cdot a \cdot \Delta V $$

ここで:

  • \(\Delta P\):圧力変動
  • \(\rho\):水の密度
  • \(a\):圧力波の伝播速度
  • \(\Delta V\):流速の変化量

この式からも、流速の急激な変化が圧力変動を引き起こすことが理解できる。

参考文献

更新履歴

  • 2022年10月25日 新規作成
  • 2023年11月25日 参考文献に令和5年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1 を追加
  • 2025年8月16日 水撃作用の数式的理解を追加