目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

中小水力発電所の開発

水力エネルギーの未利用地点は落差や流量の小さい場合が多く,このような地点の発電所に選定される効率のよい水車は限られ,チューブラ水車やバルブ水車などの反動水車が多く採用されている。

また,S 形チューブラ水車は,水路外部に発電機を設置できるため,バルブ水車に比べ,発電機構造や機器配置などの設計自由度が高いという特長がある。

クロスフリー水車は,円筒かご形のランナが特徴的で,反動水車衝動水車の両方の特性を併せもち,出力 1 000 [kW] 程度以下で,落差が 5 [m] ~ 100 [m] 程度の地点に適用され,流量変化に対して大小に分割したガイドベーンを切り替えることで効率の良い運転ができるものもある。

さらに小規模な数百 [kW] 以下の発電所では,施工が容易な,汎用ポンプを逆転させたポンプ逆転水車や,水車と発電機を一体として水中に設置する水中タービン発電機なども採用されることがある。

このような小規模な発電所では,構造も簡単で保守も容易な誘導発電機を採用することが多い。

また,これらの発電機を高圧連系する場合には,上位系統故障時の感電事故防止や他の電気設備の安全確保等の観点から,周波数上昇リレー,周波数低下リレー及び転送遮断装置又は単独運転検出機能を有する装置により単独運転の防止を図っている。

表 中小水力用水車の種類・特徴
種類 適用範囲 特徴
ペルトン水車 落差 150 ~ 1 000 [m]
出力 100 [kW] ~ 100 [MW]
軽負荷まで高効率運転できる。緩閉鎖が可能で,鉄管設計水圧を低減できる。
フランシス水車 落差 10 ~ 800 [m]
出力 1 ~ 700 [MW]
構造が簡単で最も普及しており,中小容量にも適用できる。
S 形チューブラ水車 落差 3 ~ 20 [m]
出力 50 [kW] ~ 5 [MW]
低落差小容量,可動ランナベーンとし小容量まで運転可能。軽負荷特性改善
バルブ形チューブラ水車 落差 5 ~ 20 [m]
出力 150 [kW] ~ 4 [MW]
高効率特性,水車・発電機がパッケージ化されており現地据付けが容易
クロスフロー水車 落差 7 ~ 100 [m]
出力 50 [kW] ~ 1 [MW]
最高効率は劣るが,複数のガイドベーンを個別制御し軽負荷まで効率がよい
ターゴイパルス水車 落差 25 ~ 300 [m]
出力 100 [kW] ~ 10 [MW]
ジェットの角度を変えることで軽負荷でも性能を維持できる
一体形水車 落差 2 ~ 25 [m]
出力 100 [kW] ~ 20 [MW]
超低落差に適用可能。発電所をコンパクト化できる。実用化開発中

中小水力発電設備の経済性

近年,中小水力発電設備において,土木設備を含めた設備全体の経済性が追及されており,その一環として土木設備では,負荷遮断時の水圧上昇を小さく抑えることによって,水圧鉄管の肉厚を薄くして経済化を図っている。

このため,機械設備では,水車のガイドベーン閉鎖時間を 10 ~ 20 秒程度に長くしなければならないが,発電機のはずみ車効果($GD^2$)は発電機固有のままとし,負荷遮断時の回転速度を無拘束速度又はそれに近い速度まで許容する設計がなされている。

これにより水車・発電機の発生応力は上がるが,ガイドベーンのサーボモータ容量を低減できること,あるいは発電機を小形化できることなどの経済的効果が生じる。

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参考文献

更新履歴

  • 2022年6月4日 新規作成