過電流リレー方式は最も基本的な方式で,日本では 1900 年代から 1940 年代までの唯一の保護方式であった。
簡単・安価ではあるが,電力系統の大規模化,複雑化によって適用上の難点が多くなり,現在では比較的低圧の放射状送電線や電気所の所内回路の保護に限られ,一般には後備保護として使用されている。
1960 年代には静止化され,その後ディジタル形も開発されている。
1. 過電流リレーの概要
系統事故が発生すると,通常の負荷電流より大きい事故電流が流れる。
したがって,電流の大きさに応じて動作する過電流リレー (OC : Over Current) による事故検出が可能になる。
2. アナログ電気機械形の過電流リレー
アナログ電気機械形リレー(以下,電気機械形リレー)は可動鉄心形リレーと誘導形リレーに大別できる。
2-1. 可動鉄心形リレー
可動鉄心形リレーは,可動鉄心に作用する電磁吸引力,または,電気反発力により可動部が動かされ,それに伴い接点を開閉する構造となっている。
可動鉄心形リレーは直流にも交流にも応動することができ,直流制御回路に組み込まれる補助リレーの多くに採用されている。
一方,交流リレーとして使用した場合には,事故電流に含まれる過渡直流分の影響を受けやすいという短所もある。
2-2. 誘導形リレー
誘導形リレーは交流専用のリレーである。過電流リレーのような単一量リレーの他,方向リレー,距離リレーなど種々の交流リレーとして,広く使用されている。
誘導形リレーは,必ず二つ以上の同一周波数の交流磁束が作用しあわなければトルクを生じない。
したがって,事故電流に含まれる直流分電流の影響は本質的に受けにくいものになっている。
駆動力が作用して,回転体が動いても,磁気回路の状態が変わるわけではないので,動作値と復帰値が大幅に異なることはない。
2-3. アナログ電気機械形リレーを用いた送電線保護リレー
片端電源の送電線を過電流リレーで保護する場合を示す。
事故点を選択遮断させるため,過電流リレーは動作時限を指定しておかなければならない。
下図では 0.2 s の時限さをもたせた例である。

3. 過電流継電器の限時特性
過電流継電器は、電流の大きさに応じて動作時間が変化する特性を持つ。
主な限時特性には以下の 4 種類がある。
- 定限時特性: 電流の大きさに関係なく、一定の時間で動作する。
- 反限時特性: 電流が大きくなるほど動作時間が短くなる。
- 反限時定限時特性: 一定の電流までは反限時的に動作し、それ以上では定限時的に動作する。
- 瞬時特性: 一定のしきい値を超えると即座に動作する。
過電流継電器の動作電流倍率を横軸,動作時間を縦軸にし,各種限時特性を示す。

(ア)反限時特性
電流が増加するにつれて動作時間が急激に短くなる。グラフは滑らかに下降し、定限時領域を持たない。
(イ)反限時定限時特性
低電流域では反限時的に動作し、高電流域では動作時間が一定となる。曲線の途中で水平になるのが特徴である。
(ウ)定限時特性
電流の大小に関係なく、一定の時間で動作する。グラフ上では水平な直線として表される。
(エ)瞬時特性
ある電流値を超えると即座に動作する。グラフ上では電流しきい値の位置に垂直線が現れる。
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4. 演習問題
4-1. 過電流継電器の動作時間
図 1 のように,定格電圧 66 kV の電源から三相変圧器を介して二次側に遮断器が接続された三相平衡系統がある。三相変圧器は定格容量 7.5 MV·A,変圧比 66 kV/6.6 kV,百分率インピーダンスが自己容量基準で 9.5 % である。また,三相変圧器一次側から電源側をみた百分率インピーダンスは基準容量 10 MV·A で 1.9 % である。過電流継電器 (OCR) は変流比 1 000 A / 5 A の計器用変流器 (CT) の二次側に接続されており,整定タップ電流値 5 A,タイムレバー位置 1 に整定されている。図 1 の F 点で三相短絡事故が発生したとき,過電流継電器の動作時間 [s] を求めよ。

ただし,三相変圧器二次側から F 点までのインピーダンス及び負荷は無視する。
また,過電流継電器の動作時間は図 2 の限時特性に従い,計器用変流器の磁気飽和は考慮しないものとする。

解答と解説
F 点の百分率インピーダンス(10 MVA)を求める。
1.9 % + 9.5 % * 10/7.5 = 14.567 %
F 点での三相短絡電流を求める。
10 MVA / √3 / 6.6 kV / 14.567 % * 100 = 6.00 [kA]
基準容量 10 MVA,基準電圧 6.6 kV,百分率インピーダンスを電力系統技術計算支援アプリ「短絡電流計算」に入力すると,短絡電流を自動で計算できます。
CT は 1000 A / 5 A であり,OCR に流入する電流は次式で求められる。
6 000 A * 5 A / 1 000 A = 30 A
これは,整定タップ電流値 5 A の 6 倍に相当する。
タイムレバー位置 10の過電流継電器の限時特性の整定タップ電流の倍率 6 のときの動作時間は約 3.8 [s] である。
タイムレバー位置 1 のときは,この 1/10 となるので,求める過電流継電器の動作時間は 0.38 [s] である。
参考文献
- 電力系統技術計算支援アプリ「短絡電流計算」
- 令和4年度 上期 第三種電気主任技術者試験 電力 問7
更新履歴
- 2025年8月17日 新規作成
- 2025年12月14日 参考文献に電力系統技術計算支援アプリ「短絡電流計算」を追加
- 2026年1月10日 「アナログ電気機械形の過電流リレー」を追加
- 2026年2月19日 自動生成アイキャッチに変更