目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

発変電所等の母線保護

母線保護継電器の設置されていない発変電所母線に事故が発生した場合,事故検出は,送電線相手端子での遠端後備保護及び発電機又は変圧器の自端後備保護によって行われるため,事故除去が遅れる。

このため,故障電流の増大に伴う機器の損傷,広範囲停電,電力系統全体への事故波及防止の観点から,母線保護継電器の必要性が高まっている。

従来のアナログ形の母線保護継電器では,高インピーダンス差動継電器とこれ専用の CT(変流器)が必要となり,設備規模が大きくなっていた。

最近では,ディジタル技術を駆使して内外部事故判別性能の確実化を図った CT 飽和対策付母線保護継電器が標準的に採用され,適用 CT に対する制約事項が大幅に軽減されている。

母線保護リレー方式(bus protection)

母線は多くの送電線や変圧器等が集中し,電力系統の要ともいえるもので,事故が発生した場合には,これを高速度にかつ最小の範囲で切り離すことが必要。

この母線保護に用いられる継電方式には,高インピーダンス電流差動方式,位相比較付き電流差動方式,低インピーダンス電流差動方式等がある。

これらの方式には,それぞれ一長一短があり,母線方式,系統の接地方式等により最適な方式を組み合わせて採用する。

インピーダンス電流差動方式

インピーダンス電流差動方式は,各端子の CT 二次回路を一括した差動回路に内部インピーダンスの大きな継電器を接続し,各回線のベクトル和電流によって誘起される電圧の大小で,母線の内部事故,外部事故を判定するものである。

位相比較付き差動電流方式

位相比較付き差動電流方式は,母線内部事故時には各端子より流入するすべての電流が,ある特定位相に集中するのに対し,外部事故時には少なくとも一端子は逆位相になる。

これを利用して事故の内外部を判定するものである。

インピーダンス電流差動方式

インピーダンス電流差動方式は,各端子の CT 二次回路を一括した差動回路に内部インピーダンスの小さな継電器を接続し,内部事故時に事故電流に比例した電流が動作コイルに流れ,外部事故時には流入電流と流出電流がほぼ等しく,CT 相互間を電流が環流するので,動作コイルにはほとんど流れないことを利用して,事故の内外部を判定するものである。

ブスタイ分離リレーの設置目的

自端後備保護の一種であるブスタイ分離リレーについて,その設置目的を説明する。

主保護リレーや遮断器の不良,又は,予想以上の過酷な事故が発生した場合,ブスタイを分離して事故側母線と健全側母線を分離する。

これにより,分流を減らし遠端後備保護を確実に動作させ,停電範囲を半減させる。さらに系統に対する事故の影響も軽減できるので,系統の安定性向上に役立つ。

参考文献

  • 電気事業講座 電気事業辞典
  • 平成29年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問3「超高圧系統における後備保護」
  • 平成11年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3「発変電所等の母線保護」

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更新履歴

  • 2022年6月24日 新規作成
  • 2022年11月4日 参考文献に「平成29年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問3」を追加