目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

特別高圧の変圧器及び調相設備の保護装置

発変電設備等の損傷による供給支障の防止

次の文章は,「電気設備技術基準」における,発変電設備等の損傷による供給支障の防止に関する記述である。

発電機燃料電池又は常用電源として用いる蓄電池には,当該電気機械器具を著しく損傷するおそれがあり,又は一般送配電事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれある異常が当該電気機械器具に生じた場合に自動的にこれを電路から遮断する装置を施設しなければならない。

特別高圧の変圧器又は調相設備には,当該電気機械器具を著しく損傷するおそれがあり,又は一般送配電事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれがある異常が当該電気機械器具に生じた場合に自動的にこれを電路から遮断する装置の施設その他の適切な措置を講じなければならない。

特別高圧の変圧器及び調相設備の保護装置

特別高圧の変圧器

特別高圧の変圧器には,その内部に故障を生じた場合の保護装置として,46-1表の左欄に掲げるバンク容量等の区分及び動作条件に応じ,同表右欄に掲げる装置を施設すること。

ただし,変圧器の故障を生じた場合に,当該変圧器の電源となっている発電機を自動的に停止するように施設した場合においては,当該発電機の電路から遮断する装置を設けることを要しない。

43-1表
バンク容量等 動作条件 装置の種類
5 000 kVA 以上 10 000 kVA 未満 変圧器内部故障 自動遮断装置又は警報装置
10 000 kVA 以上 同上 自動遮断装置
他冷式変圧器(変圧器の巻線及び鉄心を直接冷却するため封入した冷媒を強制循環させる冷却方式をいう。) 冷却装置が故障した場合又は,変圧器の温度が著しく上昇した場合 警報装置

特別高圧の調相設備

特別高圧の調相設備には,43-2 表に規定する保護装置を施設すること。

43-2 表
調相設備の種類 バンク容量 自動的に電路から遮断する装置
電力用コンデンサ又は分路リアクトル 500 kvar を超え 15 000 kvar 未満 内部に故障を生じた場合に動作する装置又は過電流を生じた場合に動作する装置
15 000 kvar 以上 内部に呼称を生じた場合に動作する装置及び過電流を生じた場合に動作する装置又は過電圧を生じた場合に動作する装置
調相機 15 000 kvar 以上 内部に故障を生じた場合に動作する装置

変圧器の保護

変圧器内部に事故が発生すると,故障電流アークによりガスが発生し,タンク内圧上昇のためにタンクが破損,破損したタンクから噴出した絶縁油の引火による火災を招くおそれがある。

そのため,事故を高速に検出し変圧器を系統より切り離す必要がある。

変圧器保護装置の種類には,電気的保護装置と機械的保護装置がある。

電気的保護装置

電気的保護装置として主に用いられるものには,過電流リレーや比率差動リレーがある。

変圧器保護には,一般的に主保護として比率差動リレー方式が,後備保護として方向距離リレー方式又は過電流リレー方式が用いられる。

差動リレー方式

変圧器事故のうち巻線間短絡は,通常の過電流リレーや地絡リレーでの検出が困難である。

そのため,変圧器保護に適用される電気式のリレーには一次側と二次側の電流の差から事故を検出する差動リレー方式が用いられることが多い。

差動リレー方式では,変圧器外部短絡事故が発生した際に誤差電流が生じ誤動作するおそれがある。

そのため,図 1 に示すような特性をもたせた比率差動リレーを用いることが多い。

図 比率差動リレーの特性

図 比率差動リレーの特性

また,差動リレー方式の差動回路には励磁電流に対応した電流が流れ,誤差の原因となる。

定時はこの電流は小さいが,変圧器を投入した際には比較的大きな励磁突入電流が流れることがある。

この電流による誤動作を防止する方法の一つとして,高調波電流を検出した際にリレーの出力をロックする方式や励磁突入電流が流れる期間,感度を低下させる方式などがある。

図中の $I_\text{d}$ は一次側電流と二次側電流のベクトル和の大きさを表しており,$I_\text{r}$ は一次側電流と二次側電流のスカラ和を表している。

比率差動リレーの誤動作対策

比率差動リレーは,変圧器一次と二次間の差電流によって事故電流の小さな内部事故も検出できるものであるが,変圧器充電操作に伴う励磁突入電流や各変流器の特性差などによって誤作動しないよう対策が必要である。

励磁突入電流には事故電流に比べて高調波が多く含まれることを利用した高調波抑制付きリレーなどの誤動作対策がある。

具体的には,励磁突入電流には,第 2 調波成分が多く含まれるため,この値をフィルタで抽出して,これが基本波成分に対して一定値異常の場合に比率差動要素をロックする第 2 調波ロック方式が一般的に採用されている。

機械的保護装置

電気的保護装置では検出できない変圧器内部の断線事故やターン間の絶縁不良事故などを検出するために,機械的保護装置が設置される。

これには,絶縁油の分解ガスを検出するガス蓄積形と油流の増大を検出する油流形,この二つを組み合わせたブッフホルツリレー,そして分解ガス発生による圧力の急上昇を検出する衝撃油圧リレーなどがある。

ブッフホルツリレーは,地震等の振動による誤作動の心配があることから,耐震性の優れた衝撃油圧リレーが多く採用されている。

ブッフホルツリレー (Buchholz relay)

変圧器内部に軽微な故障あるいは徐々に進行する故障が生じた場合,絶縁物や絶縁油が分解してガスを発生する。

また,急激な故障により多量のガスが発生した場合には変圧器タンク内の圧力が急激に上昇し,本体タンク内の絶縁油はコンサベータへ流出する。

ブッフホルツリレー (Buchholz relay) は,変圧器本体とコンサベータの間の連結管に設けられ,発生ガスを集積して軽故障を検出する第一段接点と,急激な大量ガス発生に伴う油流により重故障を検出する第二段接点を有するもので,特に軽微な故障を早期に発見することができる。

衝撃圧力リレー

衝撃圧力リレーは,事故時に変圧器内部で発生する分解ガスによる内圧上昇を検出する。内圧上昇が速いほど早く検出することができる。

参考文献

更新履歴

  • 2022年3月29日 新規作成
  • 2022年4月24日 参考文献に「平成16年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問2」を追加
  • 2022年5月21日 参考文献に「平成26年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6」
  • 2022年5月28日 参考文献に「平成20年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2」を追加
  • 2022年6月4日 参考文献に「平成14年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3」を追加
  • 2022年10月30日 参考文献に「令和元年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問2」を追加
  • 2024年11月15日 参考文献に「令和6年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問2」を追加