距離リレー(DZR : Distance Relay)は,自端の電圧・電流入力により事故検出ができることから保護リレー装置としての構成が比較的簡単で信頼性が高く,系統保護における主保護リレー又は後備保護リレーとして広く使用されている。
また,距離リレーは事故区間の選択が比較的確実で,保護区間に応じた各段距離リレーの時限協調により時間協調がとりやすいことから,送電線や変圧器・発電機などの電力機器の後備保護リレーとして,あるいは系統分離リレーとして幅広く使用されている。
距離リレーは入力電圧の入力電流に対する比,すなわち測距インピーダンスに応動し,測距インピーダンスが動作特性範囲内であれば動作する。
系統保護のための距離リレー
図の場合の線間短絡距離リレー,あるいは 1 線地絡距離リレーが見る測距インピーダンス $\dot{Z}_\text{r}$ は,いずれも次式の形式で表現される。
\[ \dot{Z}_\text{r}=\dot{Z}_\text{1}+\dot{Z}_\text{f} \]
上式右辺第 1 項 $\dot{Z}_\text{1}$ は,リレー設置点から故障点までの正相インピーダンスである。
右辺第 2 項の $\dot{Z}_\text{f}$ は,短絡距離リレーの場合は故障点抵抗を $R_\text{f}$ とするとき,この $R_\text{f}$ と図中の電流 $\dot{I}_1$,$\dot{I}_\text{f}$ を用いて $\displaystyle R_\text{f}\times\frac{\dot{I}_\text{f}}{\dot{I}_1}$ で表される。
また地絡距離リレーの場合は,故障点抵抗に加え,故障回線及び健全回線の零相電流に関係する変数で構成される。
これらの距離リレーの適用にあたっては,健全相のリレーが見る $\dot{Z}_\text{r}$ の値 $\dot{Z}_\text{r0}$ にも注意を払う必要がある。
一部の健全相リレーの $\dot{Z}_\text{r0}$ は,故障点がリレー設置点に近い場合,$\dot{Z}_\text{r0}$ のリアクタンス成分が小さくなる傾向にあり,オーバーリーチとなって不要動作する可能性がある。
測距インピーダンスは,上記の短絡・地絡検出用途の他,脱調分離リレーにおいても用いられる。
本リレーは,系統動揺時の電気的中心点近傍における $RX$ 平面上での測距インピーダンスの特徴を利用したものであり,その時間変化はインピーダンスローカスと呼ばれる。
参考文献
- 令和4年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5「系統保護のための距離リレー」
- 平成16年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問4「短絡距離リレー」
electrical-engineer.hatenablog.jp
更新履歴
- 2022年9月11日 新規作成
- 2022年12月13日 参考文献に「平成16年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問4」を追加
- 2023年8月12日 距離リレーの略語 DZR を追加
- 2024年8月7日 参考文献に記載した過去問題へのリンクを追加