仕様及び特性が等しい 2 台の三相同期発電機 SG1 及び SG2 を並列接続し,共通の負荷に電力を供給することを考える。
速度出力特性がともに等しい垂下特性をもつ原動機で入力を等しく一定として並行運転している場合,両機の間には横流と呼ばれる循環電流が流れる。
このとき,各発電機の誘導起電力の大きさ,周波数が等しく,各発電機の誘導起電力の位相がほぼ一致している。
この運転状態から SG1 の界磁電流を増加すると,両機の誘導起電力に差が生じ,これによって両機の間に循環電流が流れる。
この電流は SG1 の誘導起電力に対しては遅れ,SG2 に対しては進みの無効電流であり,電機子反作用によってそれぞれの磁束に作用して,両機の端子電圧が界磁電流の調整前と比べて高い電圧で平衡を保つように働く。
また,先の並行運転状態において,何らかの原因で一方の発電機の回転速度が一時的に変化し,両機の速度差により誘導起電力の間にわずかな位相差が生じて循環電流が流れたとする。
この場合の循環電流は,両機の間で有効電力の授受を行って自動的に両機を同一位相に保つように働く。この場合の循環電流を同期化電流という。
演習問題
定格出力 120 MW,定格周波数 50 Hz の同期発電機 A と定格出力 80 MW,定格周波数 50 Hz,速度調定率 4.0 % の同期発電機 B とが並列運転可能な電力系統がある。
次の問に答えよ。
ただし,調速機(ガバナ)の特性は線形であるとし,負荷の周波数特性は無視する。
(1)発電機 A の速度調定率
発電機 A のみの運転によって,系統周波数が 50.00 Hz に保たれているとする。
発電機が出力 80 MW で運転しているときに系統負荷が 40 MW 減少した結果,周波数が 50.50 Hz となった。
発電機 A の速度調定率 [%] を求めよ。
ただし,有効数字は,小数点以下 1 桁とする。
(1)の解答
発電機 A の速度調定率を $x$ [%] とすると,次式が成り立たなければならない。
\[ 50.50 = 50.00 + 50 \times \frac{x}{100} \times \frac{40}{120} \]
これを解くと,$x=3$ となる。
よって,発電機 A の速度調定率は 3.0 % である。
(2)発電機 A と発電機 B の出力
出力 100 MW で運転中の発電機 A と出力 80 MW で運転中の発電機 B とが並列運転を行っており,系統周波数が 50.00 Hz に保たれているとする。
系統負荷が 30 MW 減少したときの,系統周波数 [Hz],発電機 A の出力 [MW],及び発電機 B の出力 [MW] を求めよ。
ただし,系統周波数の有効数字は,小数点以下 2 桁とする。
(2)の解答
系統負荷が 30 MW 減少したときの発電機 A の出力を $P_\text{A}$ [MW],発電機 B の出力を $P_\text{B}$ [MW],系統周波数を $f$ [Hz] とすると,次の 3 つの式が成り立たなければならない。
\[ P_\text{A} + P_\text{B} = 180 - 30 \] \[ f= 50.00 + 50 \times \frac{3}{100} \times \frac{100-P_\text{A}}{120} \] \[ f= 50.00 + 50 \times \frac{4}{100} \times \frac{80-P_\text{B}}{80} \]
3 式より,$P_\text{A}=80$,$P_\text{B}=70$,$f=50.25$ となる。
よって,発電機 A の出力は 80 MW,発電機 B の出力は 70 MW,系統周波数は 50.25 Hz となる。
参考文献
更新履歴
- 2022年9月12日 新規作成