目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

電動機の可変速ドライブシステム

電力変換器と電動機及びその制御装置で構成される可変速ドライブシステムは,省エネルギー性が高く低速から高速まで高精度に電動機の速度(回転数)やトルクの制御が可能であることから,さまざまな用途に用いられている。

サイリスタレオナード法

サイリスタレオナード法は,直流電動機を低損失で可変速制御するもので,制御電圧源による開ループの速度制御ドライブとして用いられる。

この制御の動作は,一般に電動機の端子電圧と速度の比例性がよい定格電圧以下の低トルク駆動範囲に限られている。

さらに電動機の高回転が必要な場合には,弱め界磁制御を用いて電動機の電機子電圧を一定とする定出力運転領域で高速回転を得る。

サイリスタ変換器を用いた直流電動機駆動

図のようにサイリスタ変換器の直流側に直流機の電機子巻線を接続した直流駆動システムを静止レオナードと呼ぶ。

直流他励電動機を用いる場合,サイリスタ変換器の制御遅れ角 $\alpha$ を操作すると,直流機の回転速度を制御できる。

電機子電流が連続であれば,軽負荷時の回転速度は,ほぼ $\cos\alpha$ に比例する。

また,サイリスタがオンしているときの順方向電圧と交流及び直流リアクトルの抵抗が無視できる場合には,$\alpha$ を一定としたまま負荷トルクを増加すると,電機子巻線抵抗及び交流リアクトルの影響によって,負荷トルクにほぼ比例して回転速度は低下する。

図の回路構成の場合,$\alpha$ を操作するだけでは,制動トルクを発生することはできない。

回生制動を行うためには,界磁電流の方向反転などが必要になる。

界磁電流の方向反転を行って,直流機を回生制動する場合,サイリスタ変換器の $\alpha$ は 90 [°] 以上となる。

図 静止レオナード

図 静止レオナード

交流電動機を対象とした可変速ドライブ

交流電動機を対象とした可変速ドライブでは,原則として周波数と電圧の制御により電動機の速度制御を行う。

実際の制御は,可変電圧・可変周波数の電力変換器を用いて駆動する。

この場合,開ループ制御又は電動機速度等をフィードバックして指令値に一致させるよう制御する閉ループ制御のいずれかが選ばれる。

特に同期機を開ループ制御で速度制御する場合には急加減速や負荷急変による過渡時に脱調するおそれがあり,このようなとき,高精度な制御が要求される場合には回転子位置検出を行い,この信号を電力変換器制御ループに取り込むなどの方法が採用される。

近年は,ディジタル技術の制御精度が向上する一方で,低価格・低損失半導体バイスとして GCT や IGBT などの自己消弧形の半導体素子が採用されたことにより,高キャリア周波数による低騒音化や高効率化による装置の小形化が進み,可変速ドライブシステムは,家電から,風力発電装置まで多様な領域で利用されている。

参考文献

更新履歴

  • 2022年7月6日 新規作成