目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

直流電動機の解説ノート

直流電動機(DC motor)は,直流を入力とする電動機(motor)である。

直流電動機は誘導電動機に比べて,構造が若干複雑であるが,速度制御性に優れているため,根強い需要がある。

乾電池駆動の玩具用小形電動機から,電車モータ,製鉄ミル用大形電動機まで広範囲に使用されている。

直流機の構造

直流機の主要部分は界磁,電機子,整流子の三つである。

界磁

磁束を作る界磁について述べる。

界磁は継鉄,磁極および界磁巻線からできており,狭いギャップをへだてて,電機子に対向して磁気回路を形成している。

電機子(armature)

起電力を生じ,主電流を通すための電機子について述べる。

電機子は,電機子鉄心(armature core)と電機子巻線からなっている。

整流子(commutator)

電機子の巻線に生じる交流を直流に直す部分である整流子について述べる。

整流子は,運転中に常にブラシと接触して摩耗するばかりでなく,火花などによってかなり高温になるため,電気的にも機械的にも丈夫につくられている。

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直流電動機の電機子反作用

直流電動機の界磁巻線に電流を流せば,その起磁力により主磁束が発生し,負荷の増加により電機子に電流が流れると,電機子磁束が生じる。

電機子磁束は主磁束に合成され,種々の現象を引き起こす。これを電機子反作用という。

直流機に電機子電流が流れると界磁磁束が磁極片の片側に偏り,電動機では,回転方向に対して磁極片の磁束密度は磁極前端が大きく,磁極後端が小さくなる。

鉄心に飽和現象がなければ磁束が偏っても1極当たりの有効磁束は変化しない。

しかし,実際には鉄心に飽和現象があるので,有効磁束は減少する。

このため,励磁電流が一定であれば,電機子電流の増加に伴い,回転速度は上昇する傾向がある。

 

電機子電流に起因する交差磁化作用の影響により,電気的中性点は幾何学的中性点を離れて,電動機では反回転方向に移動する。

その結果,ブラシで短絡されるコイルは,磁束を切るため起電力を誘導し,過大な短絡電流が流れてブラシと整流子の間に火花を生じる。

 

また,電機子反作用による偏磁作用のためギャップの磁束分布の偏りが大きくなると,磁束密度の高い部分にあるコイルの誘導起電力が大きくなる。

この値がある限度を超えると,整流子片間にアーク短絡が生じ,次第に拡大して,ついに正負ブラシ間をアークで短絡するに至る。

これをフラッシオーバーという。

直流電動機の分類

直流整流子電動機(ブラシ付き DC モータ

直巻整流子電動機

直巻電動機は,界磁巻線と電機子巻線とが直列に接続された変速度電動機である。

界磁磁束の未飽和領域では,発生トルクは負荷電流の 2 乗に比例し,また,回転速度は誘導起電力に比例し,負荷電流に反比例する。

界磁磁束の飽和領域では,トルクは負荷電流に比例し,回転速度は負荷電流の増加とともに緩やかに下降する直線に近づく。

直巻電動機は始動トルクが極めて大きい。

運転時は,負荷トルクの変動に応じて自動的に回転速度が変化するので,負荷変動が大きいときでも電動機への供給電力はほぼ一定となる。

しかし,無負荷に近づくと界磁磁束が極めて少なくなって著しく高速となるので,安全速度範囲内での運転となるよう,必ず最小限の負荷を直結又は歯車で連結して使用しなければならない。

直巻電動機はこのような特性をもっているので,電気車,クレーン,巻上機など輸送機器用の電動機として適している。

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無整流子電動機(ブラシレス DC モータ

直流電動機では,整流子とブラシを用いて機械的な整流が行われるが,整流時の火花によるコロナの発生や保守性・耐環境性等が問題となる場合がある。

近年,直流機の優れた制御特性を維持しながら,上記の直流電動機特有の短所をなくしたブラシレス DC モータ(無整流子電動機)が,永久磁石を用いた小形モータの分野を中心に採用されている。

ブラシレス DC モータは直流電動機の整流動作を,回転子の磁極位置検出と半導体スイッチの組み合わせで電子的に行わせるものである。

小形モータの分野で採用されている一般的な三相形ブラシレス DC モータは,直流電源,パワー半導体バイスによる電子式コミュテータ,同期電動機及び磁極位置検出器又は回路で構成されている。

通常,磁極位置検出器(センサ)としては,InSb,GaAs などの化合物半導体を用いたホール素子,光学的磁極位置検出器あるいは高周波磁気センサ等が用いられている。

また,電機子巻線の誘導電圧変化や突極構造のモータでの電機子巻線のインダクタンス変化等を利用して,磁極位置を推定するセンサレス制御方式も考えられている。

参考文献

更新履歴

  • 2022年2月25日 新規作成
  • 2022年3月18日 構成を見直し,目次を追加