吸出し管は,反動水車のランナ出口から放水路を結ぶ管で,単なる導水管として用いられるだけでなく,管内に充満する水頭を利用して,ランナ出口の圧力を大気圧以下に保ち,また,ランナ出口の水の持つ運動エネルギーをランナ出口から放水面までの落差として回収するためのものである。
ランナの指定位置の標高と放水面の標高差を吸出し高さと言い,これを高くとり過ぎるとキャビテーションが発生しやすくなる。標準大気圧に相当する理論上の水柱の高さは約 10 m であるが,キャビテーションを考慮して,吸出し高さは通常 7 m 以下としている。
吸出し管は,次の二つの機能を持っている。
- ランナ出口と放水面間の落差(位置エネルギー)を有効に利用する。
- ランナから放出された水のもつ運動エネルギーを効率よく回収し,吸出し管出口の廃棄損失を少なくする。
水車に働く総エネルギーに対する,ランナ出口から放出される水のもつ運動エネルギーの割合は,低速水車よりも高速水車になるほど大きいため,一般的に,高速で,低落差の水車では,吸出し管の設計や施工の良否が水車全体の効率に大きく影響する。
いま,図のように,ランナ出口の圧力,流速をそれぞれ $p_1$ [Pa],$v_1$ [m/s],吸出し管出口の流速を $v_2$ [m/s],大気圧を $p_a$ [Pa],吸出し高さを $h_s$ [m],吸出し管内における損失水頭を $h_d$ [m],水の密度を $\rho$ [kg/m³],重力加速度を $g$ [m/s²]とすると,ベルヌーイの式より次式を導くことができる。
\[ \frac{p_{1}}{\rho g}=\frac{p_{a}}{\rho g}-h_{s}-(\frac{v_{1}^{2}}{2g}-\frac{v_{2}^{2}}{2g}-h_{d}) \]
$\displaystyle \frac{v_{1}^{2}}{2g}-\frac{v_{2}^{2}}{2g}-h_{d}$ は,吸出し管で回収された運動エネルギー分を表し,この値が大きいほど $\displaystyle \frac{p_{1}}{\rho g}$ が小さくなり水車出力は増加する。
吸出し管の効率を $\eta_d$ とすると,回収された運動エネルギーに相当する水頭は $\displaystyle \frac{\eta_{d}v_{1}^{2}}{2g}$ で表され,$\eta_d$ は,普通,円すい形吸出し管で 0.8 程度,エルボ形で 0.6 程度である。
また,上式より,ランナ出口の圧力は大気圧より低くなるが,その値が水の蒸気圧より下がって蒸気の気泡が生じる現象をキャビテーションと呼ぶ。
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