本稿では,水車におけるキャビテーションについて説明する。
キャビテーションの発生メカニズム
運転中の水車の各部の流束および圧力はそれぞれ異なる。
ある点の圧力が,そのときの水温の飽和蒸気圧以下に低下すると,その部分の水は蒸発して水蒸気となるので流水中に微細な気泡が発生する。
この気泡が周囲の水とともに流れてて圧力の高い部分に達すると突然つぶれ,その瞬間に非常に高い圧力を生じ,近くの物体に大きな衝撃を与える。
この現象をキャビテーション(cavitation)という。
キャビテーションの障害
キャビテーションが発生すると,以下の現象が発生する。
- 効率,出力,水流の減少が起こる
- キャビテーションの発生場所に壊食が起こる
- 吸出し管入口の水圧変動が著しくなる
運転中の機器に与える影響
キャビテーションが発生した場合,運転中の機器に与える影響は以下のとおり。
- 流水に接するランナ羽根に壊食が生じる。
- 水車効率が低下する。
- 振動・騒音が発生する。
水車の吸出し管
吸出し管は,反動水車のランナ出口から放水面までの接続管であって,鋼板又はコンクリートで作られており,円すい形とエルボ形のものが多く用いられている。
吸出し管の目的は,ランナと放水面間の落差を有効利用するとともに,ランナから放出された水の持つ運動エネルギーを位置エネルギーとして回収し,排棄損失を少なくすることである。
そのため,流水路を徐々に拡大して流速の減少を図っている。
しかし,吸出し高さを過度に大きくするとキャビテーションが発生しやすくなる。
キャビテーションの防止策
このキャビテーションの発生を抑制する対策としては,以下などがある。
- 水車の比速度を一定値以下とする
- ランナベーンの形状を整え,表面を滑らかにする
- 過度の部分負荷運転や過負荷運転をさける
- 水車を放水位に対して十分低い位置に据え付ける
- キャビテーションの発生しやすい部分にステンレス鋼材を使用する
発電所を設計するうえで考慮すべきこと
キャビテーションを抑制するため,設計上,最も重要なのは吸出し高さの選定であり,吸出し高さを低くすることが効果的である。
水車の設計・製作上で考慮すべきこと
プロファイルゲージ等を用いてランナ羽根の形状を適切に整形し,表面を平滑に仕上げることも重要で,水の流れがランナ表面から剥離しないことでのキャビテーションの抑制が期待できる。
運転上実施すべき対策
運転開始後に点検等でキャビテーションを確認した場合,部分負荷運転の下限値を上げることでキャビテーションの抑制を図る。
参考文献
- 令和3年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1「反動水車におけるキャビテーション」
- 平成25年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5「水車のキャビテーションとその対策」
- 平成15年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5「水車の吸出し管」
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