水車の非破壊試験は,主としてランナ,主軸,ケーシング,ガイドベーン等の曲がり部やフランジ付け根部などの形状急変部,又は高応力部,溶接部などについて実施し,磁粉探傷試験,浸透探傷試験,超音波探傷試験などがある。
一方,発電機の電気的非破壊試験の一つとして絶縁特性試験があり,これには直流試験と交流試験とがある。
発電機巻線の非破壊試験
発電機巻線の絶縁は,熱・吸湿・振動・電気的ストレスなどによって劣化し,ついには運転電圧で絶縁破壊を起こす。
そのため,固定子巻線の絶縁劣化状態を判定するために行われる非破壊試験(絶縁劣化判定)には,直流試験と交流試験がある。
直流試験
直流試験としては,絶縁抵抗測定,直流電流試験などがある。
絶縁抵抗試験(メガー試験)
絶縁物表面の汚損状態やその内部の吸湿状態を知るのに,絶縁抵抗の測定は最も簡便な方法である。
一般に 500 または 1 000 V のメガーまたはこれに類する直読計器を用いて測定される。
回転機では絶縁抵抗試験によって得られた値が,JIS 規格によって決まった値以上になることが要求されている。
直流電流試験(直流吸収試験)
直流電流試験では,電圧印加後の電流は時間の経過とともに減衰するが,この電流の時間的変化の程度を表す指標として成極指数がある。
これは絶縁物の吸湿・汚損の状態を判断する目安として用いられている。
直流電流試験は,直流吸収試験ともいう。
交流試験
交流試験としては,誘電正接試験,交流電流試験及び部分放電試験がある。
誘電正接試験(tanδ 試験)
誘電正接試験は絶縁物の tanδ を測定する試験である。
tanδ は絶縁物の形状・寸法にあまり影響されず,固有の性質を示すものであり,絶縁物内部で放電が生じると値が大きくなる。
また,絶縁物内で消費されるエネルギー損失である誘電損の目安ともなる。
交流電流試験
交流電流試験は,電圧を印加し,その電流を測定する試験である。
巻線に交流電圧を印加し,徐々に電圧を高くすると,通常は電圧と電流が比例して大きくなるが,巻線の表面などからコロナが発生すると電流の増加率が大きくなる。
印加電圧を増加させていき,電流が急増した点の電圧及びそのときの電流の変化率などから劣化の程度を推定する。
部分放電試験
部分放電試験は,電圧を印加し,固定子巻線表面又は巻線絶縁物内部のボイドで発生する部分放電を測定する試験であり,最大放電電荷などから劣化の程度を推定する。
コロナ試験
コロナ試験は,交流電圧を印加し,絶縁物内のギャップに発生するコロナ放電の電荷量を測定し,ギャップ発生の有無を判定する。
参考文献
- 電気学会,「[改訂版]発電・変電」,オーム社,2000年6月30日
- 平成25年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5「水車・発電機の非破壊試験」
- 平成16年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1
更新履歴
- 2022年6月12日 新規作成
- 2022年6月26日 参考文献に「平成25年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5」を追加
- 価格: 6600 円
- 楽天で詳細を見る