高電圧機器の絶縁性能を確認するために行われる各種非破壊試験のうちの部分放電試験について説明する。
複合誘電体を有する電極配置に高い電圧を印加すると,電界の強さの大きいところで局所的な放電が生じる。
このような放電を総称して部分放電(partial discharge)という。
最近,ボイド放電などの部分放電現象とこれによる絶縁材料の劣化が明らかにされ,また,部分放電の測定技術が向上し,さらに,電力機器や電力ケーブルなどに対する部分放電試験の有効性が認められるようになったため,この種の試験が広く行われている。
部分放電に関する一般的な測定については,すでに国内外において規格が制定されており,またそれぞれの機器,ケーブルなどについても規格が決められている。
- JEC-0401(1990):「部分放電測定」
- IEC 60270 (2000) : "High-voltage Test Techniques - Partical Discharge Measurements"
部分放電現象と絶縁性能との関連
部分放電は電極間に電圧を加えたときに,その間の絶縁媒体中で部分的に発生する放電現象であり,電極の突起,電極と絶縁物界面におけるはく離,絶縁物内部の異物やボイド,複合絶縁構成におけるトリプルジャンクション,絶縁物表面への異物付着,金属部分の接触不良など種々の原因により発生する。
部分放電が発生すると,これが発端となって絶縁破壊や局部的な絶縁劣化を引き起こすため,絶縁材料の寿命を決める要因となる。
代表的な試験(測定)方法
一定時間内に発生する部分放電パルスの電荷量,発生頻度,放電エネルギーや交流電圧位相との関係を電気信号ととして検出する方法(パルス電流検出法)と,部分放電の発生に伴って生ずる超音波や光などを高感度マイクロホンや光電子倍増管あるいは光ファイバセンサなどを用いて,音響的あるいは光学的に測定する方法がある。
部分放電の有無を判定する手法
絶縁異常を確実に探知する手法として,接地線に流れる放電電流を高周波 CT により検出して部分放電の有無を判定する手法。
超音波マイクによる放電音の検出
部分放電時の弾性波(圧力波)によりタンク表面に生じる音響信号を検出するセンサを取り付けたり,超音波マイクによって放電音を検出したりする方法。
位置標定
位置標定も目的とする場合は,これらの手法のセンサを複数セットし,検出した複数の信号の時間差とセンサの位置との関係により放電箇所を特定する方法がある。
参考文献
更新履歴
- 2022年12月17日 新規作成
- 2024年8月31日 参考文献に「令和6年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2」を追加