目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

ケーブルの温度上昇

ケーブルの許容電流は,絶縁体の性能を長期にわたり損なわない温度条件から定められ,例えば CV ケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)の最高許容温度(連続使用時)は 90 °C 程度である。

ここにケーブルの温度は,ケーブルから発熱と周囲への熱放散とから定める。

ケーブルからの発熱は,導体での銅損,誘電体損,シース損などによる。誘電体損は,印加電圧の 2 乗と静電容量,誘電体の $tan{\delta}$ などに比例する。

一方,シース損は,シース各部への鎖交磁束に起因する渦電流損と線路の長手方向に誘導されるシース電圧に起因するシース回路損などからなる。

単心ケーブルでは,シース内に三相導体が収納されている三心ケーブルに比べ,シース電圧が大きくなる。単心ケーブルでシース回路損及びシース電圧を減少させるには,シース回路にクロスボンド方式を採用することが有効である。

ケーブルからの熱放射は,周囲温度や土壌等の熱抵抗とともに,ケーブルの条数や布設方法により異なる。例えば図のような管路に,全て同一種類で同一サイズのケーブルを布設し同一の電流を流した場合には,放熱効果は (a),(b),(c) のうち (b) が最も大きい。

ここにケーブル電流は許容電流程度であり,地表面からの日射の影響は無視できるとする。

図 ケーブル管路

図 ケーブル管路

直埋及び管路布設ケーブルの常時許容電流

ケーブルの温度上昇は,導体内に発生する抵抗損,絶縁体内に発生する誘電損,金属シースに流れる誘起電流によるシース損などに伴う発熱によって起きる。

以下で,直埋及び管路布設ケーブルの常時許容電流を求めてみる。

ケーブルの最高許容温度を $T_1$ [°C],大地の基底温度を $T_2$ [°C],単位長さ当たりについてケーブルから基底温度帯に至る全熱抵抗を $R_{th}$ [°C・m/W],ケーブルからの発生熱量を $W$ [W/m] とすれば,$\displaystyle W=\frac{T_{1}-T_{2}}{R_{th}}$ が成立する。

導体に流れる電流を $I$ [A],導体抵抗を $r$ [Ω/m],心線数を $n$ とすれば抵抗損は $nI^{2}r$ [W/m] となる。誘電損を $W_d$ [W/m] とし,発生熱量は抵抗損と誘電損のみで決まり,他の損失は無視できるほど小さいとすると,定常状態における許容電流 $I_{max}$ [A] を表す式は $\displaystyle I_{max}=\sqrt{\frac{1}{nr} (\frac{T_{1}-T_{2}}{R_{th}}-W_{d} )}$ となる。

参考文献

 

更新履歴

  • 2022年5月24日 新規作成
  • 2022年5月29日 参考文献に「平成16年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6」を追加