目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

分散型電源の系統連系

本稿では,分散型電源の系統連系について述べる。

ここで,分散型電源とは,一般電気事業者及び卸電気事業者以外の者が設置する発電設備等であって,一般電気事業者が運用する電力系統に連系するものをいう。

分散型電源の系統連系に係る用語の定義

分散形電源など発電設備が連系する系統において,系統事故が発生して連系する系統が系統電圧と切り離された状態(例えば,配電用変電所の遮断器を開放した状態)において,当該系統に連系している発電設備が運転を継続し,当該系統の負荷へ電気を供給している状態のことを単独運転という。

電気設備の技術基準の解釈 第220条 分散型電源の系統連系設備に係る用語の定義

単独運転

分散型電源を連系している電力系統が事故等によって系統電源と切り離された状態において,当該分散型電源が発電を継続し,線路負荷に有効電力を供給している状態

これに対し,発電設備が系統から解列された状態で,当該発電設備設置者の構内負荷にのみ電力を供給することを自立運転といい区別される。

自立運転

分散型電源が,連携している電力系統から解列された状態において,当該分散型電源設置者の構内負荷にのみ電力を供給している状態

単独運転になった場合,人身及び設備の安全に対し影響を与えるおそれがあると共に,事故点の被害拡大や復旧遅れなどにより供給信頼度の低下を招くおそれがあることから,保護リレーなどを用いて当該発電設備を当該系統から解列できるような対策を施す必要がある。

逆潮流がない連系の場合には,単独運転時に発電設備側から系統側へ電力が流出するため,発電設備設置者の受電点に逆電力リレー等を設置することにより,逆潮流を検出して自動的に系統から解列することが可能である。

一方,逆潮流がある連系の場合には,系統事故時の解列の確実化を図るため,系統の引出口遮断器開放の情報を通信設備を利用して発電設備へ送り,設備解列を行う転送遮断装置を設置するか,単独運転検出機能を有する装置を設置する方策を採ることとしている。

転送遮断装置

遮断器の遮断信号を通信回線で伝送し,別の構内に設置された遮断器を動作させる装置

受動的方式の単独運転検出装置

単独運転移行時に生じる電圧位相又は周波数等の変化により,単独運転状態を検出する装置

能動的方式の単独運転検出装置

分散型電源の有効電力出力又は無効電力出力等に平時から変動を与えておき,単独運転移行時に当該変動に起因して生じる周波数等の変化により,単独運転状態を検出する装置

系統へ連系する際の留意事項

発電設備を系統へ連系すると,系統の短絡容量が増加する。

この短絡容量が需要家遮断器の遮断容量を上回る場合には,需要家構内事故時に需要家遮断器が遮断不能となるおそれがあり,また,需要家の引込ケーブルなどの瞬時許容電流を上回る場合には,引込ケーブルなどの損傷を招くおそれがある。

このようなおそれがある場合については,発電設備設置者において短絡電流を制限する装置(限流リアクトル,高インピーダンスの昇圧用変圧器など)を設置し,短絡電流の増加を抑制する必要がある。

なお,これにより対策できない場合には,異なる配電用変電所バンク系統への連系,特別高圧電線路との連系又はその他の短絡容量対策を講じる。

系統の短絡容量の計算については,原則として配電線,配電線に連系される発電設備,及び上位電圧の電線路,変圧器などのインピーダンスを基に算出するが,誘導発電機又は二重給電誘導発電機のインピーダンスは拘束リアクタンスを使用し,同期発電機のインピーダンスについては,原則として初期過渡リアクタンスを使用する。

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電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン

太陽光発電風力発電に代表される自然エネルギーを利用した分散形電源は,エネルギー密度が小さく,一般的に小規模であることが多く,気象条件などに影響され出力の変動が大きいことなどの特徴がある。

これらの分散形電源が,電力系統に無秩序に連系されると,保安面及び電力品質確保などの面から,当該分散形発電設備等の設置者以外の者及び電力設備に悪影響を及ぼすことがあるため,国は,保安に関する技術的な要件を「電気設備技術基準の解釈」で示しており,また,電力品質に関する技術的な要件を「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)」で定めている。

ガイドラインに定められている技術要件の一つに,瞬時電圧変動対策がある。

風力発電で一般的に使われている誘導発電機は,系統並列時に瞬時電圧低下を引き起こし,系統電圧が所定値を超えるおそれがある。このような場合には,発電設備等の設置者において限流リアクトル等を設置することが必要であり,また,これにより対応することができない場合には,同期発電機を用いるなどの対策が必要である。

電力品質を確保するための技術要件

太陽光発電風力発電等の発電設備等の系統連系において,電力品質を確保するための技術要件が明らかにされている。

一般的には,発電設備等の一設置者当たりの電力容量(連系する発電設備等の出力容量と受電電力の容量のいずれか大きい方)が原則として 2 000 kW 未満であり,以下に示す技術要件を満たす場合には,高圧配電線と連系することができる。

力率

原則 85 % 以上とするとともに,系統側から見て進み力率とならないようにする。

自動負荷制限

発電設備等の脱落時等に連系された配電線路や配電用変圧器等が過負荷となるおそれがあるときは,設置者において自動的に負荷を制限する対策を行う。

逆潮流の制限

当該発電設備等を連系する配電用変電所のバンクにおいて,原則として逆向きの潮流が生じないようにする。

変圧器逆潮流の経緯

従来より配電用変電所では,配電用変圧器(以下,配変バンクという)での逆潮流は禁止されていた。

平成24年10月および11月の内閣府規制・制度改革委員会グリーン WG にて,配変バンク逆潮流の制限に関する規制の制度改正要望が出され,規制の精度改正が検討項目となった。

経済産業省は,変圧器逆潮流の制限見直しについて,「保安面」と「電力品質面」での問題をクリアできる設備対策を前提に,平成25年5月31日に「電気設備の技術基準の解釈」と「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイド」を改正した。

これにより保安面,電力品質面の対策実施を条件に,配変バンクの逆潮流が可能となった。

変圧器逆潮流の制限が見直されるまでの電力系統設備は,基本的に大規模発電所から,各需要家に向かう潮流を前提として構築されてきた。

そのため,各設備や制御機器が逆潮流になると適切に働かないことがある。

電圧変動

  • 発電設備等の脱落等又は発電設備等からの逆潮流により低圧需要家の電圧が適正値を逸脱するおそれがあるときは,設置者において,それぞれ自動的に負荷を制限する対策又は自動的に電圧を調整する対策を行う。
  • 瞬時時電圧変動対策を行う。

不要解列の防止

  • 連系された系統以外の事故時には解列されないと同時に,連系された系統から解列される場合には,自動再閉路時間より短く,かつ単独運転か否かを判別できる適切な次元で行われるものとする。
  • 系統の事故による広範囲の瞬時電圧低下や瞬時的な周波数の変化があっても運転を継続するものとする。

連絡体制

系統側電気事業者の営業所等と発電設備等設置者の技術員駐在箇所等との間には,保安通信用電話設備を設置するものとする。

分散型電源の低圧及び高圧配電系統連系保護

分散型電源を配電系統に連系する場合,分散型電源設備の故障及び電力系統の故障を考慮する必要がある。

分散型電源設備の故障については,例えば逆変換装置を用いた分散型電源を配電系統に連系する場合,逆変換装置の内部故障などにより変圧器の偏磁現象が生じて分散型電源設置者以外の者に影響を及ぼすおそれがあるため,直流成分の流出を防止する変圧器の設置や直流成分の検出時に出力を停止する機能の設置によって保護する。

一方,電力系統の地絡故障保護については,低圧配電線との連系の場合,単独運転検出機能を有する装置によって検出し保護するが,高圧配電線(非接地系統)との連系の場合は,地絡過電圧リレー(OVGR)によって地絡電圧を検出し,分散型電源を解列する。

この場合,連系している配電線以外の配電線の地絡故障では動作しないよう時限協調を図って保護する。

また,高圧配電線の短絡故障時に,短絡故障点が分散型電源設置点から離れている場合は,過電流リレー(OCR)では保護協調が図れないため,例えば,同期発電機では短絡方向リレー(DSR)を有する保護装置によって保護する。

連系された配電系統の短絡事故

短絡方向継電器(DSR)を用いて地絡事故を検出する。

系統短絡事故時に,発電設備側から電力系統へ短絡電流が流出するが,同期発電機の短絡電流が比較的小さいため過電流継電器(OCR)の整定感度では検出できない場合がある。

逆に OCR の感度を高くすると負荷電流等により誤動作の原因となることから,DSR により短絡事故を検出する。
他系統事故との区別が困難なため,系統側変電所のリレーと時限強調を図る必要がある。

至近端短絡事故で DSR の電圧要素が無くなる場合には,短絡の方向判別ができるよう,DSR に電圧メモリ機能を持たせる。

力率改善用コンデンサによる進み電流等により高感度整定の DSR は不要動作するおそれがあるため,電圧低下の検出を条件として加えることにより不要動作による誤遮断を避ける。

連系された配電系統の地絡事故

地絡過電圧継電器(OVGR)を用いて地絡事故を検出する。

系統地絡事故時,自家用発電設備設置需要家側から流出する地絡電流は小さく,地絡過電流継電器(OCGR)では不動作となる場合があるため,OVGR により事故を検出する。

OVGR は他系統地絡事故との区別が困難であるため,時限をもたせて,変電所の地絡保護リレーと協調を図る必要がある。

発電設備の単独運転

周波数上昇継電器(OFR),周波数低下継電器(UFR)および転送遮断装置または単独運転検出機能を設置して保護を行う。

上位系統事故時,連系配電線の事故で配電線送り出し遮断器開放後に事故点が消滅した場合等の特異事故時,作業等により線路用開閉器等を開放した場合等には系統事故検出用の継電器では検出することができないことから単独運転を継続するおそれがある。

開閉器等を開放した場合に,切り離された部分において発電出力と負荷が平衡している場合には,周波数の変化が少なく,OFR,UFR での検出が困難となるため,これらに加え,転送遮断装置または単独運転検出機能を有する装置が必要となる。

単独運転検出機能の設置に当たっては,外乱信号が系統に影響を与えず,かつ,通常起こり得る系統の変動で不要に解列せず,確実に単独運転を検出できるように整定する必要がある。

分散型電源の系統連系設備

a. 逆変換装置を用いて分散型電源を電力系統に連系する場合は,逆変換装置から直流が電力系統へ流出することを防止するために,受電点と逆変換装置との間に変圧器(単巻変圧器を除く。)を施設すること。

ただし,次に適合する場合は,この限りでない。

  1. 逆変換装置の交流出力側で直流を検出し,かつ,直流検出時に交流出力を停止する機能を有すること。
  2. 次のいずれかに適合すること。
    1. 逆変換装置の直流側電路が非接地であること。
    2. 逆変換装置に高周波変圧器を用いていること。

b. a. の規定により設置する変圧器は,直流流出防止専用であることを要しない。

c. 分散型電源の連系により,一般送配電事業者が運用する電力系統の短絡容量が,当該分散型電源設置者以外の者が設置する遮断器の遮断容量又は電線の瞬時許容電流等を上回るおそれがあるときは,分散型電源設置者において,限流リアクトルその他の短絡電流を制限する装置を施設すること。

ただし,低圧の電力系統に逆変換装置を用いて分散型電源を連系する場合は,この限りでない。

d. 高圧又は特別高圧の電力系統に分散型電源を連系する場合(スポットネットワーク受電方式で連系する場合を含む。)において,分散型電源の脱落時等に連系している電線路等が過負荷になるおそれがあるときは,分散型電源設置者において,自動的に自身の構内負荷を制限する対策を行うこと。

低圧連系時の施設要件

  1. 単相 3 線式の低圧の電力系統に分散型電源を連系する場合において,負荷の不平衡により中性線に最大電流が生じるおそれがあるときは,分散型電源を施設した構内の電路であって,負荷及び分散型電源の並列点よりも系統側に,3 極に過電流引き出し素子を有する遮断器を施設すること。
  2. 低圧の電力系統に逆変換装置を用いずに分散型電源を連系する場合は,逆潮流を生じさせないこと。

スポットネットワーク受電方式で受電する者が分散型電源を連系する場合

特別高圧の電力系統からスポットネットワーク受電方式で受電する者が分散型電源を連系する場合は,以下を満たすように,異常時に分散型電源を自動的に解列するための装置を施設すること。

a. 次に掲げる異常を保護リレー等により検出し,分散型電源を自動的に解列すること。

  1. 分散型電源の異常又は故障
  2. スポットネットワーク配電線の全回線の電源が喪失した場合における分散型電源の単独運転

b. 分散型電源の解列は,次によること。

  1. 次のいずれかで解列すること。
    1. 分散型電源の出力端に設置する遮断器又はこれと同等の機能を有する装置
    2. 母線連絡用遮断器
    3. プロテクタ遮断器
  2. 逆電力リレー(ネットワークリレーの逆電力リレー機能で代用する場合も含む。)で,全回線において逆電力を検出した場合は,時限をもって分散型電源を解列すること。
  3. 分散型電源を連系する電力系統において事故が発生した場合は,系統側変電所の遮断器開放後に,逆潮流を逆電力リレー(ネットワークリレーの逆電力リレー機能で代用する場合も含む。)で検出することにより事故回線のプロテクタ遮断器を開放し,健全回線との連系は原則として保持して,分散型電源は解列しないこと。

図 スポットネットワーク

図 スポットネットワーク

DER(分散型エネルギー資源)

DER(Distributed Energy Resouce)とは,需要家が所有するエネルギーの供給,消費,需給調整に関連した制御対象機器や運用計画の総称である。

ここでいう機器や計画には,例えば,再生可能エネルギーコージェネレーション(熱電併給)などの分散型電源(DG),需要家が使用する電気自動車や蓄電池,空調機や給湯器などの熱利用機器,およびエネルギー需要を制御する需要応答(DR)などがある。

なお,DER を運用管理する機能や仕組みは,DERMS(Distributed Energy Resources Management System)という。

参考文献

更新履歴

  • 2021年12月27日 新規作成
  • 2022年2月26日 参考文献に「令和2年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問3」「令和元年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問6」を追加
  • 2022年2月27日 参考文献に「平成30年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問4」「平成29年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問3」を追加
  • 2022年3月6日 参考文献に「平成27年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問2」を追加
  • 2022年4月23日 参考文献に「平成20年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問7」「平成19年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問3」を追加
  • 2022年5月4日 参考文献に資源エネルギー庁,「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」(令和元年10月7日)を追加
  • 2022年5月14日 参考文献に「平成28年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3」を追加
  • 2022年5月22日 参考文献に「平成23年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問4」を追加
  • 2022年6月4日 参考文献に「用語解説 第135回テーマ:DER(分散型エネルギー資源)」を追加
  • 2022年7月25日 加除修正,スポットネットワークの図を追加
  • 2022年8月11日 参考文献に「平成25年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 法規 問3」を追加
  • 2022年11月13日 参考文献に「平成19年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問4」を追加
  • 2023年8月12日 変圧器逆潮流の経緯を追加,参考文献に「配電用変電所保護リレーシステム技術」を追加
  • 2023年8月27日 参考文献に「令和5年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問7」を追加
  • 2023年11月25日 参考文献に「令和5年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問5」を追加
  • 2024年8月13日 参考文献の過去問題にリンクを追加
  • 2024年11月15日 参考文献に「令和6年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問6」を追加
  • 2024年11月16日 参考文献に「令和6年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問5」を追加