目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

変電所に設置する断路器及び接地開閉器

断路器(disconnector)は,主回路の接続変更や母線の区分および機器の点検修理等の場合の切り離しを電路が充電状態のままで行う装置。

断路器は,発変電所内の回路の保守作業を行う際に安全のために作業箇所を電圧のある回路から切り離すことなどに用いられる。

図 断路器(disconnector)

図 断路器(disconnector)

一般的に断路器は,単に電圧が加わっている回路で電流が流れていないときに開閉できるが,変圧器の励磁電流や送電線の充電電流(進み小電流),複母線の場合において甲母線から乙母線に運転を切り替えるときに流れるループ電流などの開閉ならば行うことができる。

電気学会の用語では,次のように定義される。

断路器(disconnector)は,単に充電された電路を開閉分離するために用いられる開閉機器で,負荷電流の開閉をたてまえとしないものである。

接地開閉器は,無電圧の線路や母線部分などの主回路の接地を主たる用途としているが,それ以外に下記のような用途や性能が要求される。

  • ガス接地開閉器の接地端子を大地電位から絶縁し,要求される用途に使用可能なこと。
  • 運転している隣接回線が発生する磁界により流れる電磁誘導電流及び回線間の浮遊容量を通して流れる静電誘導電流の開閉能力を有すること。
  • 主回路が活線状態で,保守員が誤って接地開閉器を投入するような場合に,短絡投入性能を要求されることがある。
  • ケーブル送電線用の接地開閉器の場合,ケーブル残留電荷の放電性能を有すること。

種類と適用の考え方

断路器は使用場所,操作方法などに応じて選定する。

一般に 66 kV 以上では水平一点切り,水平二点切りが多く使用されている。

アルミパイプ母線には,変電所全体の配置設計から垂直一点切りやパンタグラフを使用することもある。

線路引込口の遮断器や,500 kV 変電所の母線連絡用遮断器の前後に設置する断路器には,線路や母線の停止作業時の接地のため接地装置を付属させる。

断路部の数による分類

一点切り断路器(single break disconnector)

その 1 極につき 1 個の断路部をもつ断路器。

二点切り断路器(double break disconnector)

その 1 極につき直列に 2 個の同時に開閉される断路部をもつ断路器。

断路方式による分類

水平切り断路器(horizontal break disconnector)

ブレードがベースに対して平衡に回転動作をなして開閉する断路器。

垂直切り断路器(vertical break disconnector)

ブレードがベースに対して垂直に回転動作をなして開閉する断路器。

パンダグラフ形断路器(pantograph type disconnector)

可動導電部がその関節機構の屈伸運動により開閉する断路器。

275 kV 以上の設備等機器の据え付け面積の縮小化を図る必要のある場合にパンタグラフ形が採用される。

断路器の電流遮断現象

断路器及び発変電所の送電線路側に設置される接地開閉器に関して,どのような回路条件下で発生する電流遮断現象か,また,その電流遮断の特長を説明する。

断路器の進み小電流の遮断

進み小電流は遮断器で回路を遮断した後に発生し,断路器の開閉時には過電圧が発生する原因となる。

GIS(ガス絶縁開閉装置)においては,浮遊静電容量が比較的大きいため,運転電圧の 2 ~ 3 倍程度の急しゅん波サージが発生する場合もあり,この現象に注意する必要がある。

一般に,遮断器(CB)を遮断した後に断路器(DS)を開路する現象に相当する。

CB の両側の DS が対象になり,どちらも DS と CB との間の浮遊容量が負荷となって再点弧するものである。

図 断路器の進み小電流の遮断

図 断路器の進み小電流の遮断
断路器の進み小電流の遮断の特徴
  • 電流は遮断器の進み小電流遮断と比べて非常に小さく,開極後ただちに遮断して,そのときの電圧値が負荷側に直流電圧として残留する。
  • 極間にはこの残留電圧と電源側電圧との差が加わり,開極速度の遅い断路器は,極間が十分な絶縁距離に達するまで,再点弧と消弧を繰り返す。
  • 再点弧すると高周波の過渡電圧を発生し,遮断直前のもの(最大で常規対地電圧の 2 ~ 2.8 倍)が最も大きくなる。

断路器の母線ループの遮断

ループ電流は複母線の変電所で甲母線から乙母線へ運転が切り替えられるときなどに発生し,当該回線の定格電流の 80 %程度 (最大 4 000 A)の電流を開閉できる能力が要求される。

複母線の母線切換えに伴うループ電流開閉に伴い,大電流のアークが発生し継続するものである。

SF6 ガス断路器の母線ループの遮断の特徴
  • 大電流のアークが継続するため,SF6 ガス分解生成物が多い。
  • 分解生成物によるガス絶縁性能が低下し,機器の性能を劣化させる。
  • 大電流遮断により,接触子の消耗が大きい。

接地開閉器の電磁誘導電流の遮断

接地開閉器は無電圧の線路や母線部分などの主回路の接地を主目的としているが,2 回線以上併架した架空送電線路の接地開閉器には,誘導電流開閉性能を要求される場合がある。

架空送電線路の運転を停止するとき,遮断器を開いた後,線路両端の接地開閉器を閉路する。

その結果,運転されている隣接回線の磁束により,線路,両端の接地開閉器および大地を通して電磁誘導電流が流れる。

運転再開時に接地開閉器を開くが,先行して開く接地開閉器の現象が電磁誘導電流遮断である。

接地開閉器の電磁誘導電流の遮断の特徴
  • 電磁誘導電流の大きさは,隣接する運転中の回線に流れる電流の 10 % 以下である。
  • 電磁誘導回復電圧は,数百 V/km 以下となる。

接地開閉器の静電誘導電流の遮断

電磁誘導電流を先行遮断した後,回線間の浮遊容量を通して,残った接地開閉器に進み小電流が流れる。

この電流を接地開閉器が遮断する現象を静電誘導電流遮断という。

接地開閉器の静電誘導電流の遮断の特徴
  • 遮断後の極間には,回線間および当該回線の対地容量で分圧された回復電圧が加わる。
  • 遮断電流は数十 A 以下,回復電圧は数十 kV 程度である。

接地開閉器の責務

近年,送電容量や併架回線の増大に伴い,接地開閉器の責務は一層厳しくなっており,電流開閉性能に関して言えば,SF6 ガス機器の場合,次のような配慮が必要となる。

  • パッファ方式の採用などによる消弧能力強化
  • 耐アーク材適用による接点部の強化
  • 開極速度増大による遮断能力の強化

他の責務として,巻線形計器用変圧器も放電コイルも接続されていない地中送電線路を接地開閉器で直接接地する場合,残留電荷の急激な移動により,ケーブル防食層で絶縁破壊するおそれがある。

このため,サージ抑制用として,投入抵抗付き接地開閉器が採用される場合がある。この場合,ケーブルの静電容量などの条件に対し,充電電圧及び放電回数を考慮した熱容量の設定が必要となる。

現在では巻線形計器用変圧器による残留電荷の放電が有効であり,標準的に適用されている場合が多い。

仕様の決定

定格電圧,定格短時間電流,定格電流の値並びにその組み合わせの標準は JEC-2310 (2003)「交流断路器」に定められているので,このなかから選定する。

従来の操作方式は圧縮空気操作のものがあったが,遮断器と同様にエアレス化が志向され,最近では,電動操作や電動ばね操作が一般的になってきている。

断路器は定格電圧のもとで,単に充電された電路を開閉するために用いられるほか,ループ電流や小電流の電流開閉性能を要求される場合がある。

誤操作による事故防止

断路器や接地開閉器には,誤操作による事故防止のため,一般的にインタロック(緊錠装置)が設けられており,例えば負荷電流を開閉できる位置にある断路器では,関係する遮断器,接地開閉器が全て開路しているときのみ開閉操作が可能である。

参考文献

  • 電気事業講座 電気事業辞典
  • 平成29年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5「変電所に設置する断路器及び接地開閉器」
  • 平成21年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3「高電圧変電所に設置する断路器と接地開閉器」
  • 平成14年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問3「断路器及び接地開閉器」
  • 平成10年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3「接地開閉器の動作責務」

www.iee.jp

更新履歴

  • 2021年12月13日 新規作成
  • 2021年12月15日 各種断路器の説明を追加
  • 2022年2月22日 参考文献に「平成14年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問3」を追加
  • 2022年3月20日 参考文献に「電気事業講座 電気事業辞典」を追加
  • 2022年5月14日 タイトルを「断路器」から「変電所に設置する断路器及び接地開閉器」に変更,参考文献に「平成29年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5」
  • 2022年5月22日 参考文献に「平成21年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3」を追加
  • 2022年6月5日 参考文献に「平成10年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3」を追加