目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

架空送電線路

架空送電線路は発電所で発生した電力を効率よく,安定に,しかも経済的に需要地域まで輸送する役割を担っている。

架空送電線路に使用される電線

架空送電線路に使用する電線の電気的性能としては導電率が高いものが望ましく,機械的性能としては引張強さが大きいものが望ましい。

一般に引張強さは不純物の含有量が増加するにしたがって増大する傾向にあるが,導電率は逆に減少する。

架空送電用の電線として,鋼より線の周囲にアルミ線をより合わせた鋼心アルミより線が広く使われている。

アルミ線の導電率は銅線の約 60 [%] のため,単位長さ当たりの抵抗値を同じにするには等価的に銅線の約 1.3 倍の直径が必要であるが,単位体積当たりの重量が約 3 分の 1 のため,それだけ太くなっても同等の銅線よりまだ軽く,しかも補強の鋼線による引張強さが大きいので,支持物径間を銅線の場合より長くとれる。

電線のたるみ

電線のたるみは,電線の材質が一様でたわみ性があるものとみなせば,理論的にカテナリ曲線となる。

電線支持点に高低差がない径間の場合,図において点 O を原点とするカテナリ曲線は次式であらわされる。

$\displaystyle y = a\cosh{\frac{x}{a}} = a(1 + \frac{x^2}{2!a^2} + \frac{x^4}{4!a^4} + \frac{x^6}{6!a^6} + \cdot\cdot\cdot) $

実際の送電線路では,たるみ $D$ [m] が径間 $S$ [m] に比べて十分に小さいため,放物線とみなして $\displaystyle y = a + \frac{x^2}{2a}$ を活用する。

ここに $a$ は定数で,曲線の最低点 N の $y$ 座標を示す。

$a$ は,単位長あたりの電線重量を $W_\text{c}$ [kg/m],電線の水平張力 $T$ [kg] を用いて $\displaystyle \frac{T}{W_\text{c}}$ と表せる。

原点を O から点 N に移せば,$\displaystyle y = \frac{x^2}{2a}$ となり,$\displaystyle x = \frac{S}{2}$,$\displaystyle a = \frac{T}{W_\text{c}}$ を代入すると,たるみ $\displaystyle D = \frac{W_\text{c}S^2}{8T}$ となる。

図において,電線の支持点 A,B における張力 $T_\text{A}$,$T_\text{B}$ は,最低点における水平張力 $T$ と $W_\text{c}$ と $D$ を用いて,$T_\text{A} = T_\text{B} = T + W_\text{c}D$ であり,電線の各点の張力を全て水平張力と同一と設計しても大差はない。

図 電線のたるみ

図 電線のたるみ
電線のたるみを計算する際に用いられる弾性係数

電線のたるみを計算する際に用いられる弾性係数 [Pa] は,硬アルミ線と鋼心線の特性を考慮し,$\displaystyle \frac{E_\text{a}A_\text{a}+E_\text{s}A_\text{s}}{A_\text{a}+A_\text{s}}$ と計算される。

ただし,硬アルミ線と鋼心線の弾性係数 [Pa] をそれぞれ $E_\text{a}$,$E_\text{s}$ とし,断面積 [mm2] をそれぞれ $A_\text{a}$,$A_\text{s}$ とする。

図 電線のたるみ

図 電線のたるみ

電線荷重

電線にかかる荷重は,夏季においては送電線の自重によるものと風圧荷重を考慮する。

冬季においてはこれらに加えて氷雪荷重,氷雪が付着したときの風圧荷重を考慮する。

電線の伸び

電線は温度によって伸びるため,たるみが大きくなる夏季において最低地上高を確保する必要がある。

夏季におけるたるみを小さく選びすぎると冬季の張力が大きくなって断線の恐れが生じる。

架空送電線路に使用される支持物,がいし,架空地線

架空送電線路は電線のほか,支持物,がいし,架空地線などで構成されている。

がいしは支持物と電線をつなぎ,同時に電線を大地から絶縁する役割をしている。

架空地線は架空送電線を直撃雷から守る目的で設置されている。

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特別高圧架空送電線路の保守業務

送電線路の保守の目的は,① 設備の維持・管理と事故の未然防止,② 迅速な事故復旧,③ 各種障害の排除などである。この目的を達成するために必要な業務は,大別すると,巡視,点検,保修作業,事故処理等に大別できる。

「巡視」は,送電線路付近の樹木・家屋など建造物等の接近,地形の変化及び他の工作物の交さ接近状況や設備の外観を見回り,事故の未然防止を図るとともに,設備の保修作業に必要な資料を収集する業務である。

「点検」は,送電線路が主に支持物,電線,がいし,その他の附属品等により形成されていることから,巡視では分からない異常の有無を巡視より一歩進んで,これらが健全な状態であるかどうかを,支持物の傾斜・腐食,ボルト・ナットのゆるみ,がいしの絶縁の劣化などを目視及び計測器等により詳細に調査する業務である。

参考文献

更新履歴

  • 2022年1月10日 新規作成
  • 2022年4月22日 参考文献に「平成22年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問7」を追加
  • 2022年5月21日 参考文献に「平成25年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3」を追加
  • 2022年10月16日 参考文献に「平成28年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問3」を追加
  • 2022年10月19日 参考文献に「平成20年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問4」を追加
  • 2023年9月2日 参考文献に「令和5年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6」を追加