目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

地中配電線路

高圧地中配電系統には,配電用変圧器の引出口,過密都市部,電車線路や幹線道路横断箇所など架空電線路では設備が輻輳し,施設することが技術的に困難な箇所に施設するものや,都市機能,景観上の観点から施設するものなどがある。

その系統構成はケーブルの事故復旧に長時間を要することから,分岐系統であっても末端を他系統と連系したり,あるいは特に重要な部分の系統を二重化する方式となっている。

そのため,ケーブル系統のどこで事故が発生しても切り替えにより,早期に停電が解消できる。

現在,地中配電線路に用いられるケーブルは CVT ケーブルが主流であり,このケーブルは絶縁層に架橋ポリエチレンを用いており耐熱性や作業性に優れている一方,水トリーという絶縁劣化現象があることが昭和 40 年代中頃から明らかになり,様々な研究が行われた。

現在では,定期的に劣化診断を行うなど運用面での対応とともに,水トリーを抑えるために絶縁層内の含水率や不純物を低減し,絶縁層と半導電層との界面を滑らかにするなど,製造過程でも対応を行っている。

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高圧地中配電系統の長所と短所

長所として,同一ルートにケーブルを多回線施設することができること,暴風など気象条件の影響を受けにくく,また,クレーンや飛来物による接触がなく供給信頼度が高いことなどがある反面,架空電線路に比べ建設費が高いこと,事故復旧に時間を要すること,対地静電容量の増加により深夜などに電圧上昇が発生するおそれがあることなどの短所がある。

地中配電系統のメリット

  • 都市の美観が向上する。
  • 同一ルートにケーブルを多数条施設可能なため,都市部など高需要密度地域への供給が可能となる。
  • 暴風雨,雷,火災などの災害に対して信頼性が向上する。
  • 設備の安全性が向上する。

地中配電系統のデメリット

  • 地中配電の建設費は高額である。
  • 新設や増設など需要変動への即応が困難である。
  • 地中配電の場合,架空配電に比べ,事故復旧・改修に時間がかかる。

配電地中管路の工法

配電地中管路の推進工法は,立て杭から先端に刃口を取り付けた管をジャッキの力で地中に押し込み,その保護のもとで土砂を掘削して立て杭から搬出し,この作業を繰り返して地中に管路を布設する方式である。

この方式では,鉄道の軌道下,幹線道路,小河川の河底横断などで,地表面から掘削が困難な場合でも管路布設が可能であるとともに,開削工法に比べて工事に伴う騒音や振動が小さく,また,作業スペースが少ないなどの利点を有している。

しかし,この工法は地中管路工事の他の工法と比べて施工延長が短く経済性が劣るとともに,蛇行が生じやすく,施工精度が劣り,曲線施工が困難であるなどの面で不利である。

地中配電線路のケーブル布設方法

地中配電線路のケーブルの敷設方法には,一般に直接埋設式,管路式及び暗きょ式がある。

直接埋設式のケーブル布設方法

直接埋設式は埋設条数の少ない本線部分や引込線部分で用いられ,土中に防護物を並べケーブルを引き入れてから埋設する方式で,ケーブル取り替えの場合には再掘削が必要となる。

管路式のケーブル布設方法

管路式は,交通量や舗装などの関係から再掘削が困難な場所に求められる方式で,地中箱などの間を複数条のパイプで結んだものであり,ケーブルの引入れ,引抜き,接続などのケーブル工事に伴う再掘削は不要である。

暗きょ式のケーブル布設方法

暗きょ式はあらかじめトンネル状の構造物を作っておき,その側壁に設けた受棚上にケーブルを敷設する方式である。

特に幹線道路やビル街などでは道路の反復掘削防止や地下空間の有効利用などを目的に,電力,通信,ガス,水道,下水などを一括して収納する共同溝が用いられる。

このうち配電線等のように需要家供給を目的とした設備だけ収容するものは供給管共同溝と呼ばれ,主として歩道部分に設けられる。

一方,地中設備の建設費用は架空設備に比べて格段に高額なものになることから,現在ではより経済的で施工しやすい施設方式が広く採用されている。

例えば,CAB(Cable Box)は共同溝の一種であり,主として歩道の下にふた掛け式の大形 U 字構造物を設置してこの中に電力・通信・その他ケーブルを布設する方式である。

ケーブルの工事や維持補修はふたの開閉によって行われ,そのために必要な最小限の作業スペースが確保されている。

機器の設置方法

変圧器や開閉器などの機器の設置方法としては,地上設置形と地下設置形がある。

地下設置形の場合は機器への自動車衝突回避や景観面で有利であるが,熱放散の面から機器が大きくなるばかりでなく,防水性,防食性等の設備設計・施工面に留意する必要がある。

参考文献

更新履歴

  • 2021年12月30日 新規作成
  • 2022年5月14日 参考文献に「平成29年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問4」を追加
  • 2022年5月21日 参考文献に「平成26年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問4」を追加
  • 2022年6月5日 参考文献に「平成11年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6」を追加
  • 2022年10月15日 参考文献に「平成30年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問4」を追加