電力部門の CO2 排出量の大半を占めるのが火力発電所からの CO2 排出であり,2050 年までにカーボンニュートラルを実現するためには,火力発電所からの CO2 排出量を削減していく必要がある。
火力発電は CO2 を多く排出するが,一方で,太陽光発電や風力発電など出力が変動する再生可能エネルギーの導入拡大を支える機能も持っている。
再生可能エネルギーの発電電力量に占める割合
総合エネルギー統計によれば,令和2年度(2020年度)の日本の総発電電力量の内訳は次表のとおり。水力,太陽光,風力,地熱,バイオマスの比率は 19.8 % である。よって,再生可能エネルギーの発電電力量に占める割合は約 2 割である。
| 電源種別 | 発電電力量 [億kWh] | 比率 [%] |
|---|---|---|
| 原子力 | 388 | 3.9 |
| 石炭 | 3 102 | 31.0 |
| 天然ガス | 3 899 | 39.0 |
| 石油等 | 636 | 6.4 |
| 水力 | 784 | 7.8 |
| 太陽光 | 791 | 7.9 |
| 風力 | 90 | 0.9 |
| 地熱 | 30 | 0.3 |
| バイオマス | 288 | 2.9 |
令和2年度(2020年度)の日本の総発電電力量の比率を下図に示す。

太陽光発電や風力発電の諸課題
火力発電所が再生可能エネルギーの導入拡大を支える機能を持つのは,太陽光発電や風力発電には,以下の諸課題があるためである。
- 天候等の自然条件によって出力が変動する
- 日射量や風況などの適地と電力の需要地が必ずしも一致しておらず,送電網の整備が必要であること
- 災害等により電源が脱落した際の系統の安定性を保つ機能(慣性力等)を有していないこと*1
- 自然制約(太陽光発電に適した併置や風力発電に適した遠浅の海などが我が国には少ないこと)や社会的制約(農業や漁業等の他の利用との調和や地域との調整が必要であること)がある中での案件形成
- 以上の諸課題を克服するために大規模な投資が必要であり,適地不足により今後コストが上昇するおそれがある
自然変動再エネ導入拡大とそれに応じた運用上の課題
国際エネルギー機関 (IEA) によれば,自然変動再エネ導入比率や電力システムの状況等に相関して 6 つの運用上のフェーズが存在する。
- フェーズ 1 : ローカル系統での調整が必要となる。
- フェーズ 2 : 系統混雑が現れ始め,需給と変動再エネのバランスが必要となる。
- フェーズ 3 : 出力制御が起こり,柔軟な調整や大規模なシステム変更が必要となる。
- フェーズ 4 : 変動再エネを大前提とした系統と発電機能が必要となる。
- フェーズ 5 : 変動再エネの供給が頻繁に需要を上回り,交通や熱の電化による柔軟性確保が必要になる。
- フェーズ 6 : 変動再エネの余剰・不足がより長い時間軸で発生し,合成燃料や水素等による季節貯蔵が必要になる。
火力発電所の重要な役割
太陽光発電や風力発電の諸課題に対して,火力発電所は以下のような重要な役割を担っている。
- 安定して大きな供給力を持つ
- 電力需要と,太陽光発電や風力発電等により変動する電力供給を一致させる上での重要な調整力(需要に合わせて供給量を調整できること)である
- 系統で突発的なトラブルが生じた場合でも,周波数を維持し,ブラックアウトを防ぐ
火力発電が担ってきた役割の代替
今後,脱炭素電源,特に再生可能エネルギーを主力電源化していく中で,火力発電が担ってきた役割を,水素・アンモニア等の CO2 フリー電源,CO2 の貯留・利用(CCUS*2),蓄電池等の技術を組み合わせながら代替していく必要がある。
非効率石炭火力発電のフェードアウト
2020年7月,梶山経済産業大臣は,第 5 次エネルギー基本計画において明記された非効率石炭火力のフェードアウトについて,より実効性のある新たな仕組みを導入するべく,検討を開始することを表明し,総合資源エネルギー調査会の電力・ガス基本政策小委員会を中心に検討が行われている。
参考文献
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第1部 第2章 第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組 │ 令和2年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2021) HTML版 │ 資源エネルギー庁
- 第55回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料3「「再エネ主力電源化」に向けた技術的課題及びその対応策の検討について」(2020年10月27日,調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 事務局)
- 経済産業省 資源エネルギー庁,「総合エネルギー統計」
- 経済産業省 資源エネルギー庁,「グリッドコードの体系及び検討の進め方について」,2019年3月
- 令和4年度 下期 第三種 電気主任技術者試験 電力 問1「水力発電」
- 令和4年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問5「再生可能エネルギー」
更新履歴
- 2022年2月23日 新規作成
- 2022年11月20日 参考文献に「総合エネルギー統計」,「令和4年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問5」を追加
- 2025年8月9日 自然変動再エネ導入拡大とそれに応じた運用上の課題を追加
- 2026年3月29日 参考文献に「令和4年度 下期 第三種 電気主任技術者試験 電力 問1」を追加
*1:火力発電所では同期発電機が用いられることが多いが,同期電源は自ら回転エネルギーを持ち,いわゆる慣性力・同期化力を維持する。一方,太陽光や風力発電ではインバータ電源が用いられることが多く,インバータ電源(非同期電源)は,慣性力・同期化力の能力を持たない。慣性力が低下すると,電源脱落時の周波数低下スピードが速くなり,上げ調整力や UFR 等の負荷制限が間に合わず,再生可能エネルギー等の分散電源が解列し,周波数がさらに大きく低下した結果,発電機が安定運転を維持できず連鎖解列し,系統崩壊(ブラックアウト)に至る可能性がある。
*2:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage の略。