タービン発電機(turbine generation)は,蒸気タービンまたはガスタービンにより駆動される発電機をいい,一般に横置型で高速回転するので,通常は円筒形回転界磁形同期発電機をいう。
大容量クロスコンパウンド機の二次側,あるいは原子力発電では 4 極機が用いられることが多いが,その他のものはほとんど 2 極機である。
タービン発電機は励磁方式,冷却方式によって種々に分類できる。
- タービン発電機の励磁方式
- タービン発電機の冷却方式
- タービン発電機の発電機容量と発電機電圧
- 原子力発電所のタービンとタービン発電機の特徴
- タービン発電機の起動
- タービン発電機の進相運転
- タービン発電機の不平衡負荷運転
- 送電系統における再閉路によるタービン発電機への影響
- タービン発電機のモータリング
- 参考文献
- 更新履歴
タービン発電機の励磁方式
タービン発電機の励磁方式には大きく分けて直流励磁方式,交流励磁方式および静止形励磁方式の三つがある。
直流励磁方式
直接励磁方式は,励磁機の駆動方法により直結,直結減速,別置に分類される。
交流励磁方式
交流励磁機方式は,発電機の界磁巻線へ直流電流を供給する励磁電源供給機器として,交流の励磁用同期発電機(交流励磁機)を使用するものである。
交流励磁機の励磁電源には他励方式と分巻方式があるが,他励方式では,主発電機,交流励磁機と同一軸上に設置された副励磁機の出力を整流し,交流励磁機の励磁電源に使用する。
分巻方式とは,交流励磁機の出力を自身の界磁電流の電源として使用する方式である。
主発電機と同一軸上に回転電機子形発電機と回転整流器を取り付け,スリップリングを設けずに直流発電機の励磁電源に使用する方式をブラシレス励磁方式という。
ブラシレス励磁方式
交流発電機とともに整流器も発電機の回転部に内蔵するものである。
ブラシがないため,ブラシの点検,取替が不要,整流子の保守が不要,励磁機用の開閉装置が不要などのメリットがある。
一方で,整流器が大きい遠心力を受けるため,これに対する対策が必要である。
静止形励磁方式
静止形励磁方式は,励磁用電源供給機器として励磁用変圧器または励磁用変流器を使用するもので,サイリスタを用いた整流器で点弧角を調整して直流出力電圧を変化させて,発電機の界磁電流を制御する。
サイリスタ励磁方式には,サイリスタのみで構成される均一ブリッジ形と,サイリスタとダイオードとを組み合わせて構成される混合ブリッジ形がある。
サイリスタ励磁方式
主発電機の出力の一部をサイリスタを用いた整流器で整流して直流を得る,静止形励磁方式の一種である。
回転機の慣性が入らないため速応性があり,可動部や接触部がないので信頼性が高く保守性もよい。
タービン発電機の冷却方式
タービン発電機の固定子の冷却方式としては,いわゆる普通(間接ともいう)水素冷却,固定子コイル内に通路を設けて水素を通す直接水素冷却,さらにその通路内に油または純水を通す直接液体冷却がある。
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タービン発電機の回転子の冷却方式にも普通水素冷却と直接水素冷却がある。
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タービン発電機の発電機容量と発電機電圧
発電機容量
タービン発電機の発電機容量は,材料や冷却方式の進歩等により 2 極機で 80 万 kW 程度,4 極機で 130 万 kW 程度の大容量のものが制作可能となった。
発電機電圧
タービン発電機の発電機電圧は,送配電電圧,受電電圧等で異なるが,3.3 ~ 25 kV 程度であり,定格力率は系統構成,負荷状態で定められ,一般に 0.8 ~ 0.9 のものが多い。
原子力発電所のタービンとタービン発電機の特徴
原子力用タービンは,原子炉から取り出す蒸気条件が火力用ボイラとは異なるため,同一出力の火力用タービンに比べて,蒸気消費量が多くなる。
また,飽和蒸気を使用するため,タービン翼の侵食防止対策と併せて,高圧タービンと低圧タービンの連絡管の途中に湿分分離器が設けられている。
我が国では商用の原子炉として二つの炉形が使われており,沸騰水形の炉形では発生した蒸気を直接タービンで使用し,もう一方の炉形では蒸気発生器からの蒸気をタービンに使用する。
原子力用タービン発電機は回転速度が 1 500 又は 1 800 rpm の 4 極機を採用しており,同一容量の火力用 2 極機に比べ電機子巻線漏れリアクタンスや界磁巻線漏れリアクタンスが大きくなるため,過渡リアクタンスが増加する。
タービン発電機の起動
タービン発電機の起動については,別ページにて解説する
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タービン発電機の進相運転
深夜や軽負荷時に過剰となる無効電力をタービン発電機で吸収させ,系統電圧の上昇を防止するために進相運転を行うと,回転子と固定子間のギャップ磁束が減少し,磁束が固定子端部に通りやすく渦電流が増え過熱するため,回転子保持環を非磁性体にしたり,漏れ磁束に対する磁気抵抗を高める対策が施されている。
進相運転時の留意点と発電所における対策
発電機の進相運転(低励磁運転)を行うと,定態安定度の低下,補機電圧の低下,タービン発電機の固定子鉄心端部の加熱があるので,あらかじめ運転可能範囲(キャパビリティカーブ)を十分検討しておく必要がある。
留意点
- 低励磁運転による進相運転を行う場合,発電機内部電圧が低くなることにより,系統の定態安定度が低下するため,安定度を維持すること。
- 発電機の励磁電流が少ないため,漏れ磁束の増加による固定子端部の過熱現象が生ずることから,十分安全範囲を確かめたうえで進相運転を行う。
- 所内電圧の低下に対する補機類などの運転を,十分安全範囲を確かめたうえで進相運転を行う。
発電所における対策
- 即応性の AVR や不足励磁制限装置の使用によって安定度を維持している。
- 所内電圧の低下に対する対策としては,所内変圧器のタップ調整などで対応している。
タービン発電機の不平衡負荷運転
タービン発電機に接続される負荷や電気回路が三相非対称な状態で運転することを不平衡負荷運転という。
このとき,電機子電流には逆相電流が含まれ,正相電流による回転磁界と逆方向の回転磁界を生じ,固定子の電機子巻線には奇数周波数,回転子の界磁巻線には偶数周波数の高調波が発生する。
これによって電機子巻線の局部過熱や,回転子ではスロットのくさびと保持環に渦電流による過熱が発生する。
そこで,回転子に制動巻線を設けたり,くさびに特殊耐熱材を用いる等の対策が行われている。
回転子に発生する現象
タービン発電機に不平衡負荷がかかると,固定子に逆相電流が流れ,このために回転子磁界と反対方向に同じ速度で回転する磁界が発生し,回転子表面に系統周波数の 2 倍の周波数の制動電流が流れる。
この電流は主として回転子歯部の表面やくさびを流れ,コイル保持環を通って還流する。
機械的な影響
- 固定子巻線の受ける電磁力
- 発電機軸系が受けるねじり応力
- 固定子各部の受ける振動
- タービン翼の振動
電気的な影響
- 固定子表面の過熱
- 負荷変動と速度上昇
逆相電流の制限値
逆相電流の制限値は,回転子の過渡温度上昇 $T$(平均値)により定められており,
\[ T=\int^{t}_{0}I_{2}^{2} \text{d}t \]
によって求められる。
ただし,$I_2$:逆相電流(単位法),$t$:時間(秒)である。この値を水車発電機では約 40,タービン発電機では約 30(直接冷却では 10)以内に抑えることが必要である。
なお,この時間が長いとき,逆相分として許容できる限度は水車発電機で 15 ~ 20 [%],タービン発電機で 6 ~ 8 [%] 以下とされている。
送電系統における再閉路によるタービン発電機への影響
送電系統において再閉路が行われた場合,火力発電所のタービン発電機には,短絡などによる送電線故障時の過渡トルクに,再閉路時の過渡トルクが重畳されて,ねじり振動が発生する。
特に三相高速再閉路の場合は,過大な過渡トルクが発生するため,事故点,事故遮断までの時間,及びその後の再閉路までの時間によってはタービン発電機の寿命に影響を及ぼす場合がある。
再閉路によるタービン発電機への影響は,過渡トルクのほかにも,過渡電流による発電機固定子巻線への電磁力の影響,逆相電流による発電機回転子表面の温度上昇があるが,これらの影響度合いは,再閉路方式,系統定数,発電機及びタービンの定数に関係してくるので,それぞれの場合について,事前に十分検討しておく必要がある。
タービン発電機のモータリング
タービン発電機が系統に並列して運転しているときに,何らかの異常によりタービンへの蒸気流量が,タービンの無負荷回転速度を保つのに必要な値以下になると,発電機は系統に接続したまま同期電動機として運転される。
この状態をモータリング(電動機化)という。モータリングは発電機に対する制限はないが,タービンに対しては低圧タービン排気部の温度が過度に上昇することを防止するために時間制限が設けられる。
そのため,モータリングを自動的に検出する必要があり,その検出方法としては,
- 蒸気弁の開度により検出する方法
- 逆電力継電器
などがある。
参考文献
- 電気事業講座 電気事業辞典
- 令和2年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2「原子力発電所のタービンとタービン発電機の特徴」
- 平成30年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2「タービン発電機を進相運転及び不平衡負荷運転した場合の現象と対策」
- 平成30年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2「タービン発電機の励磁方式」
- 平成24年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1「送電系統における再閉路による火力発電所のタービン発電機への影響」
- 平成22年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1「火力発電所タービン発電機の進相運転」
- 平成21年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1「タービン発電機に逆相電流が流れた場合」
- 平成20年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1「タービン発電機の励磁方式」
- 平成16年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2「タービン発電機の不平衡負荷運転」
- 平成13年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1「タービン発電機のモータリング」
- 平成13年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1「タービン発電機の励磁方式」
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更新履歴
- 2021年11月13日 新規作成
- 2021年12月19日 タービン発電機の不平衡負荷運転,参考文献に「平成16年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2」を追加
- 2022年3月20日 参考文献に「電気事業講座 電気事業辞典」を追加
- 2022年5月8日 参考文献に「令和2年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2」を追加
- 2022年5月14日 参考文献に「平成30年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2」を追加
- 2022年5月21日 参考文献に「平成24年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1」を追加
- 2022年5月28日 参考文献に「平成20年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1」を追加
- 2022年6月4日 参考文献に「平成13年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1」を追加
- 2022年10月19日 参考文献に「平成22年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1」を追加
- 2022年10月23日 参考文献に「平成13年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1」を追加
- 2022年11月12日 参考文献に「平成21年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1」を追加
- 2022年12月19日 タービン発電機に採用される固定子巻線水冷却方式のリンクを追加