目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

容量性負荷における同期発電機の特性

無負荷の長距離送電線に同期発電機を無励磁で接続しても,送電線の線間及び対地静電容量の影響によってこれらを充電する電機子電流が流れ,これによって発電機の端子電圧が高められ,さらに電流が増すという過程を繰り返して,端子電圧が著しく増大することがある。

このときの同期発電機の電機子電流 $I_\text{a}$ に対する端子電圧 $V$ は図の曲線 O'a のような飽和特性であるとする。

同期発電機に上述の静電容量に相当する 1 相当たりのキャパシタンス C の容量性負荷を接続した場合,その電圧電流特性を直線 Ob で表し,その傾きを $\tan\delta$ とする。

発電機には残留磁気による誘導起電力 OO' を生じているから,これによって進相の電機子電流が流れる。

この電流による電機子反作用は増磁作用となり端子電圧を上昇させ,ある電機子電流 $I_\text{a}$ に対して飽和曲線 O'a と直線 Ob の交点 P に達し,この点で安定し運転を持続する。

このような現象を同期発電機の自己励磁といい,点 P を電圧確立点という。

点 P の電圧はキャパシタンス C の大きさによって上下する。

C が大きく,傾き $\tan\delta$ が小さい場合,点 P の電圧が高くなる。

その結果,点 P の電圧が発電機の定格電圧より非常に高くなる場合には,機器の絶縁を脅かすことになる。

これを防ぐためには,その交点の電圧が同期発電機の定格電圧よりも低いことが必要である。

図 同期発電機の飽和特性

図 同期発電機の飽和特性

同期発電機の自己励磁現象

自己励磁現象の概要

同期発電機に線路充電電流(進相電流)が流れると,電機子反作用は増磁作用となって,同期機の電圧を上昇させ,機器の絶縁を脅かすことがある。

すなわち,発電機の磁気回路の残留磁束によってわずかな電圧が誘導されて,進み電流が流れ,これが磁化作用によってますます誘導電圧,したがって端子電圧を上昇させ,電圧をある値まで確立(buid up)して,自己励磁現象(self-excitation)が起こる。

自己励磁現象によって発生する発電機端子電圧

残留磁気による電圧が進み電流を生じさせ,この電流がさらに端子電圧を高めて進み電流を増加させ,端子電圧はある極限値に達して安定する。

自己励磁現象の起こしにくさ

大容量の水力発電機である。水力発電機の自己容量ベースの同期リアクタンスは火力発電機に比べて小さく,また,容量が大きいほど系統からみた同期リアクタンスが小さくなる。そのため,最大充電容量も大きくなり最も自己励磁現象を起こしにくい。

理由詳細

発電機が自己励磁現象を起こすことなく送電線を充電できる最大充電容量 $Q$ は,次式より求められる。

\[ Q = \frac{v^2}{x_\text{d}} \]

ここで,$v$ は充電電圧,$x_\text{d}$ は同期リアクタンス(不飽和値)である。

水力発電機の自己容量ベースの同期リアクタンスは火力発電機に比べて小さくなる。

また,容量が大きいほど系統からみた同期リアクタンスが小さくなる。

そのため最大充電容量が大きくなり最も自己励磁現象を起こしにくい。

 

送電線路の試充電における自己励磁による異常現象対策

送電線路の試充電において,自己励磁による異常現象を起こさない方策は,以下のとおり。

  • 短絡比の大きい発電機を使用する。
  • 発電機を2台以上母線に接続する。これにより,各発電機は容量と短絡比との積に比例して充電電流を分担するので安全に充電できる。ただしこの場合,界磁電流が小さいため同期化力が小さく並行運転に困難を伴う場合がある。
  • 受電端に同期調相機を接続して,同期調相機を低励磁運転して送電線から遅れ電流をとらせ,充電電流を中和減少させる。
  • 受電端に並列リアクトルや変圧器を接続する。これにより,送電線路の静電容量を補償し,進み電流による自己励磁を減少できる。

参考文献

更新履歴

  • 2022年7月4日 新規作成
  • 2022年10月22日 参考文献に「平成14年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1」を追加
  • 2022年11月12日 参考文献に「平成22年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1」を追加