目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

電線の許容電流

電線に電流を通じると,抵抗による発熱のため電流温度は周囲温度より高くなる。

電線の温度がある限度以上に高くなると,電線の諸性能,たとえば引張強さは,電線が焼きなまされて低下する。

そこで,電線の性能に悪影響を及ぼさないように一定限度の温度(最高許容温度 (maximum allowable temperature) という)を超えて電流を流してはならない。

このときの電流を許容電流 (allowable current) または安全電流 (safety current) という。

最高許容温度と許容電流

硬銅より線 (HDCC : Hard Drawn Copper Cable) や鋼心アルミより線 (ACSR : Aluminium Cable Steel Reinforced) などの最高許容温度は,短時間では 100 ℃ としているが,長時間連続使用すると,電線の引張強さなどが幾分低下するし,電線の接続箇所の劣化なども考慮に入れて,標準の最高許容温度としては 90 ℃ が推奨されている。

そのときの許容電流を長時間許容電流 (long-time allowable current) といい,故障時そのほかの 30 分から 1 時間程度使用のときは 100 ℃ としてよく,これを短時間許容電流 (short-time allowable current) という。

鋼心耐熱アルミ合金より線 (TACSR : Thermo resistance ACSR) では耐熱性に富み,長時間連続使用には 130 ~ 150 ℃,短時間使用には 150 ~ 180 ℃ が用いられるので,許容電流も一般電線のときの 40 ~ 50 ℃ 増しとなる。

許容電流は,電線の材質,構造,表面の状況,周囲の温度,日射の状態,風雨などにより著しく異なる。

架空送電線の電流容量決定手法

架空送電線の電流容量は,電線の対流による発熱および日射からの吸熱と電線からの放熱が平衡するとして求めた電線温度が,電線材料が加熱されたときの金属組織変化,あるいは軟化程度から許容される温度となるときの電流で決定している。

参考文献

  • 電気学会大学講座 送配電工学[改訂版]
  • 確率論的電流容量決定手法調査専門委員会,「架空送電線の電流容量」,電気学会技術報告 第660号,1997年12月
  • "Thermal behaviour of oberhead conductors", CIGRE Study Committee 22 - Working Group 12 (2002-August)