目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

系統用蓄電池

2024年,送電線と直結した系統用蓄電池で電気を売買する事業が広がっている。

蓄電池に電気を貯め,必要に応じて放電することで,電力の安定供給,再生可能エネルギーの導入拡大につながると期待されている。

系統用蓄電池とは

電気を蓄える仕組みは家庭や会社に置く蓄電池と基本的には同じで,大型のものが多い。

電力系統に接続される大型の蓄電池を系統用蓄電池という。

系統用蓄電池のメリット

系統用蓄電池のメリットは,大きく 2 つある。

調整力としての系統用蓄電池

系統用蓄電池は,送電線を流れる電力を瞬時に調整する機能を持つ。

現状では,主に火力発電所の運転によって伝量を調整していたが,蓄電池に置き換えることで,火力発電所で使用する化石燃料を減らすことができる。

再生可能エネルギー導入拡大

現状,太陽光発電が増えすぎたとき,電力会社が受け入れを止める「出力制御」が,しばしば行われている。

再生可能エネルギー電源の近くに蓄電池を設置することで,出力制御を抑制できる。

具体的には,電気を作り過ぎたときには系統用蓄電池に充電し,足りなくなったときには放電することで,再生可能エネルギーを有効活用できる。

再生可能エネルギーの導入拡大により,電力を売買する卸電力市場では,電気の価格は値動きが大きくなっている。

蓄電池事業者にとっては,電気の価格が安いときに蓄電池に充電し,高いときに放電することで利益を得ることができる。

分散型電源の出力制御

電力系統では,周波数を維持するために,需給のバランスを取る必要がある。分散型電源の増加が著しくなると,分散型電源の発電出力によっては火力・水力発電の出力調整のみでは周波数を維持することが困難となるため,分散型電源の発電出力を制御する必要がある。

一般送配電事業者では,配電系統に接続される太陽光発電に,発電出力と需要の予測等に基づき出力制御をオンラインで指令する場合,スケジュール配信を行うことにより出力制御する方法が用いられている。

出力制御時(制御後の発電出力)の指令値が現在の発電出力よりも大きい場合,太陽光発電は出力制御されずに発電することが可能である。

しかし,出力制御時の指令値が発電出力よりもよりも小さい場合は,パワーコンディショナを介して出力制御を行うため,実際の発電出力は出力制御時の指令値を上限とした値となる。

なお,66 kV 以上の電力系統に接続される太陽光発電には,出力制御を確実に行うため双方向通信を用いて指令する方式が一般に用いられる。

系統用蓄電池のデメリット

収益確保

太陽光発電風力発電と異なり,蓄電池に充電する電力を調達するためには,調達コストがかかる。

また,太陽光発電風力発電は,FIT や FIP を利用して,収益を得ることができる。

一方,系統用蓄電池は自ら電力市場で取引して収益を確保する必要がある。

安く電力を調達し,高く電力を売ることができれば,収益が期待できるが,様々なプレイヤーがいる電力市場で,勝ち続けることは容易ではない。

発電販売計画と需給調達計画

蓄電池を所有する事業者は発電販売計画と需給調達計画を電力広域的運営推進機関に提出する必要がある。

系統用蓄電池ビジネスの事業者は,発電事業者でもあり,小売電気事業者でもあり,事業運営が発電事業のみより煩雑になる。

電気事業法における系統用蓄電池

系統用蓄電池の法制的な位置付けを明確にするため,2022 年に電気事業法が改正された。

具体的には,1 万 kW 以上の系統用蓄電池から放電する事業を「発電事業」と位置付け,発電事業者に対する規制と同様の規制が課される。

系統用蓄電池の今後の見通し

系統用蓄電池の接続検討・接続契約の件数は,2023年 以降,急増しており,今後も導入が進むと見込まれている。

2023 年の実績を参考にした 2023 年の系統用蓄電池の導入見通しは,約 14.1 ~ 23.8 GWh と見込まれる。

参考文献

 

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