近年,永久磁石材料の進歩,半導体バルブデバイスの進歩に伴う電力変換器の高性能化,低価格化及び電動機制御理論の発達により,永久磁石同期機は高性能・高効率の可変速電動機として注目されている。
希土類系磁石の登場により数百キロワットの電動機も製作されている。
永久磁石の配置
表面磁石構造
永久磁石同期電動機は回転子における永久磁石の配置から,表面磁石構造と埋込磁石構造とに大別できる。
前者は磁石飛散防止のため回転子外周に非磁性体の保護管を必要とするが,後者では不要なため,高速回転で有利であり,磁石の形状や配置の自由度が大きく,高効率である。
一般に,表面磁石構造では,永久磁石の透磁率が真空の透磁率に対してほぼ等しいため,回転子の位置によって磁気抵抗は変化しない。
したがって,$d$ 軸インダクタンス $L_d$ と $q$ 軸インダクタンス $L_q$ とが等しい非突極性を示す。
埋込磁石構造
埋込磁石構造では $d$ 軸方向の磁路には永久磁束が存在するが,$q$ 軸方向の磁路は鉄心のみとなるので,回転子の位置によって磁気抵抗が変化する。
すなわち,$d$ 軸,$q$ 軸インダクタンスの関係は $L_d \lt L_q$ となり,一般の巻線界磁形同期電動機とは逆の突極性(逆突極性)を示すことになる。
したがって,このタイプの電動機ではマグネットトルクに加えてリラクタンストルクも利用できる。
このため,電機子電流を一定とした場合,両者の和で表される総合トルクは $q$ 軸からの電流位相(進み)に依存し,トルクが最大となる電流位相が存在する。
一方,端子電圧は電流位相(進み)の増加に伴う電機子反作用により減少する。
この特性を利用した可変速運転では,低速領域で最大トルク制御が,高速領域で弱め磁束制御が可能であり,運転領域を拡大することができる。
永久磁石形同期電動機の駆動
永久磁石形同期電動機の駆動には,インバータなどの専用の制御装置が用いられる。回転子の位置情報を元にインバータによって大きさと周波数及び位相が制御された電流によって生じる回転磁界と,永久磁石の磁力との相互作用により,トルクと回転速度が制御される。
参考文献
electrical-engineer.hatenablog.jp
更新履歴
- 2022年8月2日 新規作成
- 2023年12月10日 「永久磁石形同期電動機の駆動」を追加