目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

製鋼用アーク炉設備

製鋼用アーク炉はアーク加熱応用の代表的な例であり,商用周波の三相交流電力をそのまま用いる交流アーク炉と整流装置を用いた直流アーク炉がある。

両者共に電圧は数百ボルト程度,電流は数千アンペアから数万アンペア以上のアークを黒鉛電極と被溶解物である鉄くずや還元鉄の間に発生させ,これにより溶解し鋼を作る炉である。

炉内でのアーク長を一定に保つように機械的な制御装置が設けられているが,炉内のアーク長の変化は急しゅんで,機械的な制御装置ではこの急しゅんな変動への十分な応答は困難である。

交流炉の単純化された電気的等価回路は,アーク抵抗と給電回路のリアクタンスが直列接続されたものと表現できる。

この回路で,抵抗に相当するアークが炉内での短絡からアークの消滅までを変動すると考えると,基本的には有効-無効電力の変動軌跡は半円を描く。

一方,直流炉における交流側での両電力の変動軌跡は,整流装置の電流制御機能により 1/4 円となる。

このように電力動揺の範囲は直流炉では交流炉の 50 [%] となることから,同一電気定格容量の場合,弱小の電源系統への接続が比較的容易といわれている。

直流アーク炉では,直流母線に流れる電流が作る磁場により,アークに電磁力が作用し,アーク偏向が発生することで被溶解物の不均一溶解や炉内にホットスポットを生成する原因となる。

これを抑制するために直流母線の配置には工夫が必要となる。

参考文献

  • 平成18年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問3「製鋼用アーク炉設備」

更新履歴

  • 2022年8月1日 新規作成