同期発電機の回転中に回転子の軸の両端間に電圧が発生する。
この発生のメカニズムは,次の二つに大別することができる。
その一つは,構造上の原因から,回転子鉄心の磁気抵抗が円周方向に不同であると,回転子の軸と鎖交する交番磁界が発生し,軸に起電力を誘導することによるものである。
この起電力は,通常,数ボルト程度の大きさである。
同期発電機の回転中には,回転子の軸は軸受の油膜の上に乗っているので,この電圧では油膜の絶縁が破壊されるようなことはない。
しかし,給油不測などにより油膜が切れて軸と軸受面が金属接触すると,軸,軸受,固定子又はベースからなるほとんど短絡状態に近い閉回路ができ,かなり大きな電流が流れる。
この電流は軸電流と呼ばれている。
この電流が大きくなると,それによって軸受面を損傷し,著しい場合には,軸受の過熱損傷を招いて軸に過大な振動が生じ,事故の発生につながる。これを防止するためには,磁極数に対する鉄心の分割数が最適になるように設計すればよいが,工作上のばらつきは免れないので,軸受メタルの支持部,軸受ブラケットの固定子枠の間,あるいは軸受台とベースの間に絶縁物を入れるなどの対策が採られている。
他の一つは,蒸気タービンに接続された同期発電機に見られる現象で,蒸気の粒子が相互に摩擦したり,あるいはタービンの動翼や軸に高速で衝突又は摩擦したりする際にイオン化し,タービンの軸に静電荷が生じ,それが軸に蓄積されて電位を高めていくことによるものである。
この電位が軸受の油膜の耐電圧以上になると,絶縁を破壊して間欠的に放電し,軸受を損傷することにより,軸振動が増大して事故の発生につながる。
これを防止するためには,軸にブラシを取り付ける方法が採られている。
参考文献
- 平成20年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問1「同期発電機の回転子の軸の両端間に発生する電圧」
更新履歴
- 2022年7月26日 新規作成