かご形誘導電動機(core induction moter)*1の始動特性の特徴として始動電流が大きい割に始動トルクが小さいことがあげられる。
始動特性を改良するために二次周波数の変化に対する二次抵抗の変化を利用したのが特殊かご形誘導機である。
かご形誘導電動機の始動特性を改良するために考案された特殊かご形誘導電動機は,二次実効抵抗が自動的に始動時には大きくなり,運転時には小さくなるような構造となっている。
二重かご形誘導電動機
二重かご形誘導電動機(double squirrel-cage induction motor)とは,回転子が半径方向の異なった位置に設けた二つのかご形巻線をもつ特殊かご形誘導電動機である。
下図に,二重かご形誘導電動機の回転子の二重かご形の回転子構造を示す。
回転子表面に近い外側導体は断面積が小さく,抵抗値が大きい。
軸に近い内側導体は断面積が大きく,抵抗値が小さい。始動時の二次周波数が高い間は,内側導体が構成する二次回路の漏れリアクタンスが大きいため,二次回路を流れる電流の大部分は外側導体を流れる。
そのため,二次抵抗の高い誘導機として始動され,大きな始動トルクを得ることができる。
二次周波数の低下に伴い,二次電流の大部分は抵抗の低い内側導体に流れる。
深溝かご形誘導機
深溝かご形誘導電動機(deep slot squirrel-cage induction motor)とは,二次巻線の断面が,幅のわりに深さの深い形状,たとえば長方形,くさび形,逆T字形などの形状をもつ特殊かご形誘導電動機である。
深溝かご形誘導電動機の回転子は,スロットの形が半径方向に細長い構造となっている。
始動時の二次周波数が高い間は,スロットの底に近い導体部分ほど多くの磁束と鎖交し,漏れリアクタンスが大きくなる。
したがって,導体中の電流は外周の近くに集中し,あたかも導体の断面が小さくなったのと同様の作用をして,実効抵抗が増加する。
速度が上昇するにしたがって二次周波数は低くなり,電流分布は次第に底部へ広がる。
やがて同期速度付近では電流は導体中に一様に分布するようになるので,普通のかご形誘導電動機として動作する。
参考文献
- 電気学会 電気専門用語集(WEB 版)
- 令和3年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問3「特殊かご形誘導機」
- 平成25年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問1「二重かご形誘導電動機」
- 平成19年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問5「特殊かご形誘導電動機」
更新履歴
- 2022年1月11日 新規作成
- 2022年1月22日 参考文献に「平成25年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問1」を追加
- 2022年2月11日 参考文献に「平成19年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問5」を追加
- 2023年1月7日 参考文献に電気専門用語集を追加
*1:かご形誘導電動機とは,二次巻線がスロット中に収められた棒状の導体と鉄心の両側でこれらを短絡する端絡環(短絡環)とからなる誘導電動機。