地中送電線路の故障は永久地絡がほとんどなので保護リレーの動作状況や線路の絶縁抵抗,心線の導通状態から事故種別を把握し,マーレーループ法,静電容量法,パルスレーダ法など適切な方法により故障点を見つければよい。
これに対して架空送電線路の場合は,大半がフラッシオーバによる地絡や短絡故障であり,遮断器がトリップして無電圧になれば,フラッシオーバしたがいしの 80 [%] は絶縁を回復し,がいし連の一部が損傷しても相当の絶縁をもつので,遮断器がトリップするまでの短時間に標定する必要があり,また,そのため,故障サージを受信するにしても,パルスを印加するにしても,結合コンデンサなどが必要になる。
地中送電線路のほとんどが 2 端子であるが,架空送電線路は多くの分岐線を有する場合が多く,故障点からの故障サージや印加パルスの反射,透過現象が複雑になる。
故障継続中に標定するので,故障中のアーク電流や故障遮断時のサージなど大きな妨害ノイズの影響を受けやすく,標定信号を十分大きくするなどの考慮が必要である。
また,電力線搬送装置との相互干渉,送電線のコロナなど,その他のさまざまな妨害ノイズの影響も受けやすい。
事故様相が永久金属地絡だけでなく,故障点アーク抵抗の影響や,多重故障,多地点同時故障など多種多様の故障モードを考える必要がある。
マーレーループ法
マーレーループ法はケーブル線路の故障点位置を標定するための方法である。
この基本原理はホイートストーンブリッジに基づいている。
図に示すように,ケーブル A の一箇所においてその導体と遮へい層の間に地絡故障を生じているとする。
この場合に故障点の位置標定を行うためには,マーレーループ装置を接続する箇所の逆側端部において,絶縁破壊を起こしたケーブル A と,これに並行する絶縁破壊を起こしていないケーブル B の導体どうしを接続して,ブリッジの平衡条件を求める。
ケーブル線路長を L,マーレーループ装置を接続した端部側から故障点までの距離を
x,ブリッジの全目盛を 1 000,ブリッジが平衡したときのケーブル A に接続されたブリッジ端子までの目盛の読みを a としたときに,故障点までの距離 x は aL/500 で示される。
なお,この原理上,故障点の地絡抵抗が低いことがよい位置標定精度を得るうえで必要である。
ただし,ケーブル A,B は同一仕様,かつ,同一長とし,また,マーレーループ装置とケーブルの接続線,及びケーブルどうしの接続線のインピーダンスは無視するものとする。
パルスレーダ法
パルスレーダ法は,健全相のケーブルと故障点でのサージインピーダンスの違いを利用して,故障相のケーブルの一端からパルス電圧を入力してから故障点でパルス電圧が反射して戻ってくるまでの時間を計測し,ケーブル中のパルス電圧の伝搬速度を用いて故障点を評定する方法である。
静電容量測定法
静電容量測定法は,ケーブルの静電容量と長さが比例することを利用し,健全相と故障相のそれぞれのケーブルの静電容量の測定結果とケーブルのこう長から故障点を標定する方法である。
事故様相による故障点位置標定の適用
パルスレーダ法は主に断線事故に適用される手法であり、地絡事故には適用が難しい場合がある。一方、静電容量測定法は地絡事故にも適用可能である。
参考文献
- 平成8年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問3「架空送電線路の故障点標定」
electrical-engineer.hatenablog.jp
更新履歴
- 2022年12月27日 新規作成
- 2023年10月14日 カテゴリーを追加,参考文献に「ケーブルの診断技術と事故点測定法」を追加
- 2025年7月26日 マーレーループ法の説明を追加
- 2025年8月11日 パルスレーダ法,静電容量測定法の説明を追加,記事の概要,検索エンジン向けタイトル,SNS 向けタイトルを追加