目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

水力供給力

水力発電所は,その発電方式により,流込式,調整池式,貯水池式及び揚水式に区分される。

流込式発電所及び調整池式発電所の供給電力量は,平水年可能発電電力量と利用率の積から所内消費電力量を差し引いたものになる。

また,ある地点又はある期間の可能発電電力量と平水年可能発電電力量の比は出水率と称されている。

水力発電所の出力

水力発電所の出力は,取水量により変わるため,次のような分類がある。

常時出力

流込式発電所にあっては,1 年を通じて 355 日以上発生できる出力とし,貯水池式発電所にあっては,原則として 1 年を通じて 365 日発生できる出力をいう。

常時せん頭(ピーク)出力

1 年を通じて 355 日以上,毎日ピーク負荷時の一定時間(原則として 4 時間以上)連続して発生できる出力をいう。

調整池式の水力発電所の運用

調整池は日間の負荷変動に応じて,河川の自然流量を時間的に調整するもので,普通,深夜の余剰水量を貯水し,昼間のピーク負荷時に放電する。

流入量(自然流量)を $Q$ [m3/s],ピーク負荷時の使用水量および継続時間をそれぞれ $Q_\text{p}$ [m3/m],$T$ [h] とすれば必要な調整容量 $V$ [m3] は次式となる。

\[ V=(Q_\text{p}-Q)T \times 3600 \]

一方,貯水はピーク負荷時以外のときであるから,そのときの使用水量 $Q_0$ [m3/s] と流量 $Q$ [m3/s] の関係は次式で表される。

\[ (Q-Q_0)(24-T)\times 3600 = V \]

これらの 2 式が基本式である。

ピーク負荷時の出力とオフピーク時の出力

有効貯水量 180 × 103 m3 の調整値を有する有効落差 60 m の水力発電所がある。

自然流量が 20 m3/s であるとき,図に示す負荷曲線で運転した場合のピーク負荷時の出力 [kW] 及びオフピーク負荷時の出力 [kW] を求めよ。

ただし,年間を通して毎日同様の運転を繰り返すものとし,調整池は最大限活用し,オフピーク時には越流させないこととする。

なお,水車と発電機の合成効率は,ピーク負荷時出力で 85 %,オフピーク負荷時出力で 80 % とする。

また,発電機の定格出力はピーク負荷を十分供給できるものとする。

図 負荷曲線(運転パターン)

図 負荷曲線(運転パターン)

有効貯水量 $V$ は 180 × 103 m3 と自然流量 $Q$ は 20 m3/s およびピーク負荷時継続時間 $T$ は 6 時間が与えられているので,$Q_\text{p}$ [m3/m],$Q_0$ [m3/m] は次式で求められる。

\[ Q_\text{p}=Q+\frac{V}{3600 T} = 20 + \frac{180 \times 10^3}{3600 \times 6} = 28.33 \] \[ Q_0 = Q-\frac{V}{3600(24-T)}=20 - \frac{180 \times 10^3}{3600 \times (24-6)}= 17.22 \]

ピーク負荷時の出力 $P_\text{p}$ は次式で求められる。ただし,ピーク負荷時の水量と発電機の合成効率は $\alpha_\text{p}$ とする。

\[ P_\text{p} = 9.8 Q_\text{p} H \alpha_\text{p}=9.8 \times 28.33 \times 60 \times 0.85 = 14159.334 \]

オフピーク負荷時の出力 $P_\text{0}$ は次式で求められる。ただし,オフピーク負荷時の水量と発電機の合成効率は $\alpha_0$ とする。

\[ P_\text{0} = 9.8 Q_\text{0} H \alpha_\text{0}=9.8 \times 17.22 \times 60 \times 0.80 = 8100.288 \]

よって,ピーク負荷時の出力は 1.42 × 104 [kW],オフピーク負荷時の出力は 8.10 × 103 [kW] である。

参考文献

更新履歴

  • 2022年8月12日 新規作成
  • 2022年11月20日 参考文献に「令和4年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1」を追加