目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

事業用電気工作物及びその使用前自主検査

事業用電気工作物の維持

電気事業法 第39条「事業用電気工作物の維持」において,次のように定められている。

事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない。

具体的には,以下のとおり。

  • 事業用電気工作物は,人体に危害を及ぼし,又は物件に損傷を与えないようにすること。
  • 事業用電気工作物は,他の電気的設備その他の物件の機能に電気的又は磁気的な障害を与えないようにすること。
  • 事業用電気工作物の損壊により一般電気事業者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないようにすること。
  • 事業用電気工作物が一般電気事業の用に供される場合にあつては,その事業用電気工作物の損壊によりその一般電気事業に係る電気の供給に著しい支障を生じないようにすること。

使用前安全管理検査

受電電圧 70 000 「V] の需要設備を設置する者は,経済産業省令で定めるところにより,その使用の開始前に,当該事業用電気工作物について自主検査を行い,その結果を記録し,これを保存しなければならない。

上記の検査(以下「使用前自主検査」という)においては,その事業用電気工作物が,届出した工事の計画に従って行われたものであること,及び経済産業省令で定める技術基準に適合するものであることを確認しなければならない。

この使用前自主検査を行う事業用電気工作物を設置する者は,使用前自主検査の実施に係る体制について,経済産業省令で定める時期に経済産業大臣が行う審査を受けなければならない。

上記の審査は,事業用電気工作物の安全管理を旨として,使用前自主検査の実施に係る組織,検査の方法,工程管理その他経済産業省令で定める事項について行う。

使用前安全管理検査に関する電気事業法の規定

電気事業法 第51条「使用前安全管理検査」の第3項において,次のように定められている。

使用前自主検査を行う事業用電気工作物を設置する者は、使用前自主検査の実施に係る体制について、主務省令で定める時期(第七項の通知を受けている場合にあつては、当該通知に係る使用前自主検査の過去の評定の結果に応じ、主務省令で定める時期)に、原子力を原動力とする発電用の事業用電気工作物以外の事業用電気工作物であつて経済産業省令で定めるものを設置する者にあつては経済産業大臣の登録を受けた者が、その他の者にあつては主務大臣が行う審査を受けなければならない。

電気事業法 第51条 第4項には次のように定められている。

前項の審査は、事業用電気工作物の安全管理を旨として、使用前自主検査の実施に係る組織、検査の方法、工程管理その他主務省令で定める事項について行う。

使用前自主検査の注意事項

使用電圧が 170 [kV] 以上の発変電所で実施される使用前自主検査のうち一部の測定・試験項目について,実施する上での注意事項の概要を記述したものである。

電圧降下法による接地抵抗測定

  • 電圧回路に対する誘起電圧を低減するため,電流回路は電圧回路と 90 度以上の交差角を取ること。また,電圧回路は他の送配電線路とも,できる限り平行にならないよう考慮する。
  • 電流回路の電源を,1 線又は中性点で接地している場合は,必ず絶縁変圧器によって電流回路を電源回路から絶縁する。
  • 電圧測定には,内部抵抗の十分高い電圧計を使用する。

絶縁抵抗測定

  • 被測定機器の静電容量が大きくて(長い地中ケーブルなどを含む場合)1分間では絶縁抵抗計の指針が静止しないときは,指針が静止したときの値をもって絶縁抵抗値とする。なお,測定後の回路は,必ず充電電荷を放電させること。
  • 電線またはケーブルなどの絶縁抵抗を測定する場合は,表面漏れ電流に基づく誤差を除くため,必要に応じて保護端子を使用することが望ましい。
  • 絶縁抵抗値は温度,湿度,汚損度などにより著しく変化するものであるから,天候,温度,湿度を記録しておくことが望ましい。
  • 同一電路の絶縁抵抗測定を定期的に実施する場合は,測定条件(天候,温度など)および測定方法をできるだけ一定にして行うことが望ましい。

電力用変圧器の電路の絶縁耐力試験

  • 試験前に,その回路が絶縁されていることを絶縁抵抗計で確認し,また,試験後にも絶縁に異常がないか絶縁抵抗計で確認するものとする。
  • 試験電圧には,商用周波数のなるべく正弦波に近い交流電圧を用いるものとする。
  • 試験電圧は,急激に上昇させずに除々に規定電圧まで上昇させることが望ましい。
  • 試験中に電源電圧が変動するおそれのある場合は,試験電圧確認用電圧計の指針に注意し,常に一定の試験電圧が加えられるように調整するものとする。
  • 試験後の回路は,必ず接地して充電電荷を放電させるものとする。

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機械器具等(電力用変圧器を除く。)の電路の絶縁耐力試験

電力用変圧器の電路の絶縁耐力試験を実施する上での注意事項の他にも次の項目にも注意する。

  • 被試験回路中に,地中ケーブル,コンデンサ等がある場合には,充電電流が相当な値に達するので,試験用変圧器を使用する場合には,試験用変圧器の容量に応じて被試験回路を適切に分割する。
  • 被試験回路を分割する場合は,試験前にその区分点(遮断器等)の開放状態を確認し,加圧範囲が計画どおりであることを確認する。
  • 発電機にあっては発電機のサーチコイルの接地を,また,計器用変成器にあっては加圧されない巻線の接地を試験前にそれぞれ確認する。
  • 水銀整流器以外の整流器で,整流素子を複数個直列に接続している場合は,各整流素子の両端を短絡する。

参考文献

更新履歴

  • 2022年4月12日 新規作成
  • 2022年4月15日 電気事業法のリンクを追加
  • 2022年4月23日 参考文献に「平成19年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問5」を追加
  • 2022年8月13日 参考文献に「平成22年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 法規 問1」を追加
  • 2022年12月11日 参考文献に「平成17年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問5」を追加