コンピュータシステムは,その用途に合わせて構成されるので,単純にその処理性能を比較することはできないが,マイクロプロセッサの処理性能を比較するための基準としては,下式で求められる処理時間が用いられる。
処理時間 = クロックサイクルタイム × CPI × 命令数
ここで,マイクロプロセッサは動作クロックと呼ばれるパルス信号に同期して処理を行い,クロックサイクルタイムは 1 クロック当たりの時間である。
CPI は 1 命令当たりに使用する平均クロック数である。マイクロプロセッサの処理能力の評価指標としては,1 秒間に実行できる命令数を 100 万単位で表す MIPS や,1 秒間に実行できる浮動小数点演算数で表す FLOPS などがある。
また,コンピュータシステムの処理効率や操作性等を評価する標準的なプログラムをベンチマークプログラムと呼び,整数演算の性能評価として SPECint などの指標が用いられている。
端末機器,ネットワーク,ソフトウェアなども含んだシステム全体としての性能を評価するものとして,トランザクション処理性能評議会が策定した TPC-C が利用されている。さらに,最近では,消費電力効率などの性能評価も重要視されている。
各種指標
CPI (Cycles Per Instruction)
マイクロプロセッサ(CPU/MPU)の性能指標の一つで,一つの命令を実行するのに CPU クロック周期が何サイクル必要かを表したもの。
同じクロック周波数なら,この値が小さいプロセッサほど効率よく高速にプログラムを実行することができる。
1 クロック当たりの平均実行命令数を表すIPCとは互いに逆数の関係にある。
MIPS (Million Instructions Per Second)
MIPS とは,コンピュータの処理速度をあらわす単位の一つで,毎秒何百万回の命令を実行できるかを表す値。
1 MIPS のコンピュータは,1 秒間に 100 万回の命令を処理できる。
主にマイクロプロセッサの性能を反映するため,プロセッサの性能指標として扱われることもある。
FLOPS (FLoating-point Operations Per Second)
FLOPS とは,コンピュータの処理速度をあらわす単位の一つで,1 秒間に実行できる浮動小数点数演算の回数。
科学技術計算や 3 次元グラフィックス処理などにおける性能指標として用いられることが多い。
SPEC (Standard Performance Evaluation Corporation)
SPEC とは,コンピュータシステムを実際の使用環境に近い状態で性能測定する標準的な手法を策定し,測定結果を登録・公表する国際的な非営利団体。
1988 年に大手コンピュータメーカーなどを中心に設立され,本部はアメリカ・バージニア州ゲインズビルに置かれる。
SPECint シリーズ
マイクロプロセッサ(CPU/MPU)の整数演算性能を計測する。
SPECfp シリーズ
浮動小数点演算性能を計測する。
TPC-C
TPC-C は現存する TPC ベンチマークのうち最も古く,また最も有名で頻繁に引用される指標である。
卸売業の注文や支払いを模したテストプログラムを実行し,1 分あたりの処理件数で性能を評価するもので,「tpmC」(transaction per minute C)という単位で結果を表記する。
また,システムの価格や耐用年数などから処理 1 件あたりにかかる費用を「Price/tpmC」という単位で評価する。
参考文献
- 平成21年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問8
更新履歴
- 2022年2月24日 新規作成